無意識日記
宇多田光 word:i_
 



週末の報道合戦は凄まじくて、本来なら号外ものの「藤井五段一般棋戦優勝で六段昇格」のニュースを「羽生2連覇」が押し退けた感があった。どちらも天上の話だが、庶民が1日に認識できる情報量には限度がある。今回は「羽生くんが勝って、羽生さんが敗れて」と紐付きで覚えて貰えるからよいものの、普段であれば「あれだけの偉業なのに扱いが小さい」となっていたところだ。

メディア戦略は斯様に難しい。音楽業界も、同じ業界のライバルたちの動向だけでなく「世間の目」全体を意識せねばならず、となると音楽以外の様々なイベントにニュースシェアを奪われないようにプランを立てねばなるまい。

勿論突発的なニュースにまでは対応できないが、例えばサッカーワールドカップなどは最初からスケジュールが決まっているのだからそれに合わせて、或いは合わないようにメディアアピアランスを事前に調整する事は出来よう。幅広い分野にアンテナを張っていないとマーケティングも成り立たない時代になった。いやま昔からある程度はそうなんだけど今は皆でスマホの画面の取り合いだからねぇ。

ヒカルさんの場合は自らのアルバムとツアーとは別に大型タイアップとの兼ね合いがあるから大変だ。キングダムハーツの発売日が未だ発表されていないのは販売戦略の為なのか或いは本気で決まっていないのか。そちらの業界に全く疎い自分にはさっぱりわからないが、もし今キングダムハーツがソフトとしてのみならずハードの売上まで左右するようなビッグコンテンツになっていようもんならもう誰も関連商品のプロモーション戦略を端から端まで完全に掌握制御する事は出来なくなっているだろうね。

タイアップ相手が巨大過ぎる場合、逆に「だったらこっちはマイペースで進めるから」という契約になっていても不思議ではない。誰もどうしようもないのなら。

実際、コンサートツアーデイトは、我々に知らされていないだけで既に決定済みで動かせない筈だし、となるとアルバムの発売も、ズラせて一週間とかそんな単位に思える。つまり、動かせるとしたら『誓い』のシングルカットのタイミングだけだろう。配信限定であればそれはそこまで難しい事ではない。が、先日指摘したようにミニアルバムをアルバムよりかなり早いタイミングでリリースしたらかなり売れる可能性がある。こちらはCDでのリリースを検討してもよいだろう。しかしそれをするにはオリジナルアルバムの発売日とある程度離す必要があり、過去のテーマソングがいずれもゲームの発売日と大体同時期だった事を考えると、ゲームの発売がかなり早いタイミングになってくれないと実現味は薄くなる。ここらへんがどう転ぶかで、我々の手に入れられるマテリアルが変わってしまうとすれば気が気ではない。ワガママなのは重々承知ではあるのだが、歌手のファンをやっている身としては早くゲームの発売日を決めて欲しいものである。

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そしてもう一つの流れがある。キングダムハーツとは関係なく、「最近の宇多田ヒカルの新曲はフルコーラスで聴くまで真価がわからない」のだ。

勿論昔からそうだったのだが最近は特に、な。代表的なのが『大空で抱きしめて』で、CMで流れる部分だけだと最終的に楽曲が『天翔る星よ 消えないで』にまで至るだなんて想像もつかなかった。これが、例えば『Lonely One』のように全く予測不能の、唐突ですらある"全く新しいパート"の挿入により成し遂げられた事なら、まだそこまで怖くなかった。極論すれば、誰でも出来る事だからだ。『大空で抱きしめて』が物凄いのは、メロディーの軸を冒頭から一切崩す事なく歌詞とサウンドの流れで果てしない境地まで連れて行ってくれたからなのだ。

日本語がくどい。(自分に向けた独り言)

その魔法のような手管を以て、あらゆるバリエーションが可能な「キングダムハーツ」の世界に飛び込むのだからその恐怖たるや。ひとつの楽曲の中でですらどこまで連れて行ってくれるかわからないのに、それが更に2つ3つと派生していくのだ。「目も眩むような」と形容しても言い過ぎじゃあないだろう。

歌詞もまた、キングダムハーツから離れて見ると、"最近の宇多田ヒカル"という感を強く持たせる。『誓い』の歌詞はワンコーラス分だが、一聴して『花束を君に』と同じ世界が浮かび上がる。嫁ぐとか結ばれるとか、何かおめでたい事が起こる、起こったのだな、と。

我々は途端に軽快するだろう。『花束を君に』は、死化粧とのダブルミーニングだった事を思い出してしまうから。『誓い』は、その憂いある曲調も相俟って悲しい物語のように思える。実際、『Don't Think Twice』の方の歌詞は「知りたくない」と力強く歌っている。第一印象としては、ネガティブである。まぁ、過去(完了)形なら「知りたくないのに知ってしまった」とネガティブからデスピアへと昇格(降格?)してしまっていただろうけど。兎も角、どこか、このまま本当にうまく行く歌なのかという不安が拭えない。『光』と『Simple And Clean』の歌詞が背反的だった事もまたその不安に拍車をかける。そう、今回はただフルコーラスを聴くまで油断ができないのではなく、英語版の歌詞も全編確認して、派生バージョンの内容まで隅々までチェックして初めて全容が明かされるのだ。正直、この、「キングダムハーツ3」のテーマソングという"1曲"だけでアルバム一枚分位の満腹感が味わえそうである。

この"1曲"を、きっとヒカルは「オリジナル・アルバムの収録曲のうちの1曲」に収めてしまうのだ。嗚呼、気が遠くなってきた。なんというスケール感。しかし、前作だって『桜流し』と『真夏の通り雨』というスケールの大きな名曲を2つ収録していたのだ。次もきっと、そうなる。今から覚悟を決めておいた方がいい。そんなアルバムを引っさげて今年、貴方の町にヒカルがやってくる。

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今週は色々と"楽しみで仕方のない事"を綴ってきたが、何だろう、根本的に不思議な気がしている。どうしてここまで"大船に乗ったつもりで"楽しませて貰える事が確定しているのか、と。

前2作の『光』と『Passion』は宇多田ヒカルのキャリアの中でもとりわけ特別扱いを受けてきた曲だ。『ヒカルの5』では『光』がオープニング・ナンバーだったし、『Utada United 2006』では『Passion』がオープニングで、『光』がエンディングだった。ここまでするとまるで「キングダムハーツで売れた歌手」にみえてくるが、今週みてきたように実際は逆で、『光』も『Passion』もヒカルのキャリアの中では売上の谷間にある楽曲だ。本来なら黒歴史としてそっ閉じされていても文句の言えないポジションだった。それが今や神格化されまくって『誓い』と『Don't Think Twice』のハードルを上げに上げているのだから人生本当にわからない。

いや本当にわからないのはヒカルの態度だな。「エヴァンゲリオン」に関しては本人も元々凄い思い入れが強い作品で、アーティスト活動休止中にも関わらず『桜流し』を制作してきた時は気迫すら感じさせた。タイアップかくあるべしという作品への入れ込みよう。『Beautiful World』と『桜流し』が歴史的な名曲になったとしてもそれは必然的な流れでしかなかった。

それが、「キングダムハーツ」についてはどうだろう。ヒカルがこのシリーズをやりこんだという話はきかない。ヒカルとて全くゲームをやらない訳ではなく、トルネコとかシレンとか、プレイした時はちゃんと発言している。キングダムハーツについても、実際に手にとれば何らかのコメントがあってもおかしくない。それがない。そのまま素直に受け取れば、ヒカルはキングダムハーツに何の思い入れもこだわりもない事になる。

売上だけをみればそれもさもありなんだ。あまり成功しなかったタイアップ、自分もどうも乗り気ではなかったから―と。勿論現実は真逆で、のっけから自分の名前を冠した歌を提供した。気合いが入ってるなんてもんじゃなく、「ゲームと心中した」と言ってもいいレベル。なのにプレイはしていないというこのギャップ。何か、恐ろしい。

実際にプレイしたユーザーたちからは、『光』も『Passion』もゲームに合いすぎていて身震いするとか何とか、神懸かった評価を得ている。知らない身からすれば「ほんまかいな、こんな恋人にフラレタだのという歌詞で?」と思う所なんだが、そう言うんだからそうなんだろう。

ヒカルの「タイアップ力」は近年更に上がっている。『あなた』が「DESTINY 鎌倉ものがたり」のエンディングで流れてきた時は感服してしまった。出来上がった映画を観た上で一年かけて作曲してもあそこまでは行かない、という位にジャストフィットしていた。その現状の力量と過去の(16年前と13年前の)実績を併せて考えれば『誓い』と『Passion』がハズしてくるなんて有り得ない。そう捉えるしかないのである。

この、「思い入れのないゲームと心中して一蓮托生」という奇妙な状況に対する合点のいく解釈は今の私にはまだ無い。将来振り返ってみた時にどんな風景がみえるのか想像もつかない。しかしこの確固たる信頼は揺るぎそうもない。まだまだこの物語は続いていきそうだ。

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『誓い』/『Don't Think Twice』のバッキングのリズムは4拍子と3拍子の重ね合わせだ。ここから何をどう推理するか。

一つ言っておきたい事実がある。宇多田ヒカル/Utada Hikaruという人は、全くと言っていいほど3拍子のリズムを使わない。もしかしたらまだ一曲もないんじゃないのという位に。4分の3拍子と8分の6拍子でもまた意味が違うが、4拍子の中で三連符を使う事すら稀だ。考えてみれば不思議な事である。

言ってしまえば「宇多田ヒカルはワルツを踊らない」のだ。なので、今回もし仮に『誓い』に3拍子が現れるのであれば歴史的画期的な出来事になるだろう。

では。『誓い』のリズムは、今皆さんが聴いている通りだがこれがどうなるか。

ちょっと英語のコメントで見かけたのだが、「キングダムハーツ3は悲しい物語になるかもしれない」んだと。どういう推理なのかゲームをしない身にはさっぱり定かではないのだが、今までのテイストとは異なるストーリーならテーマソングもそれに合わせて変わらなければならない。そう、『Beautiful World』と『桜流し』位の落差で。

となると、ひとつ予想したくなるのは、『誓い』/『Don't Think Twice』の"オリジナル・バージョン"が実は「マイナー・キーのワルツソング」みたいな雰囲気になっているのではないか、と。4拍子のメロディーを3拍子のリズムに合わせるのは、"結構何とかなる"ものである。無理な話ではない。つまり、今あるアレンジから4拍子の部分を抜いて3拍子を剥き出しにするのだ。8分の6拍子の解釈が4分の3拍子に変化している事もあるかもしれないが、これも"結構何とかなる"ヤツである。

この話は前提として、今聴けるトラックが"バラード・バージョン"であるという解釈に基づいている。前作に倣うならこれがエンディングで流れるのか、となるが、ストーリーのテイストが変わるならオープニングが静かに始まって、エンディングが賑々しいという逆転現象も考慮に入れておかねばなるまい。とは言ってもそういう思考は場合の数の発散を齎して疲労感が出る。考え過ぎるのは止めにしよう。

「マイナーキーのワルツソング」の一例としては私はいつも通りに「チムチムチェリー」を思い浮かべるが(IN FLAMESの"Moonshield"が…と言っても誰も反応せんしな)、そういやこの曲「メリーポピンズ」だから一応ディズニー作品という事になるな。え、今年日本でミュージカルやんの!? へぇ…。

まぁそれはさておいて。妄想するのは自由である。今までの流れからして、バージョンなりミックスなりが複数あるのはほぼ間違いない訳で。最終的にはオーケストラ・バージョンがトドメを刺してくれさえすればよい。まだまだ情報が少なくて妄想は収斂し難いがそれも今だけの楽しみ方だよね。

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では、『誓い』/『Don't Think Twice』の派生バージョンは具体的にどんなものになるのだろうか。ゲームのストーリーもわからないうちに予想するのは難しいなんてもんじゃないが、ちょっと違う方面からみてみよう。

少し最初に戻ってみる。今回の2曲が発表された時に話題になったのは「変則的なリズム」である。ピアノの演奏がジャストではない点と、複数のリズムが重ね合わされている点。ここである。

『誓い』/『Don't Think Twice』は、基本的にはバラードと言っていいテンポで演奏されている。これは前作でいえば『after the battle』『Ending Version』を想起させるものだ。となると、最初に口火を切ったこの2トラック、派生バージョンな可能性があるのである。

オリジナルのシンプルなバージョンではない方から先に発表? そんな変則的な事がありえるのか?と思う所だが私達ヒカルファンは既に経験済みである。11年前、2007年の2月に発表された『Flavor Of Life』は同年1月に『ballad version』の方が先に発表された。後にCDシングルが発売になった時このバージョンは2曲目に収録されていたのである。つまり、派生バージョンの方が先に発表されたのだ。こういう事態を私達は経験済みなのである。

『ballad version』が先に発表された事で当時の私は随分曲の解釈に苦労する事になる。『ありがとうと〜』以下のサビメロは文句なくキャッチーなのにそれに繋げるブリッジ(Bメロですね)の構成がよくわからない。着うたで大ヒットした楽曲なので大半の購入者は気にならなかったのかもしれないが、スカスカのアレンジは一体どういう意味なんだ?と随分首を捻ったものだ。結構な時間が経ってからオリジナル・バージョン(CDシングルの1曲目)が発表されてそこで漸く、ブリッジには元々『Don't be afraid, You'll be ok.』というコーラスが存在した事を知り腑に落ちたのだ。そういう事だったのね、と。

つまり、今回の『誓い』/『Don't Think Twice』も、先に派生バージョンが発表されているのだとすればアレンジに違和感があるのは当然であって、今後オリジナル・バージョンが発表されてその時やっと「そういう事だったのか」と合点がいく、という展開も想像できるのだ。ヒカルとスクエニ&ディズニーによる壮大な仕掛けである。

しかし、もしそうだとすればCDシングルというか、ミニアルバムを出して欲しくなるよね。派生バージョンにリミックスにオーケストラにインストをフィーチャーした、『Flavor Of Life』や『FINAL DISTANCE』並みのボリューム、5〜6曲収録した30分〜40分位のヤツを。流石にこれは売れると思うんですけどどうですか?

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『光』/『Simple And Clean』と『Passion』/『Sanctuary』同様に、『誓い』/『Don't Think Twice』もこれから人気を更に増加させていくだろう事は何となく察せられたと思う。

しかし、先週既に予習した通り、これらキングダムハーツたちのテーマソング群にはここから更に"バージョンを増やしていく"フェイズが待っているのだ。手がつけられない。

まず『光』/『Simple And Clean』には『PLANiTb Remix』が存在する。キングダムハーツのサントラに収録されているからにはゲームで使われたのだろう。その上『KINGDOM Orchestra Instrumental Version』も在るのだ。ゲームをしていないのでわからないが、「こんなん山場で流されたら涙腺崩壊必至やん」というしかない感動的なバージョンである。万が一まだ聴いた事がないという人が居れば是非聴いてみて欲しい。人によっては歌よりこっちの方がいいとか言い出すんじゃなかろうか。それ位にメロディーの美しさが際立っている。なお忙しい人には『KINGDOM HEARTS Instrumental Version』もあるぞ。70秒で終わるので40秒で支度して30秒休憩しよう。それはさておき。

そして、『Passion』/『Sanctuary』も同様に…いや、それ以上に『KINGDOM Orchestra Instrumental Version』が感動的なのだ「キングダムハーツII」は。オリジナルの『Passion』にピンと来ない人もこのオーケストラを聴けば曲がりなりにも「この曲の意図する所」を知る事になるだろう。全盛期の久石譲の楽曲群(「風の谷のナウシカ」や「天空の城ラピュタ」や「ハウルの動く城」等々…)に匹敵するサウンドトラックである。ここに、こちらはリミックスという表記ではなく『Opening Version』と『Ending Version』の2つのバージョンが加わる。ゲームのオープニングとエンディングに流れるからだが、この使い分けがことのほかゲームファンから評判がいい。余程場面に合っているのだろうな。想像してしまう。なお『Passion』のエンディングバージョンの名は『after the battle』だ。ご存知だろうけど。で、ここに更に『Single Version』があるのだな。てんこ盛り。


さて。つまり、これから『誓い』と『Don't Think Twice』には、リミックスやらオーケストラやら短いインストやらオープニングやらエンディングやらシングル用やらありとあらゆる派生バージョンが期待される訳だ。もうまさにキングダム、「汝の王国」状態である。どのようなバージョンが用意されるからゲームでの使われ方によるだろうが、この今回のメロディーの強さならまたまたオーケストラバージョンが人気を博す事請け合いだ。いや、あんまり安請け合いしたくはないんだが、少々オーケストラとの相性が難しくてもこのメロディーの強さで押し切れるだろう。そして、また新しいバージョンが発表される度に『誓い』/『Don't Think Twice』の評価が上がっていく訳だ。楽しみで仕方がないよ。

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『Passion』の方はというと、『光』の時とは比べものにならない位に"総スカン"だった。『光』は人気曲2,3曲に挟まれた「ちょっとした谷間」程度だったのに対し『Passion』は「キャリアの底」と言ってもいいほど評価が低く、全くと言っていいほど売れなかった。勿論『Be My Last』という壮大な爆弾の援護射撃(妙な日本語)があったからこそだが、発売当時はライトファンはおろか熱心なHikkiファンまで"総スルー"に近かった。まぁファン自体が減っていた時期でもあったしな。

潮目が変わるのはやはりゲーマーの皆さんからの評価だ。当時はYouTube黎明期。まだまだ動画の数も内容も出揃ってはいなかったが、『Passion』と後の『Sanctuary』をフィーチャーした「キングダムハーツ2」の動画は数百万規模の再生数を獲得していく。よっぽどゲームの幻想的な雰囲気と曲調が合っていたのだろう(私はゲームをプレイしていないので知らない)、特に海外のファンと思しい(ネットじゃ正確な区別なんてつかない)層が絶大と言っていい支持を得ていた。この時耕した層が後の『This Is The One』のヒットと『In The Flesh 2010』の盛況に繋がった可能性は高い。

一方日本ではヒカル本人が強引に持っていった。6年ぶりの全国ツアー『Utada United 2006』のオープニング・ナンバーに『Passion』を起用したのだ。並み居る名曲群を押しのけてよりによって歴代最低売上を誇る(当時)曲を"ツアーの顔"にしたのだから覚悟の程が窺える。これによってかよらずか、好き嫌いは抜きにして、以降『Passion』は「なんだかんだで大事な曲」としてなし崩し的にその地位を固めていった。今やゲームの評価と共にその確固たる存在感は無視できなくなっている。


つまり。『光』にせよ『Passion』にせよ、発売の瞬間は必ずしも高評価ではなく、後のヒカルによる扱いとゲームとのフィット感で徐々に評価を高めていった歴史があるのだ。よって『誓い』も、発売前いや発売前後の時点ではまだまだ「将来の確定した評価」からみれば全然過小評価にとどまっているおそれが強い。寧ろ、その筈なのに今の"ロケットスタート"なのだ。これからどんな事になるか想像もつかない。

しかしひとつ懸念がある。そうやって右肩上がりで評価された『光』と『Passion』がやや神格化された所まで来てしまった事だ。正史としては13年ぶりなのだから仕方がないが、この年月の長さは必要以上の拘りを生んで過去の記憶を美化させるのに十分な時間だ。その堅牢さが、逆に『誓い』への過度な期待を生じさせ、本来不要な落胆すら齎すだろう。これもまた「宇多田ヒカルmeetsキングダムハーツ」というコラボレーションが強力なブランドとなった証でもある。その功罪の攻防の中で『誓い』がどうなっていくか、楽しみだ。

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そうか、『Don't Think Twice』の方は動画が複数あるのか。知らなかった。それで再生が分散してるのね。こういう指摘は有り難い。私は結構うっかりさんなので。

コメントは一応目を通しているが大体返信を始めるといちエントリー出来てしまうので毎度の事ながら自重中。たまーに気まぐれでコメントしますけど。

少しずつ話を進めていこう。焦らない、焦らない。(Don't say twice ! Lol )

まず、1と2の主題歌に関してである。『光』/『Simple And Clean』と『Passion』/『Sanctuary』は今や泣く子も黙るキングダムハーツの名曲として王国に君臨しているが、いずれも発売当初の評判は芳しくなかった。覚えてるかな、皆。

『光』は3週連続オリコン1位という輝かしい記録を持っている為、当時の事をリアルタイムで知らない人はピンと来ないかもしれないが、順序としてはあの『traveling』の後のシングル曲だった。『traveling』の持つ世界標準の、いや世界でもトップクラスのPop-Music-Tasteと、『FINAL DISTANCE』に続いていよいよ極彩色の強まった日本の誇るミュージック・ビデオの組み合わせは、宇多田ヒカルが『異次元突入』を果たしたとして熱狂的に受け入れられた。CDシングルは年間3位、DVDシングルは年間1位の売上だった。それに続いた『光』はまさかの漢字一字のタイトルに、縦書きの歌詞カードも納得の『traveling』の英語リフレインとは対極にある日本語を主体としたサビのメロディー、更に2曲続いた極彩色のビデオはどこに行ったんだというあの「皿の裏を洗わない」ミュージックビデオ、と正直なところ「確かにいい曲なんだけどちょい肩透かし」な楽曲として当時は受け入れられた。実際、その次の『SAKURAドロップス』は
宇多田ヒカル必殺のバラードと復活した極彩色のビデオの組み合わせで再び好評を博す。まぁ物凄いレベルの高い話なんだけどね。CDシングル『SAKURAドロップス/Letters』は年間6位、『光』は年間10位なのだから。

また、ゲーム「キングダムハーツ」もスクエア・エニックスとディズニーのコラボレーションという事で注目度は高かったが、当たり前だけど1作目なので今のような「ゲームの熱狂的なファン」は存在しない訳で。やがて、プレイした人たちからちらほらと「ゲーム内で聴く『光』は物凄くハマっていた」という評判を聴くようになる。また、宇多田ヒカルのファン層がやや入れ替わるのもこの頃で、ここらへんから新しくファンになった層は当然ながら『光』が一番人気だったりする。『光』の評判は、年月をかけて今の地位にまで辿り着いたのだ。

ここらへん、ヒカルのファンとJpop全体のライトファン、更にゲームファンが折り重なって複雑な位相を形成しているので分析は容易ではない(しする気もない)。しかし、『ヒカルの5』以降のヒカル自身による『光』の扱い方もあいまって、徐々に人気を確立していったのはリアルタイムに発売当時の(今と較べれば数少ない)Webでの反応を見ていた身として、保証したい。何しろ16年も前の話なのだ。私の記憶を疑ってもいい年月である。信じるも否も読者である貴方次第。歴史は難しいのです。

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『誓い』『Don't Think Twice』のリズムが話題になっているみたいね。こういうのは率先して話に入ると損な事が多いので(笑)静観させて貰うが、みかけた論点は2つで、ひとつは拍の取り方自体がオンビートからズレている、と。1/64とか1/128とかのレベルで。それが違和感を与えてるとか。もうひとつは2つのリズムが同時に鳴らされている、と4拍子と3拍子の組み合わせとか。

もし拍が1/128ズレていたとしても素人の耳には「立ち上がりの早い/遅い音色」程度にしか感じられないだろう。ライブバージョンが将来出ればその時にどこまで恣意的なズレだったのかがわかる。その前にインタビューで言及してくれればそれで解決する。

拍子が重なっているのに違和感を感じさせるのは音質の責任だろう。例えばハイハットのボリュームを僅かに変えるだけでもリズムの主従は逆転する。こちらの判断はハイレゾ音源を聴くまで待った方がいい。今言ったハイハット等のシンバル類の響きは特に音質変更の恩恵を受ける。リズムの印象はそこで幾らでも変わりえる。YouTubeの音質がもたらした違和感がフル解禁後に消えている可能性も否定できない。発売時期によってはまだリマスタリングする時間もあるかもわからないし。

…静観(笑)。


さてその2曲。『誓い』は再生回数130万回、『Don't Think Twice』は80万回とまぁ絶好調と言っていいだろう。『桜流し』を凌ぐペースなんでないの。勿論これからバカバカ伸びる。リピーターの数が半端では収まらないだろうから。ただ、『誓い』の方が再生回数が多いのは予想が外れてしまった。なんのかんので英語版のニーズが高いかと思ってたが、違うのね。単純に日本の方がキングダムハーツファン、ヒカルファンが多いのだろう。それに、映像の方を見に来る場合、歌がどちらであろうと関係あるまいから、必然的に先に拡散された『誓い』の方が伸びたのか。分析が待たれる所だが、このまま話題になり続ければあっさり『あなた』も超えて1000万再生回数を達成しそうだ。2つの力が合わさるとここまで強いのか。

2。これが今回のテーマになるのかな。正史第3弾なのにね。『twice』という単語を使ってきたのが興味深い。例えば「born twice」といえば二度生まれる=生まれ変わり、転生の事だったりする。ゲームの事はわからないが、リク(CV:宮野真守)のセリフも気にかかる。転生や前世となればヒカルの歌詞のメインテーマの一つだが、今は考え過ぎないようにしよう。Don't Think Twice. 考え過ぎるなって意味なんだから。

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もう即刻2曲の90秒バージョンを配信リリースして欲しい気分だが、無理かな。一体いつフルバージョンが聴けるのか。このまま何度もYouTubeを観続けていたらいざフルを手にした時宮野真守の声が入っていないのに違和感を感じそうで怖い(笑)。

2曲。即ち、英語版『Don't Thinj Twice』の存在が途轍も無くデカい。寧ろこちらが本命なのかもしれない。インタビューを待たねばならないが、こちらが先に作詞され『誓い』の方が後、という可能性がある。

『Don't Think Twice』、「二度考えるな」という意味だが、『Can You Keep A Secret?』を「誰にも言わない?」と訳した感じで訳すならば「もう迷うな」くらいだろうか。結構難しい。

この歌、まずシンプルにサビの『I don't wanna know baby, I don't wanna know』がグサグサ刺さるのだ。有り体に言って"超キャッチー"で、しれっと全米シングルチャートに紛れ込ませても何ら違和感がない。いや、反対側に突出しているという意味で違和感があるかもしれないが。何かそれ位に"大ヒットが確約されている"雰囲気を纏っている。好き嫌いを別にして、このリフレインは聴いた人の耳から離れない。

なお、英語詞の聞き取りの正しさは保証しない。ヒカルはかつて『蹴っ飛ばせ!』で『I want your baby』と歌ったのだ。そら普通『I want you, baby』やと思うやんか。せやから、油断ならへんねん。

一方、『誓い』の方は、ほぼメロディーは同じ筈なのにその「大ヒットの予感」が(私は)しないのだ。歌詞の乗り方と言ったらいいのか何なのか…メロディーの強さのわりにこちらの掴む「枠組み」みたいなものが相変わらずあやふやだ。まぁ同じくあやふやな『花束を君に』があれだけ受け入れられたのだからそれ以上に愛されるとは思うのだが、ついつい私は「相変わらず、今の邦楽市場には"大ヒットの枠組み"が存在しないままなのだな」などと思ってしまうのだ。全米市場には相変わらずシングルヒットの土壌が存在し、「こうきたらこうくる」感覚があるのだが、日本にはない。そして、『Don't Think Twice』はその枠組みにドンピシャにみえる。適切なプロモーションさえすればバカ売れとなるだろう。当然、少なくともiTunes Store USA総合チャート第1位は射程圏内だ。いや、確定事項かもしれない。同時期のライバルの有無次第か。

ついつい形容の為に市場の話を持ち出してしまったが、『Don't Think Twice』『誓い』ともに、市場云々という野暮な話を抜きにして、メロディーと歌詞と歌唱が心に刺さる。その感覚が、尊い。刺さった歌はもう既に自分の心の中に確固とした場所を築き上げていて、もう一生離れる事はないだろう。この期に及んでそのような「歌との出会い」を齎せるヒカルはそれだけで凄すぎるが、どこかそれが平常運転のように見えるのが、もう何かもう。これ以上悩まない事にする。現実は想像より遥かに魅力的なのだ。

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『誓い』。この日本語の響きがこの日を境に意味を変えてしまったのではないかという位の衝撃がいきなり襲ってきた。宇多田ヒカルファンだけでなく世界中のキングダムハーツファンが驚喜した突然の新曲発表。いや本当、参った。

実はどう反応すればいいかかなり迷っている。曲調はもう純度100%以上の濃縮過還元な宇多田ヒカル&Utada Hikaruテイストの泣きのメロディーと歌詞。冒頭で『運命なんて知らない』といきなり16年前の『キングダムハーツ』の主題歌『光』の歌詞とリンクさせられた時点でもう降参である。あとはひたすらそのメロディー遣いに翻弄されるだけ。

だからこそ、自分がこのまま絶賛してしまっていいものかという「迷い」が生じている。迷いのない曲調であるからこその迷い。殆どマッチポンプ、わざわざ自分で迷いを探しに行っている。

どう足掻いてもキラーチューンである。ここ3部作がやや実験的な作風で、それでも『あなた』があれだけ売れたのだから凄いブランドだと思うが、そのブランド力がなくても売れるだけの力強さをこの曲は単独で持っている。それが『キングダムハーツ』という世界規模の強力タイアッ…いや、もう一心同体まではいかなくても一蓮托生の間柄、タイアップというよそよそしさではもうないか、兎に角、強く共に歩むコラボ相手がいる。これはもう桁外れの評価を受けるしかない。

実際、ヒカルが浮かれているようにすらみえる。『Tadaa』だの『そわそわ』だの非常に自覚的に浮かれている。「ゲーム開発が遅れるならフライングでフル尺解禁しちゃうぞ」とか、契約の事を考えたら冗談でも言いづらい。余程自信があるのだろう。現実にはやらないだろうが、フライングリークという反社会的行為に手を染めてもなお「よくぞこの名曲を公開してくれた」という評価が上回るだろうという読みすら感じさせる。

大爆発。そういう予感が強い。だからこそ私はここで勝手に不安になっている。ヒカルに倣って一緒に浮かれた方がいいのかもしれない。「幸福が怖い」とか「こんなに幸せでいいのかな」とかよくわからない言い回しを口走ってしまいそうで。それ位に曲が強力だ。宮野の声がなかったら冷静に戻れなかっただろうよ。

ひとまず、落ち着こう。まさか2月の時点で歌が聞けるだなんて思っていなかったからまだ混乱している。過剰に盛り上がる事なく出来るだけ冷静にこの歌たちに向き合っていきたいぜ。

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キングダムハーツさんの主題歌を日本語と英語以外の歌詞でも歌う、というアイデア自体はそこまで荒唐無稽でもない。例えば、アメリカのヘヴィ・メタル・バンド;マノウォーは"Father"というバラードを16ヶ国語で歌い分けてみせた。日本語バージョンのタイトルは当然"父"である。それをたった1人のシンガー(エリック・アダムス)が歌ったのだ。不可能ではないのである。

しかし、だからと言ってヒカルがそれに手を出すかというと違う。やるならそれなりのクォリティー(とヒカルは言うかもしれないがそれは即ち一般的に言う所の"最高品質"である)で世に送り出す必要がある。その為に学ぶべきところが多すぎるし、やるべき事も多すぎる。

実際、『光』と『Simple And Clean』の2曲を作るだけで「サビのメロディーをたがえる」という事をやったのだ。そうしなければ、それぞれの言語におけるそれなりのクォリティー(=最高品質)が担保できないからだ。歌詞の内容もそれぞれ日本語と英語の"感触"に相応しい内容に最適化されている。母語といえる2ヶ国語ですらこのような手間がかかるのだから、細かなニュアンスもわからない他の言語など一体どうなるのだ、というのが本当の所だろう。

ただ、今のヒカルの能力は今まででいちばん高い訳で、あとひとつくらいなら書いて歌えてしまうのではないかという"不安"は拭えない。まぁそこは弛まず見張っておく事にしよう。

まだ現実味のある案としては、ヒカルがキングダムハーツさんの主題歌として書いた楽曲を、他のシンガーがそれぞれの母語でカバーする方法だ。今度は先程のマノウォーと違い作詞や歌唱を一手に引き受ける必要はないのでプロジェクトさえ纏められればできなくはないが、皆さんご存知の通りこのやり方には先約がある。あの「アナと雪の女王」の「Let It Go」の手法なのだ。流石に知名度がありすぎてこの方法を実行すると二番煎じの謗りは免れ得ない。同じディズニーだし映画とゲームの違いもあるし決して悪いアイデアではないのだろうが、難しいところである。

それに、ヒカルの歌を他の誰かが歌って人気が出るかというと難しい。各国版の歌ができたら各国のゲームの内容も差し替えになる訳で、その時に「英語でいいからヒカルの歌がよかった」と言われたら目も当てられない。ヒカルが母語で歌ってくれれば感動的だろう。やはり、ヒカル本人が歌うべき、となる。

この際だからエスペラント語で歌って全世界の人を煙に巻くのも…(笑)。

まぁ、どうせ16ヶ国語版とか沢山のバージョンを作詞するんだったら『ぼくはくま』がいいよね。あの歌を各国のこどもたちが母語で楽しそうに元気一杯で歌う姿をヒカルがみたら萌え悶えてやる気全開満開になる気がするし。一生かけてやってく価値はあるかも。

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『光』と『Simple And Clean』、『Passion』と『Sanctuary』の関係性に倣うならば、今回のキングダムハーツさんの主題歌も日本語版と英語版が作られるだろうーこれがオーソドックスな読みであり実現性もいちばん高い。

がここで敢えて『それ以外』のパターンを考えてみようかなと。

この12年余りでキングダムハーツは更に巨大なコンテンツになり、実状は知らないが世界各国から正史の更新を求められる存在になっているらしい。よう知らんけど。となると、非日本語圏かつ非英語圏の人たちからすりゃもっと自分らにわかる言葉で歌って欲しい、という要望が出てくるだろう。

そうなった時の「第3の言語」って何になるんだろうね。市場として未知数の中国語を除けば、フランス語、スペイン語/ポルトガル語あたりになるか。フランス語は、フランスという国が自国語に対して随分な拘りがあるそうで(そんな人に会った事ないんだがな)、ならばフランス語で歌われる歌に対しては高評価だろう。スペイン語ポルトガル語に関してはシンプルに、南米などのラテン系の国で強いから。昨年の「デスパシ糸」(ドンキホーテ・ドフラミンゴ風味)の大ヒットからもわかる通り、ラテン系は当たるとデカい。すりよる(笑)のも悪くないのだ。

ヒカルからすれば、フランス語は『愛のアンセム』で実装経験済みだからあれからの年月を考えるとフランス語が更に上達している可能性もある。作詞能力と歌唱能力。どちらもプロフェッショナルなリリースに耐え得るだけのクォリティーは出せるんじゃあなかろうか。

スペイン語ポルトガル語に関しては、未知数だ。興味を持っているという話も一度もきいた事がない。それに、婚家であるイタリアの言葉も覚えているとなるとあまり入り込む余地はないかもしれない。子育ての間つきっきりだから合間に語学の勉強を、となっていても不思議ではないのだけれど。

いずれにせよ、歌うより作詞の方が大変である。なかなかに、実現可能性は厳しい。しかし、グローバルなヒカルをみせるチャンスである事にはかわりがない。あれやこれやで平和な心のアピールになってくれればこちらとしても嬉しいというものだ。

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で、そうそう、キングダムハーツさんの仕事を請け負えば自然と主題歌の英語バージョンの話も出てくるだろうね。リリースの仕方は『Ray Of Hope 』と同じになるだろうか。つまり、日本語版と英語版のカップリング。今度はオープニングとエンディングで分けるかは不明だが、あらゆるバリエーションが可能なタイアップなのだという事は覚えておいた方がいい。

「2」の主題歌『Passion』には3パターンの楽曲があった。『Single Version』『Original Version』『after the battle』。これに英語版として対応するのが『Sanctuary』の『Opening Version』『Ending Version』だった。つまり、英語版の『Sanctuary』には『Single Version』が存在しない。『ずっと前に好きだった人〜』以下のメロディーと歌詞に英語版は存在しない。シングル曲としてリリースする必要のあった日本独自のバージョンだった。

今は、というか今回はシングルバージョンは作らないだろう。というのも、そのような「市場の要請」が今の日本には皆無だからだ。2005年同時であれば、「宇多田ヒカルがシングルをリリースする」というのは一つの事件であって、故にその楽曲は多大な期待を背負って世に送り出されていた。「このままではシングル曲として弱い」という判断が為されれば、エンディングにもうひとつパートをぶちこんで増やしてでも、"シングル曲としての体裁"を取り繕う必要があったのだ。それ程までに「市場からの期待」とそれに伴う「同調圧力」は大きかった。

今は、宇多田ヒカルという名は相変わらず大きいけれどそれはもうただの別格であって、曲が売れようが売れまいが揺るぎない。どんな歌を出そうがそれは「宇多田ヒカルの新曲」でしかない。ただの曲としては聴いて貰えないのだ。「市場に合わせたバージョンを作る」意義も要請も存在しないのである。

「キングダムハーツといえば宇多田」の図式もすっかり定着した。皆も期待しているが、それは「市場の要請」とは少々違う。この違いを説明するのは難しいけれど、要はヒカルが優位に立てているという事。過去の実績を顧みれば当然の地位なのだが、なんだろう、大きくなりすぎたよね、何もかも。

この状況で「初心に還る」事が出来たなら大したものだが、それはどうしたって破壊的にならざるを得ない。そこまでする必要を今は感じないので、真正面から皆の期待に応えて貰おう。やっておしまいなさい。

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『あなた』のYouTube再生回数は600万回を突破、映画「DESTINY 鎌倉ものがたり」は予想外の、かどうか知らないがロングランで興業収入(だっけ?)30億円を突破、とどちらも基準がよくわからないけど結構なヒットを記録した模様。関係者一同ホッと胸を撫で下ろしたかガッツポーズをしたか。まぁ取り敢えずこれだけ数字を出されると「ポシャった」なんて言う人は妬みとの謗りを免れないだろうな。

映画の方は公開当時に書いた通り、内容が「実写版ジブリ映画」とでもいうべきファンタジー色の強いもので、昨今ますますアニメ・漫画作品が主流化している日本映画(実写でも調べてみたら漫画原作だったりねぇ)の中ではある意味「手堅い」作風で、家族連れまで取り込んだ感じだったのではと勝手に推測している。後に地上波テレビ局で放送があっても10%位視聴率とれるんでないかな。

逆に、そういう作風だと思うと『あなた』の曲調が異質に思えてくるから不思議なものだ。実際は映画のエンディングにこれ以上ないハマり具合をみせ、それがみたいが為に「DESTINY 鎌倉ものがたり」の円盤を買ってしまいそうになる程なのだが、「妖怪ファンタジー絵巻」という正しい筈のキャッチコピーをつけた途端に『あなた』じゃないでしょ、となるのだ。どこらへんがマジックなのか。

『地獄の業火』とか言いつつ、そのサウンドは案外モダン。特にストリングスの使い方は「今風」というヤツで(この言い方は「流行の最先端」からちょっと落ち着いたくらいの頃にあなたしっくりくる)、Popsの王道とも言えるものでまぁ妖怪ファンタジー映画に合ってはいるのだがこの曲の場合そこにブラス/ホーン・セクションが入る。ここが肝だ。

ストリングスの手馴れ感に比べブラスの、なんともいえない「間抜けな響き」がコントラストを形作っている。これが、どこまで狙い通〜り、なのかが未だに気に掛かっている。

ヒカルのブラスの使い方は、数は少ないが「いつもこう」なのかもしれない。古くは『You Make Me Want To Be A Man』で「こんな単純なフレーズをプロに頼むのは如何なものか」とスタジオのアシスタント君に吹いて貰っていたし、最近では『荒野の狼』でのあからさまな使い方もそうだ。普段ジャズトランペッターやサキソフォニストの演奏に親しんでいる身としては「喇叭はもっとセクシーな音が出せるんだ!」と言いたくやるくらい呆気ない使い方なのだ。ストリングスはいつも色気タップリなのにねぇ。

でもその使い方のお陰で『あなた』は日本語の歌としての存在感を確立している訳でまぁ難しいバランスの上で成り立っているサウンドだなぁと感心する訳でありますよ。

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