無意識日記
宇多田光 word:i_
 



前回『Rule(君に夢中)』の『The second guessing I do is not doing me any good』を「くよくよしててもいいことなんかない」と訳した。さてその次の歌詞を見てみるとこちらになる。

『The constant texting we do is making me really rude』

前にも取り上げた一節ですね。こちらは文字歌詞のバージョンで『we do』になってる方。

この2文が対応関係にあることは見ればわかる。というか、こうやって字で見た方が音で聴くよりわかりやすい。

『The second guessing』↔『The constant texting 』
『I do』↔『we do』
『is not doing me』↔『is making me』
『not any good』↔『really rude』

という風に見事に対になっていますね。

前回ココを取り上げたとき指摘していなかった点。恐らく最初は、『I do』↔『we do』という対応関係の為に『we do』を採用していて歌詞カード用にもそう書いたのだろう。だが実地に歌う段までに『with you』に変更した、ということになるかな。なぜ『with you』にしたかの話は今回は省きますが。

で。斯様にキレイな対応関係なら訳し方も対応させたいところ。だけどいいのが思い付かなかったので暫定案だけ書いとく。

「くよくよしててもいいことない
 やりとりだけではらちがあかない」

尺はいいとして、「ヒカルの歌詞らしさ」が足りないのよね。またいい案が浮かんだらその時に。


なお、ここの『rude』の訳し方が結構難しい。本来無礼とか粗雑とかいう意味なんだが、テキストやりとりしてて無礼って、今時そんなこと言う?とか疑問を持ち始めるとわからなくなる。恐らくここはあまり厳密に考えず、広い意味でネガティブな響きの言葉ならそれでよしと捉えるべきかと。

というのもここの『rude』は、上記のように『good』との対比となっているからだ。「よい」に対して「わるい」の意味が入ればそれでいいのだ。が、ではなぜアルバムタイトルにも入っていて尺的にも問題がない“bad”を使わなかったのかという疑問が湧く。その理由は、曲タイトルの『Rule』と韻を揃える為だ。それによって、

『me really rude』



『you rule』

もまた対比される。「私は無様なもんだけど、あなたは輝いているわねぇ」という対比を意味上でも音韻上でも表現するために、“bad”ではなく『rude』を使ったのだろう。もっといえば、

『any good』
『really ○○○』
『I let you rule』

の3つで音韻を揃えたかったが故に真ん中の「○○○」の部分には『rude』が採用されたのではないかな。2つの箇所の音韻だけでなく3箇所で韻を踏んで意味上でも対比させてというまぁややこしい動機による単語の選び方。やっぱり作詞家宇多田ヒカルの持ってる技巧は複雑怪奇だわね。

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『Rule(君に夢中)』に

『The second guessing I do is not doing me any good』

という一節がある。直訳すると

「私のする二番目の推測は私に何もいいことをしない」

となって、意味がわかるやらわからないやら。グーグル先生に訊くと

「二度目の推測は私に何の役にも立たない」

という感じでまぁ五十歩百歩。ところがDeepL先生は

「二の足を踏んでいるようではダメなんだ。」

とかなり踏み込んだ訳を投げ返してきた。踏んでるだけに。やかましいわ(笑)。

ともかくこれならわかりやすい。「The second guessing」は「二の足を踏む」だと覚えておけば結構問題ないだろう。

ただ、このままだとヒカルの歌詞っぽくない。ので、今までのヒカルの歌詞に沿って訳し方を考える。

「The second guessing」は「二回も同じ事を考えてしまう」という意味なので、躊躇ってたり思考が堂々巡りしてしまったりという状態を指す。「ああだこうだと考える」なんて訳し方もあるね。目標に向かう実感なく悩んじゃうことを言うのだろう。考えても仕方ないじゃない、と自分に言い聞かせたい時…となると、『あなた』のこの一節が思い出される。

『一日の終わりに撫で下ろす
 この胸を頼りにしてる人がいる
 くよくよなんてしてる場合じゃない』

そう、これよね、「くよくよする」。「いつまでも気に掛けて思い悩むさま」。なるほど、これなら日常的で、文字数が少なく、響きも面白くて如何にもヒカルが歌詞に使いそう。他にも『Fight The Blues』に

『くよくよしてちゃ敵が喜ぶ』

なんてのがありましたっけかね。ということでこの『Rule(君に夢中)』の

『The second guessing I do is not doing me any good』

の部分の対訳は

「くよくよしててもいいことなんてない」

に決定。如何にもヒカルが歌いそうなフレーズに仕上がりました。これで意味も通りやすくなるだろう…という話は前後の歌詞を踏まえてまた次回、かな?

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