無意識日記
宇多田光 word:i_
 



前回と同じ話になっちゃうけど、重荷を降ろした『First Love (Live 2023』の軽やかさって、私これ無性に泣けてきちゃうのよね。今までこの曲にどんだけ重いモノを背負わせてきたんだろうって。よくひとりでこんだけのものを背負い込んで生きてきたなぁ。確かに、もう身軽になっていいよ。なって欲しいわ『First Love』には。


昨夏にヒカルが言っていたことを今一度思い出す。

『人に頼るっていうことは、いいことだと思うんですよね。自立した人間であるということは、いろんな人にちょっとずつ頼ること。それが依存の逆の定義。』
─── 2022/8/6sat NHK「ライブ・エール」より

曲も人といっしょだと思うのよ。曲に頼るのはいいことだけど、1曲にだけ頼り切ってしまうといけない。いろんな曲にちょっとずつ頼ることで、自立した音楽家になっていける。ヒカルは最初の12年でそれを既に実践していたけれど、更に次の12年でも(実働は半分の6年だが!)それを甚だしく押し進める事が出来ている。そこんとこを音楽で表現したのが『First Love (2023)』なんだと思うと、24年の重みあってこその軽やかさなんだなって…今まであれやれやとヒカルが泣いてきた場面を思い出して貰い泣きしてしまうぜ。いろいろあったもんねぇ。

しかしヒカルはこれからの10年の方こそ『いろいろ♫』なんだと言って憚らないのだから堪らない。重みあってのフットワークの軽やかさでいろいろチャレンジしていくに違いない。


ふむ、これを読んでる人の中にも、いろいろと背負いすぎてる人は居ませんか? あれもこれも自分でしなきゃって追い込んで思い詰めちゃって。自分の周りの状況が変わらないとどうしようもない、っていうのはホントそうで、でも心の奥底では誰か少しでもこの負担を分け合ってくれたらいいのにっていつも願っていたり。そういう人ほど今回のニューライブミニアルバム『40代はいろいろ -Live from Metropolis Studios』のサウンドは泣けてくる気がする。しんみり、しみじみと。

逆に、特定の周りの誰かに頼り切って毎日を生きてる人も居てはるかもね。そういう人は、このサウンドに触れて、いろいろと考え直しちゃうかもしれない。ひとりっきりにあれもこれも背負わせちゃってる現状は、どうなんかなと。

あたし普段音楽聴くときこういう「外側の情緒」を持ち込むことをあんまりしないのね。純粋に音だけ聴いて楽しみたい方だから。だから「音源化」「サブスクリプション・ストリーミング・サービスに登録」「商品化」「フィジカル化」が大好きなんですよ、そこに確固とした枠組が出来上がって環境や周囲と区別されるから。雑踏の中に埋もれちゃわない、と言いますか。

だけどこのヒカルの最新の2023年のサウンドは、そういう、部屋でヘッドフォンで集中して聴くだけではない、開かれた可能性を今までになく感じさせてくれるというか。ふとした時にこのサウンドが小耳に挟まった時になんかいい、やたらいい、と感じさせてくれそうで。人生のサウンドトラックというか、いやもう生活のサウンドトラックかな?? これを何気なく流しながらお茶を淹れるだけで無性に幸福感を感じられて…やっぱそのうち泣けてきそうで。

一般的に「大人の音楽」というと、落ち着いていたり、渋味があったり、重みがあったりといったイメージもあるけれど、この軽やかさ、軽快さ、爽やかさの中に「宇多田ヒカルが物凄く大人びていた件」を強く感じるとは、聴く前は思ってもみなかったわ。音楽家としての自立と、周りの仲間たちへの信頼と、リスナーとの距離の取り方と。何もかも「大人になったなぁ」と深々と思うわけですこの音を聴いてると。いやほんと、ライブ・バージョンだし初出でもない音源なのだけど、この『40代はいろいろ -Live from Metropolis Studios』って作品は、後々宇多田ヒカルの歴史を語る上で欠かされざるべき逸品として語り継がれていく予感が物凄くしています。……ベッタベタな締め方をするしかないな今夜は! そう、この1枚を聴き逃す手は無いぜ! Don't miss it !!!

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無事『40代はいろいろ♫』のアーカイブ動画と音源配信が始まった。もうネット接続不良に悩まされることなく存分に楽しめるぞ!
スウェットの販売も決まって至れり尽くせりだねこりゃ。

しかし、考えてみれば、いや大して考えなくてもわかることか、『First Love (Live 2023)』と『Rule (君に夢中) (Live 2023)』のカップリングって強力だねぇ。片やオフィシャルYouTubeで常に宇多田ヒカル再生回数トップを走る永遠のスタンダード・ナンバー、片や年間最も好評価を集めたドラマの主題歌にして1億回再生を突破した新しいスタンダード・ナンバー。いやこんな組み合わせでEPを発表できる邦楽アーティストが今あと何組いることか。それをデビュー24年のベテランがリリースしてるんだから凄いの一言。

しかし音源自体はそんなこちらの熱の入りようや肩の力の入れようとは全く異なるといいますか。特に『First Love (2023)』の方は物凄くリラックスしたサウンドに仕上がっていて、ものっそい肩の力を抜いて貰ってしまった。いや何この優しさと慈しみと軽やかさは。

それはまるで、『First Love』という楽曲に対して「おつかれさまでした」って言ってるみたいで、なんだか、楽曲から直接じゃなくて、メタに切なくなってしまった。今まで宇多田ヒカルってでっかい名前の看板を背負い続けてくれてありがとう、みたいな。

タイミングが凄いよね。Netflixドラマ『First Love 初恋』の大ヒットを受けての『First Love』の猛烈なリバイバル・ヒットを受けてからのこれだもの。公式としても7インチシングル盤をついこの間出したばかり。そこでこの2023年のニュー・アレンジメントなのよね。何この絶頂期に引退みたいな雰囲気は。山口百恵かキャンディーズか。(昭和も昭和だなっ)

繰り返してきたとおり、ライブ・コンサートでの『First Love』は、観客の期待に応えるために極力オリジナルに近い編曲と歌唱で演奏されてきた。アップテンポになったりバラードになったりサビから始まったりと自由自在極まりない『COLORS』なんかとは対照的に。その自由が、この2023年のバージョンで漸く『First Love』にも解禁になるのかもしれない。

『Flavor Of Life』『Prisoner Of Love』『花束を君に』『初恋』『One Last Kiss』そして『君に夢中/Rule』と、コンサートのハイライトを任される楽曲が存分に出揃ったというとこだろうか。責任から解放された自由が、360RAを睨んだ空間的なアレンジの其処彼処に漂っている。ただ、責任から解放されたってだけで元気満々現役感バリバリなので、セミリタイアというよりはセカンドキャリアって雰囲気だけども。

そうね、特に、2番のアタマから入ってくるドラムのビートはヒカルがブレイクする前の状態を想像せずにはいられない…とかいう話はまたの機会にするとして、今はこちらも肩の力を抜いてこの新しいバージョンを楽しみたいと思いますです。ホントにステキ。

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