無意識日記
宇多田光 word:i_
 



『道』とはパッセージ、即ちメロディーの事なのではないか、と言った時に、最もシンプルに答を確かめる方法は、歌詞の『道』のところに「歌」をそのままあてはめる事だ。やってみよう。


「一人で歌ったつもりの歌 でも始まりはあなただった」
「It's a lonely song. But I'm not alone. そんな気分」

「ひとりで歌わねばならぬ歌でもあなたの声が聞こえる」
「It's a lonely song. You are every song. これは事実」

「どこへ続くかまだ分からぬ歌でもきっとそこにあなたがいる」


うむ。感想は人それぞれだろうが僕には寧ろオリジナルよりも直接的に「藤圭子と宇多田ヒカルの物語」を感じられて、大変よい。

一人で歌ったつもりの歌でも、つまり、勝手に自分が歌い始めていたのだと思ってたけどこれ明らかに私お母さんの影響で歌い始めてるよね、って事だ。ここをそう読んでおけば2番冒頭の『調子に乗ってた時期もあると思います 人は皆生きてるんじゃなく生かされてる』もよりリアルに響いてくる。腑に落ちる。

「これは孤独で寂しい歌だけど、私は1人じゃない。」―『道』のままとさほど変わらない、かと思いきやここに『そんな気分』が続くのがまたよりしっくりくるんだな。「これは孤独で寂しい歌だけど、私は1人じゃない、そんな気分。」 ふむ、『道』のままよりこっちじゃないのか。

もっとわかりやすく変化するのが2番のサビだ。『これは孤独で寂しい歌だけど、どの歌(を歌って)もそれはあなた(そのもの)なんだから』となる。これで『You are every song』の意味がわかった人も多いんじゃないか。「だから1人じゃないんだ(But I'm not alone.)」という結論になる。「私にとってあなたが歌なのなら、歌う私はいつでもあなたとともにある」というのがこの歌の主旨なのだ。「あなたが歌」なのは「歌の始まりはあなただった」のが理由である。この流れがあるから最後の〆が『これは事実』なのだ。『これは孤独で寂しい歌だけど、どの歌もそれはあなたなんだから。これは事実。』―ね、そういう事なんだ。

「ひとりで歌わねばならぬ歌でもあなたの声が聞こえる」
「どこへ続くかまだ分からぬ歌でもきっとそこにあなたがいる」

もうこの並びは「復帰して歌い続ける決意」を歌った歌そのものだ。歌い続ける事でどこまでもあなたに近づける。ずっとともにあれる。その願いを歌ったのがこの『道』なのだ。

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先日終わった卓球の世界選手権はテレビ視聴率も好調だったようで、テレビ東京は週間ゴールデン平均視聴率で開局以来初めて民法トップ3に食い込んだという。マイナーといわれていた卓球競技にスポットを当てて貰って卓球ファンはさぞテレビ東京に感謝しているだろうと思いきやネット上では罵詈雑言の雨嵐。何があった。

国際卓球連盟では普段から主催試合を無料・無登録でストリーミング生配信している。ツアー大会は勿論のこと、世界選手権も同様だ。ittvと呼ばれるこのサイト、実は大手のテレビ局が放映権を買うとストリーミングをブロックしてしまうのだ。そのテレビ局の在る国限定で。

もしネットでもテレビと同じ試合をストリーミングすれば視聴者が分散され視聴率が落ちてしまう、という懸念もわからなくはない。しかし今回はテレビで中継している試合のみならずittvをまるごとブロックしてしまった。これでは、日本代表のみならず各国代表の試合を見たがっている普段からのittvウォッチャーの怒りを買うのは当然だ。よりによって普段のツアー大会より重要な世界選手権がね。

まだまだ細かい話はあるが、要するにテレビ局が放映権を買う事で普段楽しめているスポーツ生中継ストリーミングが楽しめなくなって反感を買った、という話。もう典型的な「旧弊事例」である。CMを流してスポンサー料を貰うという旧来の手法を、変革するでもなくネットにアジャストさせるでもないならば、新旧文化の衝突も不可避になってしまうわな。

これは本当に教訓である。世界卓球連盟は放映権料による莫大な収入が欲しい、しかし本来の顧客である卓球ファンから反感を買うのもまずい。本来ならネットストリーミングでもCMを流すとか、有料に切り替えて普段通りに見れるようにするとか対策はあった筈だが、旧弊というだけあって実現のハードルは高い。今回もネットサイマル放送にチャレンジしたが、流せたCMは番宣のみ。もう「あしもとにおてもと」も「吉祥寺うんたら」も見たくない。うんざり。(←流し過ぎの弊害)

多分、当事者たちもなんとかしなくてはと思っているのだが、半世紀以上続く地上波テレビの収益モデルを変えるのは容易でないのだろう。事実視聴率の面ではテレビ東京が見事に結果を出している。恐らくストリーミングを前面解禁しても視聴率は下がらないどころか上がっただろうし。

もう21世紀も17年経過したが、それでもまだまだ旧弊を覆すのには時間がかかる。殆どの人間が変革を望んでいてすらそうなのだ。ちょっとテクノロジーの進歩が急峻過ぎるというのもあるけれど、皆がどういう解決策を見いだしていくか、楽しみながら見守っていこうかと思います。結局他人事。

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