用のない街・福山さんぽ6

福山さんぽ、先ほどの寺町と神社めぐりの道中は、水路の端をずっと歩いた。西寄りの蓮池を水源に、御手洗川として観音寺あたりまで北吉津町を流れ、さらに丸之内方面へと流れている。水野勝成の時代に整備された上水道が、所以のようだ。

水は澄んでるし桜など花もちらほら咲いてるしで、水際の散策は気持ちいい。古い邸宅の土塀や簾、屋敷へ渡す石橋も風情あり、かつては生活用水だったのか水面へ降りる石段や邸内に引き込んでいるのも見られた。水路に面して部屋がせり出したところもあり、茶室とかだったりしたのかも。

金沢の長町武家屋敷界隈、といえばまたオーバーかもだが、部分的に切り取れば匹敵する箇所もある。歩いて見つけた福山のおさんぽ潜在力、これは期待できそうだ。

用のない街・福山さんぽ5

福山さんぽ、寺町あれば神社もありで、こちらも個性派ぞろいだ。天守すぐ裏手の備後護国神社は、祭神の阿部正弘が学問の神様のため、受験と就職祈願の社。鬱蒼とした森の中、石段を登ると焼板の年季ある社が建っている。向かいの石段を登ったところの三蔵稲荷神社は、福山城の守護神。藩への使いの者を守った武士・三蔵に化けたキツネを祀ったことから名がついたという、不思議な由緒がある。食の神様でもあるので、お参りを念入りに。

観音寺の西にある艮神社は、市街一円の守護神。ここも鬼門守護を担い、展望のいい観音寺のさらに上にあるので市街を一望できる。そして福山八幡宮は、本殿の左右に東と西それぞれの御殿を備える、界隈でいちばん大きな社である。福山の総鎮守で、海運と生活の守護神とされ、時節柄お宮参りの家族連れが多い。背後に鬱蒼とした森を控える境内は、正面に城郭を望め風が渡り気持ちがいい。

もちろん、寺町めぐりと合わせて散策できるので、福山のご利益さんぽとして売り出してみるのはどうだろう。

用のない街・福山さんぽ4

福山さんぽ、城郭のそばには寺町ありの法則通り、北側の丸の内地区には5つの寺が点在している。高野山別院をはじめ、釈迦如来はじめ三尊が本尊の胎蔵院、高台から市街を見下ろし朱の屋根裏が鮮やかな観音寺など、真言宗の寺が多い。一方で日蓮生誕800年報恩を掲げる日蓮宗妙成寺、質実剛健なたたずまいにソテツが威容をかもす曹洞宗龍興寺といった、各宗派の名刹も。観音寺は福山城の鬼門守護、妙政寺と龍興寺は城主水野家の菩提寺など、城郭との所以もそれぞれあるのが、お城の寺町らしい。

あたりは旧市街のため静かな雰囲気で、駅前の喧騒からは離れて静かなさんぽが楽しめる。尾道に匹敵する古寺めぐり、はオーバーかもだか、乗り換えなどで小一時間ほど間が空いたら、城巡りとともにオススメだ。

用のない街・福山さんぽ3

福山さんぽ、まずは駅の裏にそびえる福山城へと行ってみた。城郭の敷地内には歴史博物館や美術館が集まり、ちょっとした文化エリアになっている。JRの高架のすぐ裏から登れ、石垣の間や鍵辻といった、城郭風情がある中を行く。ところどころで崩れた石垣が積み上げられており、何か調査をしてるのだろうか。

福山城は水野勝成が築城し、後に阿部氏が代々の城主を務めた。明治に入っての廃城時と昭和20年の福山大空襲で、ほとんどの建物は消失してしまい、現存するのは新幹線から見え登り口に美しい白漆喰の姿をみせる伏見櫓、本丸に入るところに堂々と構える筋鉄御門、本丸西側の鐘楼のみとなっている。天守閣は再建で中は博物館だが、木造の湯殿、赤い欄間が鮮やかな月見櫓とともに、堅牢な城郭らしい優美な佇まいを見せる。

帰りにJRの高架を潜った際、直下に三ノ丸西御門櫓の台となった石垣も見られた。三原城跡もだが、ここももと城郭の敷地内に鉄道が走っているというわけだ。

福山ニューキャッスルホテルの朝食@福山

用のない街・福山さんぽで泊まった、駅前のニューキャッスルホテル。起きて窓から外を見たら、見事なまでのトレイン&キャッスルビューだ。これは歩きに行きたくなる眺めである。

値段は1万円ちょいだが部屋はもちろん、朝食も素晴らしく、地下の和食処「鞆の浦」の和朝食は、魚の粕漬けにさつま揚げがうまい。だし巻きと茶碗蒸しは温かく滑らか、デザートは御当地はっさくと、心尽しが嬉しい。これで2000円ぐらい払える評価である。

家族に市の花であるバラのブローチを買ったら、街を歩きましょうか。