ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

魚鐵@九段下

2015年12月18日 | 町で見つけた食メモ
恒例の広島会、今年の忘年会は自身が幹事となり、都内の魚系エース級の九段下「魚鐵」にて。市のみならず県もからみ、オール広島の陣営で盛り上がった。

エッジの効いた刺盛りに始まり、身がパツパツで白子がトロリのカレイのから揚げに、マグロのうまさいいとこどりのカマと、料理は相変わらずの切れ味。安芸津の「海風土(しーふうど)」をご用意下さったのは、なかなかイキかと。

うまい魚を楽しみに、ここぞの店のありがたさ。いや、一同堪能いたしました。

MILK LAND HOKKAIDO→ TOKYO@東京ソラマチ

2015年12月09日 | 町で見つけた食メモ
ホクレンのアンテナショップ・MILK LAND HOKKAIDO→ TOKYOの視察にお邪魔した。場所は東京ソラマチイーストヤード5階、ジャパンエクスペリエンスゾーンで、飲食用のフリースペースと奥に飲食物販のコーナーが設けられている。入口を大きくとったオープンな印象で、今日から稼働ながら女性グループや親子連れでかなり賑わっていた。

施設は道産の牛乳と乳製品のPRを目的としており、フリースペースのテーブルには牛乳の流通をテーマとしたジオラマが。北海道から東京に届けられるまでを、ちっちゃい牛のフィギュアを散りばめた牧場風景からスカイツリーまでの模型を使い、楽しく表している。数字やキーワードも配されていて、喫茶しながら自然に目と頭に入るよう。アンテナショップとして、理想的な構造といえる。

イートインでの売りは、産地ごとの生クリームと牧場直送のソフトクリームに、ソースやトッピングやグラノーラ各種を好きに組み合わせられる、オリジナルパフェ。興味あったが原料の生乳をきっちり味わいたく、3種の牛乳の飲み比べを選んだ。基準の「よつば牛乳」は北海道で飲み慣れた銘柄で、甘みがふっくら豊か。比べると「美瑛牛乳」は連なる丘のイメージたる、すっきりした瑞々しさ。お姉さんオススメの「函館牛乳」は、湾越しに鎮座する函館山のごとしな、どっしりとした厚み。その土地柄所以の味わいが出ている、というのは少々オーバーか。

TPPの影響は乳製品にも噂されており、安価な輸入加工品の流通が国内産品にも影響を及ぼすことが懸念される。それに対抗しうるは、世界トップクラスと称される、道産の乳製品の品質。国内生産量の50パーセントを占める酪農王国・北海道の底力を、都内屈指の観光スポットにて、存分に発揮してほしいものだ。

登利平の鳥めし@高崎

2015年12月07日 | 旅で出会った食メモ
「高崎そだち」生産の現場巡りレポ、晩御飯に行った高崎駅ビルの「登利平」は、鳥めしの評判店。鳥めしは甘辛いタレのせご飯の上には、胸肉とモモ肉がバランス良く盛られ、異なる食感が楽しめる。

これ、上州では知る人ぞ知るソウルフードで、運動会とか会議とか大人数が集まるイベントでは、定番の仕出しだそう。横浜では崎陽軒のシウマイ弁当が、それにあたる。

ローカルミートでスタミナごはん…高崎 『高崎そだち』生産者探訪5

2015年12月07日 | ◆ローカルミートでスタミナごはん
高崎のブランド食材「高崎そだち」の生産者めぐり、最後の締めくくりは江原養豚さんに伺った。銘柄豚「えばらハーブ豚 未来 」は、抗生物質や合成抗菌剤を一切投与せずに育てた、安心と安全にこだわった豚肉。と文字にするのは易しだが、その生産の実現は、様々な苦労の上に為されていることを伺い知った。

こちらで無投薬飼育を始めた2000年は、EUが発育目的の飼料添加をやめたのより5年早く、当時の日本では例がない。そのため、まずは無投薬の定義づくりから始めねばならなかった。一般には肥育期間の180日中、3分の2は国指定の抗生物質入りの餌を与えるところ、ここでは離乳させながら餌付けを始めてから、205日かけ出荷するまで一切与えない。加えて10種以上のハーブや有機酸、乳酸菌、各種ビタミンをカプセル化して配合することで、安全かつ栄養価の高い豚肉に仕上げられているのである。

徹底した無投薬飼育は、初年度の実験段階では一定の成果を得たものの、事業化には数々のハードルが立ちはだかっていた。病気感染のリスクで死亡率が高いのに加え、「ヤギみたいだった」と比すように肉付きも悪く、ロス分のコストがかさむのに卸値は下がる悪循環。3年目には経営的な限界が迫り、ほぼやめることを決めた時期もあったそうである。

それでもこのままでは、豚価が将来的に低落するのが目に見えており、生き残りを賭けてこの飼育に臨み続けた。ちょうどこの時期に出席した講演会の講師に取り組みを評価、励まされたこともあり継続を決めたところ、4年目に転機が。豚舎の菌環境が安定して、豚が死ぬ数が減り太ってきたのだ。ここから経営が持ち直し、現在は無投薬豚の代表的銘柄として、えばらハーブ豚の名が知られるようになったのである。

無投薬飼育に際し、最も気を配るべきことは衛生管理であり、特に重要なのが母豚の健康管理だ。豚は母親の胎内で免疫を受けず、生後に母乳から抗体を摂取する。母豚の健康は子豚の健全性に直結するため、衛生ほか病気や抗体検査、薬剤感受性や遺伝子など、様々な検査で母豚を徹底管理しているそうである。また一般の養豚では初産の豚をどんどん入れるが、ここでは年齢構成を一定にすることで、豚舎の菌層を安定させている。環境を崩さないことが無投薬飼育の最重要ポイントです、と、経験から語る言葉がなかなか重い。

環境の安定による成果は、生産と流通に関わる指標的数字にも現れている。病気等のために投薬したため、無投薬飼育から分けた「保護豚」の割合が、かつては30パーセントだったのが4〜7パーセントに。食用に適さない内蔵の比率を示す「内蔵廃棄率」も、一般的に6割ほどなのに対しここ数年平均で13.5パーセント、今年は10パーセントを割るかも知れないとも。「大地を守る会」「らでぃっしゅぼーや」といった有機宅配大手の取り扱い、ぐるなびの「ベストオブメニュー」や料理王国の「食の逸品コンクール」の入賞など、品質への評価も高まってきている。

その味だが、以前に東京・神楽坂の「リストランテ アルベラータ」で「高崎そだち」を用いた食事会が開催され、ソテーで味わったことがある。弾力があるのに肉汁が保たれ、グイッ、ジワッとの食感に、しっかり封じられたジューシーな旨味があふれ出んばかり。ビタミンB1・E、オレイン酸が一般の豚肉より高く、「豚肉を超えた豚肉」「奇跡の豚肉」との表現も、決して大袈裟でない存在感だ。

薬を与えないことではなく、健康管理を徹底し、それに効果のある飼料投与がプレミアです、と生産者。先頭を走って事を成すことは厳しくリスクは大きいが、真の「ブランド」はそれを乗り越えないと標榜できないとの言葉には、経験ゆえの説得力がある。加えて、長くお客とつながること、ファンを作ることが大切との、顧客への強い思いも。いわく「幸福感を感じられる豚肉」とは、生産者発流通者に料理人に消費者の、いずれにも共有・共感できるメッセージに感じられた。

ローカルベジタでヘルシーごはん…高崎 『高崎そだち』生産者探訪4

2015年12月07日 | ◆ローカルベジタでヘルシーごはん
高崎のブランド食材「高崎そだち」の生産者めぐり、後半は国府地区にある国府野菜本舗にお邪魔した。店内に並ぶ地場産野菜の中でも、視察のお目当ては長〜いにんじん。1メートル近くあるそのフォルムこそ本来のにんじんの姿、というと、驚く方も多いのではなかろうか。

国分にんじんは正式な名を「国分鮮紅大長人参」といい、大正期にフランスから入ってきた種を改良し、当地に根付いた種である。界隈は榛名山の噴火による火山灰性の土質で、柔らかく肥沃なため野菜の栽培に適していた。このにんじんも昭和30〜40年代には国府地区を代表する農作物で、種が前橋の種苗会社から全国に販売され広まったことから、日本の長にんじんのルーツともされている。

当時はにんじんといえばこの長い種が中心で、市場流通の半分以上をしめていたこともあった。しかし生活様式の変化で、その長さが仇となる。長すぎて冷蔵庫に収まらない、少子核家族化で量が多すぎるなど、需要は短根種へとシフトし生産量が激減。市場でも、その姿を見ることがなくなってしまったのである。

現在は地元の農家一軒で細々と生産するだけとなったが、近年になりこの伝統野菜を伝承させるべく、農業組合法人国府野菜本舗が中心となり動き出す。就農者ほか援農の協力者もあり、栽培の継承と拡散が進んでいる。量的に現状はこの直売所とイオン高崎のみの扱いだが、需要の伸びに合わせ生産者も増えてきているので、今後の動向に期待がかかる。

栽培はその長さゆえ、手間と労力がかかるのが致し方ないところ。生育に時間を要するため、種を蒔くのは7月の20日前後と、普通のにんじんより早い。梅雨明け頃は天候が不安定なため発芽が難しいのに加え、芽が出ても土づくりがおろそかだと、まっすぐ伸びてくれない。冬場の収穫も、長さ相応に根がしっかりつくから、抜くことができず掘りかえさなければならず、なかなかひと苦労といえる。

一方で食味の方は、身が固く締まっているので煮崩れづらく、煮物など加熱調理にはもってこい。松前漬けに使うと味と発色が良く、キムチにも向いているそうである。甘みも糖度10度と高く、加熱するとさらに2度ほど上がるので、子どもに好まれるのだとか。店舗の一角ではジェラートを扱っていて、国分にんじんほか名産の焼きまんじゅうミルクに桑茶の、群馬名産トリプルを味見。果物的な甘さにほんのり土の香りがよぎり、まさに上州の大地を味わうごとくの力強さである。

国分にんじんの復興は、農業というよりは地域おこしです、と話す代表の方。ともあれ、貴重な地場の食材と食文化を守り伝えるその姿勢は、賞賛に値する。かつては周辺はにんじんの開花期に、霧で霞むようだったそうで、いつの日かその眺めが再び拝めるよう、見守っていきたいものだ。