ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

登利平の鳥めし@高崎

2015年12月07日 | 旅で出会った食メモ
「高崎そだち」生産の現場巡りレポ、晩御飯に行った高崎駅ビルの「登利平」は、鳥めしの評判店。鳥めしは甘辛いタレのせご飯の上には、胸肉とモモ肉がバランス良く盛られ、異なる食感が楽しめる。

これ、上州では知る人ぞ知るソウルフードで、運動会とか会議とか大人数が集まるイベントでは、定番の仕出しだそう。横浜では崎陽軒のシウマイ弁当が、それにあたる。

ローカルミートでスタミナごはん…高崎 『高崎そだち』生産者探訪5

2015年12月07日 | ◆ローカルミートでスタミナごはん
高崎のブランド食材「高崎そだち」の生産者めぐり、最後の締めくくりは江原養豚さんに伺った。銘柄豚「えばらハーブ豚 未来 」は、抗生物質や合成抗菌剤を一切投与せずに育てた、安心と安全にこだわった豚肉。と文字にするのは易しだが、その生産の実現は、様々な苦労の上に為されていることを伺い知った。

こちらで無投薬飼育を始めた2000年は、EUが発育目的の飼料添加をやめたのより5年早く、当時の日本では例がない。そのため、まずは無投薬の定義づくりから始めねばならなかった。一般には肥育期間の180日中、3分の2は国指定の抗生物質入りの餌を与えるところ、ここでは離乳させながら餌付けを始めてから、205日かけ出荷するまで一切与えない。加えて10種以上のハーブや有機酸、乳酸菌、各種ビタミンをカプセル化して配合することで、安全かつ栄養価の高い豚肉に仕上げられているのである。

徹底した無投薬飼育は、初年度の実験段階では一定の成果を得たものの、事業化には数々のハードルが立ちはだかっていた。病気感染のリスクで死亡率が高いのに加え、「ヤギみたいだった」と比すように肉付きも悪く、ロス分のコストがかさむのに卸値は下がる悪循環。3年目には経営的な限界が迫り、ほぼやめることを決めた時期もあったそうである。

それでもこのままでは、豚価が将来的に低落するのが目に見えており、生き残りを賭けてこの飼育に臨み続けた。ちょうどこの時期に出席した講演会の講師に取り組みを評価、励まされたこともあり継続を決めたところ、4年目に転機が。豚舎の菌環境が安定して、豚が死ぬ数が減り太ってきたのだ。ここから経営が持ち直し、現在は無投薬豚の代表的銘柄として、えばらハーブ豚の名が知られるようになったのである。

無投薬飼育に際し、最も気を配るべきことは衛生管理であり、特に重要なのが母豚の健康管理だ。豚は母親の胎内で免疫を受けず、生後に母乳から抗体を摂取する。母豚の健康は子豚の健全性に直結するため、衛生ほか病気や抗体検査、薬剤感受性や遺伝子など、様々な検査で母豚を徹底管理しているそうである。また一般の養豚では初産の豚をどんどん入れるが、ここでは年齢構成を一定にすることで、豚舎の菌層を安定させている。環境を崩さないことが無投薬飼育の最重要ポイントです、と、経験から語る言葉がなかなか重い。

環境の安定による成果は、生産と流通に関わる指標的数字にも現れている。病気等のために投薬したため、無投薬飼育から分けた「保護豚」の割合が、かつては30パーセントだったのが4〜7パーセントに。食用に適さない内蔵の比率を示す「内蔵廃棄率」も、一般的に6割ほどなのに対しここ数年平均で13.5パーセント、今年は10パーセントを割るかも知れないとも。「大地を守る会」「らでぃっしゅぼーや」といった有機宅配大手の取り扱い、ぐるなびの「ベストオブメニュー」や料理王国の「食の逸品コンクール」の入賞など、品質への評価も高まってきている。

その味だが、以前に東京・神楽坂の「リストランテ アルベラータ」で「高崎そだち」を用いた食事会が開催され、ソテーで味わったことがある。弾力があるのに肉汁が保たれ、グイッ、ジワッとの食感に、しっかり封じられたジューシーな旨味があふれ出んばかり。ビタミンB1・E、オレイン酸が一般の豚肉より高く、「豚肉を超えた豚肉」「奇跡の豚肉」との表現も、決して大袈裟でない存在感だ。

薬を与えないことではなく、健康管理を徹底し、それに効果のある飼料投与がプレミアです、と生産者。先頭を走って事を成すことは厳しくリスクは大きいが、真の「ブランド」はそれを乗り越えないと標榜できないとの言葉には、経験ゆえの説得力がある。加えて、長くお客とつながること、ファンを作ることが大切との、顧客への強い思いも。いわく「幸福感を感じられる豚肉」とは、生産者発流通者に料理人に消費者の、いずれにも共有・共感できるメッセージに感じられた。

ローカルベジタでヘルシーごはん…高崎 『高崎そだち』生産者探訪4

2015年12月07日 | ◆ローカルベジタでヘルシーごはん
高崎のブランド食材「高崎そだち」の生産者めぐり、後半は国府地区にある国府野菜本舗にお邪魔した。店内に並ぶ地場産野菜の中でも、視察のお目当ては長〜いにんじん。1メートル近くあるそのフォルムこそ本来のにんじんの姿、というと、驚く方も多いのではなかろうか。

国分にんじんは正式な名を「国分鮮紅大長人参」といい、大正期にフランスから入ってきた種を改良し、当地に根付いた種である。界隈は榛名山の噴火による火山灰性の土質で、柔らかく肥沃なため野菜の栽培に適していた。このにんじんも昭和30〜40年代には国府地区を代表する農作物で、種が前橋の種苗会社から全国に販売され広まったことから、日本の長にんじんのルーツともされている。

当時はにんじんといえばこの長い種が中心で、市場流通の半分以上をしめていたこともあった。しかし生活様式の変化で、その長さが仇となる。長すぎて冷蔵庫に収まらない、少子核家族化で量が多すぎるなど、需要は短根種へとシフトし生産量が激減。市場でも、その姿を見ることがなくなってしまったのである。

現在は地元の農家一軒で細々と生産するだけとなったが、近年になりこの伝統野菜を伝承させるべく、農業組合法人国府野菜本舗が中心となり動き出す。就農者ほか援農の協力者もあり、栽培の継承と拡散が進んでいる。量的に現状はこの直売所とイオン高崎のみの扱いだが、需要の伸びに合わせ生産者も増えてきているので、今後の動向に期待がかかる。

栽培はその長さゆえ、手間と労力がかかるのが致し方ないところ。生育に時間を要するため、種を蒔くのは7月の20日前後と、普通のにんじんより早い。梅雨明け頃は天候が不安定なため発芽が難しいのに加え、芽が出ても土づくりがおろそかだと、まっすぐ伸びてくれない。冬場の収穫も、長さ相応に根がしっかりつくから、抜くことができず掘りかえさなければならず、なかなかひと苦労といえる。

一方で食味の方は、身が固く締まっているので煮崩れづらく、煮物など加熱調理にはもってこい。松前漬けに使うと味と発色が良く、キムチにも向いているそうである。甘みも糖度10度と高く、加熱するとさらに2度ほど上がるので、子どもに好まれるのだとか。店舗の一角ではジェラートを扱っていて、国分にんじんほか名産の焼きまんじゅうミルクに桑茶の、群馬名産トリプルを味見。果物的な甘さにほんのり土の香りがよぎり、まさに上州の大地を味わうごとくの力強さである。

国分にんじんの復興は、農業というよりは地域おこしです、と話す代表の方。ともあれ、貴重な地場の食材と食文化を守り伝えるその姿勢は、賞賛に値する。かつては周辺はにんじんの開花期に、霧で霞むようだったそうで、いつの日かその眺めが再び拝めるよう、見守っていきたいものだ。

ローカルミートでスタミナごはん…高崎 『焼肉 箕輪亭』の、増田和牛の焼肉

2015年12月07日 | ◆ローカルミートでスタミナごはん
高崎ブランド食材「高崎そだち」の生産者めぐりの昼ごはんで寄ったのは、箕郷町にある「焼肉 箕輪(きりん)亭」。地元で生産している銘柄肉・増田和牛を味わった。最近、高評価されている銘柄で、都心の高級飲食店からのニーズが非常に高いとか。群馬ではここともう一軒でしか味わえないらしいから、実にありがたい機会である。

群馬や高崎の地名に聞かないその名は、生産者である増田順彦氏に由来する。箕郷町で10年ほど畜産農家をやっていたが、生産物の質を上げていかないと先細りになると危惧。そこで独自の方法の肥育により、自身でブランドを作り上げた。販路もJAに依存せず、自らの足で開拓。結果、食味への評価が口コミで広がり、川越達也や道場六三郎ら、影響力のある料理人の目に留まったこともあり、現在では「幻の高級牛肉」として名だたる存在となっている。

その味の秘訣は、通常よりも長い肥育期間にある。未経産の但馬牛を素牛として、肉の旨みが出てくる36ヶ月かけて肥育。出荷前の6ヶ月には大麦を蒸した「炊き餌」を与え、脂が口の中で自然に溶ける塩梅に仕上げられる。かつての松阪牛のやり方なのだそうで、長期肥育とかかる手間隙のため、月間の出荷頭数が5〜6頭がせいぜいなのが、希少となる所以だそうだ。

しかしながら「脂の質が違います。口溶けが良く、口に残りません」と、店の方が手間と希少さ相応の味の良さを推してくれる。いただいた大トロハラミ、ランプ、イチボいずれも、かめば脂甘さが身の丈で染み出し、後から赤身の旨みがじっとりくる。それでいて重さはまったくなく、体に負荷がかからずいっぱい食べられる肉だ。赤身と脂が並立した、二重の旨さが舌に胃に嬉しいこと。

群馬県は牛肉の消費量が全国で下位であり、この素晴らしい肉の認知度も今ひとつらしい。だからなおのこと、美味しい牛肉を地元の群馬・高崎の方に味わってもらいたいとの、生産者の狙いもあるという。値段はやや張るものの、「安心、安全は時間がかかり高いものなんです」と店の方。野菜と同様に畜産品にも、高崎の生産者の心意気が込められてるのを実感した、プチ贅沢なランチタイムであった。

ローカルベジタでヘルシーごはん…高崎 『高崎そだち』生産者探訪3

2015年12月07日 | ◆ローカルベジタでヘルシーごはん
高崎のブランド食材「高崎そだち」の生産者めぐり、続いては榛名地区のゆあさ農園にお邪魔した。榛名梅林は東日本屈指の梅の産地として知られ、この農園では有機栽培した梅、自然塩、天然水を使った、無添加の梅干しを生産している。

使う梅の品種は「白加賀」「梅郷」「紅養老」「織姫」「甲州」。梅の有機栽培をしているのは高崎ではここだけで、加工も一緒に有機認証をとっているところは、全国でも少ないという。使用する自然塩は、伊豆大島の「海の精」、石垣島の「石垣の塩」といった国内産のみならず、フランスのゲランドやヒマラヤ岩塩やウユニ塩湖の塩など、海外の名だたる塩まで幅広い。

パッケージにはそれぞれ、塩の銘柄が書かれたシールが貼られ、5種の梅と15種の塩の組み合わせで、各々異なる味わいに仕上がっている。食べ比べると塩分のとんがりや丸み、梅の甘さや濃さといった、食味の差が分かるような。ご主人いわく、材料は梅と塩のみの混じりけなしなので、梅の熟度と塩加減のみの勝負。文字通り、「塩梅」で決まるのだそう。酸味が強く塩分も高めだけれど、精製塩ではない本来の味なのだとも。

ここの製造工程は、通常の品だと6月に漬けて、11月に新ものが出回り始める。最近は「熟成梅」のニーズもあり、平成20〜22年に仕込んだ5年もの、さらに20年ものの梅干しなんてのも。「高崎・榛名の梅」とのラベルが巻かれた木箱に、恭しく5粒並んでおり、100g2000円のプレミア。高いから、売れ残ったら10年後に30年ものとして出すかな、と笑ってらっしゃるが、しっかり漬かりやや黒っぽい見た目は、なかなかの貫禄ものだ。

こうした多彩な商品展開の背景の一つに、東日本大震災での原発事故の影響もある。梅に関しては風評のレベルだったにもかかわらず、売り上げは半減。顧客もそれ以前と比べたら、かなり入れ替わってしまったという。しかしながら取組は一定の成果を得て、最近は毎年定期的に塩の銘柄指定で買ってくれるお客もいるとか。「梅干しは強い有名銘柄がある中で、うちは名前よりも安全と信用で売っていきたい」と話すご主人。なのでスーパーなどの大手流通には乗せず、直売を中心にお互い顔が見える流通を意識されている。

ちなみにご主人、家業を継いで就農される前は電機メーカーのエンジニアで、エコロジーへの意識も高い。農園の建屋にはソーラーパネルが設けられ、剪定した梅の枝を燃料にした「バイオモス(=梅を燃す)」と称するボイラーで給湯と暖房を賄う。強烈に酸っぱくしょっぱい、ここの梅干しの個性の強さは、自然と大地の恵みとご主人のこだわりが、がっちり込められているからかも知れない。