このところ、スタンプラリーに参加する機会がずいぶんと多い。関東近郊のJR駅を巡るポケモンスタンプラリーに始まり、横浜市内の博物館・美術館をめぐるもの、住宅展示場で景品がもらえる簡単なものなど、ここひと月でどれぐらい挑戦しただろう。そして今回は、横浜に事業所を置く企業の工場見学。主に横浜臨海部の4箇所の内部見学や展示資料室の見物をすれば、それぞれの社ゆかりのグッズがもらえるという。9月のとある土曜の午後に時間ができたので、まずは家からいちばん近場の『キリン横浜ビアビレッジ』を訪れた。すぐ近くに日産の展示館もあり、子供たちもいっしょだからそっちでもよかったが、景品のダットサンのフィギュアつきストラップより、ビール工場見学後のビールの試飲、と、今日のところはおとなの希望優先とさせていただくことに。
横浜には文明開化期のいろいろな事始があり、ビールもそのひとつだ。キリンビールは横浜の山手に発祥の工場があり、関東大震災後に山がちで坂の多い山手から海沿いへと移転した。横浜駅から品川方向へ、第1京浜を10分ほど。その名も「生麦」というところに構えた工場は、規模では全国のキリンの工場の中で下から数えて2番目ぐらいだが、東京首都圏へ出荷する分をカバーしている重要な拠点でもある。緑が多く公園のような広大な敷地の一角にクルマを停め、30分おきに出発している案内人付きのガイドを申し込んだところ、最終回の16時30分出発のにうまく間に合った。今日はとても蒸し暑く、子供たちはのどが渇いたようで待つ間に外の自動販売機でジュースを買ってもらい飲んでいる。もちろん「キリン」で、自分は見学終了後の試飲を楽しみに、ちょっと我慢である。
時間になって集合のアナウンスがかかり、10人ちょっとのグループでようやく見学に出発だ。案内のお姉さんとともに、製作工程の順に場内をめぐる仕組みで、麦の甘ったるい匂いが漂う中を進んでまずは原料のコーナーへ。ビールの主原料である麦芽とホップ、水についての解説が始まった。ビール醸造に用いる麦は穂が二つに分かれた二条大麦で、でんぷん質の含有量が豊富なのが特徴という。一角には麦芽が入ったケースが数種類並んでいて、実際に触れることができるのが面白い。中にはずい分黒っぽい麦もあり、聞くと「焙煎した麦芽で、これは黒ビールになります」とお姉さん。手のひらにのせて鼻に近づけてみると、確かに普通の麦よりも香ばしさが強い。ケースのひとつにはホップも入っていて、こちらも手に取ると緑色の小さな花のよう。ホップはビールの苦味のもとで、ドライフラワーのようなのをひとつ手にとって開いてみると、爽やかな香りの中、苦いというか渋いというか独特の残り香が漂ってくる。
続いて案内された一角はガラス張りのコーナーで、ガラス越しには大きな窯やタンクがずらり。材料の次はいよいよ、ビールの醸造過程の解説である。タンクや窯にはそれぞれ番号と役割が書かれた札が下がっていて、番号順に行程が進んでいくとのこと。最初の窯では麦芽を粉にして湯を加え、でんぷんを糖化させる。これを「諸味」と呼び、次の窯でこれをろ過して麦汁を絞り出す。「最初に流れ出すのが一番搾り麦汁、絞った後の麦芽に湯をかけて洗い出したものを二番搾り麦汁です」。普通はこの両方を混ぜ合わせるのだが、キリンの主力商品である「一番搾り」は文字通り、この一番搾り麦汁だけでつくっているビール、またキリンラガーは味わい豊かでコクがあり苦味の強い二番搾り麦汁をベースに作っているそうである。そして搾り出された麦汁にホップを加えて煮沸して苦味と香りを出し、ビール酵母を加えて発酵タンクで発酵させると、1週間ほどでようやく「若ビール」というビールの原型の状態になる。この後貯蔵タンクで0度で貯蔵して味と香りを出し、役割を終えた酵母をろ過して取り除いたら、ようやくビールの出来上がりである。
ところで、ビールの缶などの原料の欄を見ると、麦のほかに米やコーンスターチと書かれているのを見たことがある人も多いのでは。本来ビールの主原料は麦だが、日本の主力ビールメーカーのほとんどの銘柄で、このふたつが原料に使われている。ここでも原料の説明のところでお姉さんが、「麦のほか、味をまろやかにするために米、すっきりした味わいを出すためにコーンスターチも使います」と簡単に紹介していた。でも次の醸造過程の説明では、米とコーンスターチに関する話がなかったのが気になる。移動中にお姉さんに聞いてみたら、「米とトウモロコシは別の窯で煮沸され、糖化の段階で麦に加えます」。これをきちんと言っておかないと、見学者は麦100%のビールと誤解してしまうのではないのだろうか。
そしていよいよお楽しみの試飲… と思ったら、試飲は試飲でもビールの基である麦汁だ。発泡酒の「淡麗」用で、まだビール酵母を添加して発酵させる前の状態だからアルコールも炭酸もない。「子供でも飲めますよ」の通りとろりとほんのり甘く、あとから苦味がスッと走る。この工場では前述の銘柄に加え、8月23日から販売している季節限定・麦が多めの「秋味」、麦はゼロで代わりに大豆を使った第3のビール「のどごし生」、秋からはホップの毬花をそのまま凍結使用した「一番搾り初摘みホップ」などが製造されているとのこと。扱っている7割が缶ビールで、その生産量は1分間に何と1500~2000本。実際に目の前でものすごいスピードで流れ、詰められていくたくさんの缶を見ていると、それだけの量が飲まれているんだな、と実感してしまう。8月の下旬から9月に入り、このところ特に蒸し暑いのも、消費量に拍車をかけているかもしれない。
歴史のコーナーで美人画のビールのポスターや、まだ手作業でコルクで栓をしていたころの写真をながめたら、これで工場見学は終了。今度こそちゃんとアルコールと炭酸が入った、お楽しみのビールの試飲である。チケット1枚でグラスビール2杯に、何とおつまみがついている。この日の銘柄は、一番搾りとラガー、淡麗で、せっかくだから発泡酒よりビール、とまずは一番搾りからだ。工場できたてのビールを、専門の方がサーバーから見事にグラスに注いでくれ、泡もクリーミーで見事に3割ほどと、見事なバランスだ。グッといくと、雑味のないスッキリ、麦の広がりあるコク、締めに苦味が軽くビシッと、どの味の要素ひとつとっても無駄がない。ビールも生もので鮮度が命、作っている場所でできたてをすぐに頂くのが一番うまいということか。
子供たちも小岩井オレンジジュースをおかわりしていいおやつとなり、自分も2杯目はラガーを追加。そういえば書き忘れたが、この見学ツアーはなんと無料! タダでできたてビールをグラス2杯も頂ける、何ともうれしい限りの工場見学なのだ。ほろ酔い気分ですっかりご機嫌となり、建物を出るともう日が傾いている。敷地内には赤レンガ造りのパブ「スプリングバレー」や、ビアレストランの「ビアポート」もあり、みんなでビールのつくりかたの復習をしながら、ワイワイと晩御飯にするか。もちろん自分は、ビールの「味」のほうの復習も念入りに。(2006年9月9日食記)
横浜には文明開化期のいろいろな事始があり、ビールもそのひとつだ。キリンビールは横浜の山手に発祥の工場があり、関東大震災後に山がちで坂の多い山手から海沿いへと移転した。横浜駅から品川方向へ、第1京浜を10分ほど。その名も「生麦」というところに構えた工場は、規模では全国のキリンの工場の中で下から数えて2番目ぐらいだが、東京首都圏へ出荷する分をカバーしている重要な拠点でもある。緑が多く公園のような広大な敷地の一角にクルマを停め、30分おきに出発している案内人付きのガイドを申し込んだところ、最終回の16時30分出発のにうまく間に合った。今日はとても蒸し暑く、子供たちはのどが渇いたようで待つ間に外の自動販売機でジュースを買ってもらい飲んでいる。もちろん「キリン」で、自分は見学終了後の試飲を楽しみに、ちょっと我慢である。
時間になって集合のアナウンスがかかり、10人ちょっとのグループでようやく見学に出発だ。案内のお姉さんとともに、製作工程の順に場内をめぐる仕組みで、麦の甘ったるい匂いが漂う中を進んでまずは原料のコーナーへ。ビールの主原料である麦芽とホップ、水についての解説が始まった。ビール醸造に用いる麦は穂が二つに分かれた二条大麦で、でんぷん質の含有量が豊富なのが特徴という。一角には麦芽が入ったケースが数種類並んでいて、実際に触れることができるのが面白い。中にはずい分黒っぽい麦もあり、聞くと「焙煎した麦芽で、これは黒ビールになります」とお姉さん。手のひらにのせて鼻に近づけてみると、確かに普通の麦よりも香ばしさが強い。ケースのひとつにはホップも入っていて、こちらも手に取ると緑色の小さな花のよう。ホップはビールの苦味のもとで、ドライフラワーのようなのをひとつ手にとって開いてみると、爽やかな香りの中、苦いというか渋いというか独特の残り香が漂ってくる。
続いて案内された一角はガラス張りのコーナーで、ガラス越しには大きな窯やタンクがずらり。材料の次はいよいよ、ビールの醸造過程の解説である。タンクや窯にはそれぞれ番号と役割が書かれた札が下がっていて、番号順に行程が進んでいくとのこと。最初の窯では麦芽を粉にして湯を加え、でんぷんを糖化させる。これを「諸味」と呼び、次の窯でこれをろ過して麦汁を絞り出す。「最初に流れ出すのが一番搾り麦汁、絞った後の麦芽に湯をかけて洗い出したものを二番搾り麦汁です」。普通はこの両方を混ぜ合わせるのだが、キリンの主力商品である「一番搾り」は文字通り、この一番搾り麦汁だけでつくっているビール、またキリンラガーは味わい豊かでコクがあり苦味の強い二番搾り麦汁をベースに作っているそうである。そして搾り出された麦汁にホップを加えて煮沸して苦味と香りを出し、ビール酵母を加えて発酵タンクで発酵させると、1週間ほどでようやく「若ビール」というビールの原型の状態になる。この後貯蔵タンクで0度で貯蔵して味と香りを出し、役割を終えた酵母をろ過して取り除いたら、ようやくビールの出来上がりである。
ところで、ビールの缶などの原料の欄を見ると、麦のほかに米やコーンスターチと書かれているのを見たことがある人も多いのでは。本来ビールの主原料は麦だが、日本の主力ビールメーカーのほとんどの銘柄で、このふたつが原料に使われている。ここでも原料の説明のところでお姉さんが、「麦のほか、味をまろやかにするために米、すっきりした味わいを出すためにコーンスターチも使います」と簡単に紹介していた。でも次の醸造過程の説明では、米とコーンスターチに関する話がなかったのが気になる。移動中にお姉さんに聞いてみたら、「米とトウモロコシは別の窯で煮沸され、糖化の段階で麦に加えます」。これをきちんと言っておかないと、見学者は麦100%のビールと誤解してしまうのではないのだろうか。
そしていよいよお楽しみの試飲… と思ったら、試飲は試飲でもビールの基である麦汁だ。発泡酒の「淡麗」用で、まだビール酵母を添加して発酵させる前の状態だからアルコールも炭酸もない。「子供でも飲めますよ」の通りとろりとほんのり甘く、あとから苦味がスッと走る。この工場では前述の銘柄に加え、8月23日から販売している季節限定・麦が多めの「秋味」、麦はゼロで代わりに大豆を使った第3のビール「のどごし生」、秋からはホップの毬花をそのまま凍結使用した「一番搾り初摘みホップ」などが製造されているとのこと。扱っている7割が缶ビールで、その生産量は1分間に何と1500~2000本。実際に目の前でものすごいスピードで流れ、詰められていくたくさんの缶を見ていると、それだけの量が飲まれているんだな、と実感してしまう。8月の下旬から9月に入り、このところ特に蒸し暑いのも、消費量に拍車をかけているかもしれない。
歴史のコーナーで美人画のビールのポスターや、まだ手作業でコルクで栓をしていたころの写真をながめたら、これで工場見学は終了。今度こそちゃんとアルコールと炭酸が入った、お楽しみのビールの試飲である。チケット1枚でグラスビール2杯に、何とおつまみがついている。この日の銘柄は、一番搾りとラガー、淡麗で、せっかくだから発泡酒よりビール、とまずは一番搾りからだ。工場できたてのビールを、専門の方がサーバーから見事にグラスに注いでくれ、泡もクリーミーで見事に3割ほどと、見事なバランスだ。グッといくと、雑味のないスッキリ、麦の広がりあるコク、締めに苦味が軽くビシッと、どの味の要素ひとつとっても無駄がない。ビールも生もので鮮度が命、作っている場所でできたてをすぐに頂くのが一番うまいということか。
子供たちも小岩井オレンジジュースをおかわりしていいおやつとなり、自分も2杯目はラガーを追加。そういえば書き忘れたが、この見学ツアーはなんと無料! タダでできたてビールをグラス2杯も頂ける、何ともうれしい限りの工場見学なのだ。ほろ酔い気分ですっかりご機嫌となり、建物を出るともう日が傾いている。敷地内には赤レンガ造りのパブ「スプリングバレー」や、ビアレストランの「ビアポート」もあり、みんなでビールのつくりかたの復習をしながら、ワイワイと晩御飯にするか。もちろん自分は、ビールの「味」のほうの復習も念入りに。(2006年9月9日食記)
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