ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

魚どころの特上ごはん1…ブランド蟹の底力! 三国の越前ガニは地元で食うべし

2005年09月04日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん
 福井からえちぜん鉄道の電車で45分。九頭竜川の河口で日本海に面した三国は、かつて北前船の寄港地として栄えた港町である。回船問屋の商人屋敷が建ち並んだ町並みを歩き、資料館の「みくに龍翔館」で北前船の模型や積み荷などの展示を見物して、宿に戻って三国温泉の湯に浸かりさっぱり。とくれば湯上がりに三国港でとれたお魚で一杯、といきたくなる。三国の名物は何といっても、地元で水揚げされる「越前ガニ」だ。

 越前ガニとは一般的に、福井県内の漁港で水揚げされたズワイガニを指す。漁期は11月6日~3月20日。日本海の海流で数年がかりでもまれて成長するため、身が甘く詰まっているのが特徴だ。北陸から山陰にかけての日本海沿岸は、ズワイガニがとれるところがいくつかあるが、中でも越前ガニの漁場は特に栄養が豊かだという。福井県内を流れる九頭竜川が、山林の植物性プランクトンをたっぷり運んで日本海へ注ぐ。それを、沖合を流れる寒流と暖流が運んできた動物性プランクトンが餌にする。さらにそれを餌に、ズワイガニやエビなど近海の魚介が成長するという訳なのだ。

 この日夕食を頂く「入船」は、三国の市街から東尋坊~越前松島を過ぎたところに立つ、日本海に面した料理旅館である。漁期に合わせてカニ料理を出しており、ひとり1万5000円~が予算の目安。ゆでガニ、焼きガニ、カニのつくりほか、予算によってカニ鍋、カニ雑炊などがつく充実した内容である。建物は料亭旅館だけあり、重厚な和風の雰囲気。玄関にはカニがいっぱい詰まった大きな水槽が据えられていて、到着早々食欲をそそる。

 唐揚げや鍋など、食卓には近海でとれた魚を使った料理がいくつも並ぶが、目をひくのは大きな越前ガニがのせられた皿。丸のままゆでて出されており、鮮やかな紅色が見事だ。足をよく見ると、カニの絵柄が入った黄色いストラップのようなものがつけられている。サービスのおみやげかな、と思ったら、これは福井県内の漁港で水揚げされたことを示すタグで、水揚げされてからセリまでの間に漁師がつけるんです、と店の人。いわば越前ガニである証明で、最近は料理屋や宿では本物であることを示すために、タグつきのままゆでて客に出すことが多いという。

 さっそく太い足を1本、パキッと割ると、身がしっかり詰まってるのがうれしい。ハサミも丸く身がパンパン。ツルリとひと口頂くと比較的さっぱりしていて、瑞々しさが際立っている。淡泊な味わいのため、ついついどんどん進んでしまう。黙々と足を平らげたら、これも大柄な甲羅へと手を伸ばす。中にはたっぷりのカニミソと豆腐(甲羅の裏についた白い部分)がうれしいおまけで、スプーンですくって頂くとこたえられない旨さだ。

 この越前ガニ、ズワイガニの中では1,2の質を誇る「ブランド蟹」で、条件がよいと上物は1パイ4万5000円ほどするのだとか。鮮度や水揚げ後の加工技術が味に影響するため、ほぼ地元の料亭や料理旅館、一部は芦原温泉などの温泉旅館で消費されてしまい、東京や大阪へはまず出回らないという。中でも上物は特に地元・三国の旅館が競り落とすため、うまいい越前ガニを食べるなら三国の宿へ泊まって、ということか。

 ところで、そんな高価な越前ガニなんでそうそう気軽に食べられない、という人もいるはず。そこはカニ処・三国。もっと手軽でおいしいカニももちろんある。以下次号…。(2005年3月8日食記)


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