ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

魚どころの特上ごはん2…越前ガニに負けない手頃な実力派・「水ガニ」とは?

2005年09月04日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん
 東尋坊の展望台からの眺めは、実に豪快だ。眼下では岩壁にぶちあたった波が砕け散り、ゴウゴウと波音が響き渡る。断崖絶壁の上から足元を見ているだけで、体が縮こまってしまう。文学碑が点在する断崖上の荒磯遊歩道を歩き、バス通りに出てホッとひと息。予約した食事処までこのまま歩いていくと、ちょうどいい時間になりそうだ。

 この日お昼を頂く「望洋楼」も、昨日の「入船」さらにすぐ隣に立つ「若えびす」とともに、三国屈指の料亭旅館として名高い。建物は、今歩いてきたような海沿いの断崖にとりつくように、日本海にせり出して立っている。だから角部屋にあたる座敷に通されると、さかまく波濤や断崖の海岸線を一望できる素敵なロケーションだ。客室には温泉もひかれていて、日本海を一望する露天風呂付きの部屋もある。

 もちろん、この宿も自慢は越前ガニを中心とした魚介料理。料理に使うカニはすべて、主人が自ら目利きした三国・越前産のカニを使用しているという。お昼は三国の漁師料理「鯛まま」と、水ガニを組み合わせたコース。卓上には、ご飯の上に鯛の刺身をのせて熱々のだし汁をかけた鯛ままと、半分に割られたゆでたカニの皿が、すでに並んでいる。これが「水ガニ」。昨日の越前ガニよりもやや小柄だ。

 前の話で、越前ガニとは福井県内で水揚げされるズワイガニと記したが、「越前ガニ」を名乗れるのは実は成長したオスだけ。水ガニとはまだ成長していない、脱皮直後の若いカニのことを指す。越前ガニよりも割安で、地元では「ズボ」と呼ばれよく食べているという。最近は値段の手頃さと、越前ガニとは違った瑞々しい味わいが人気を呼び、三国だけでなく様々な水揚げ地でも定着しつつあり、山陰でも松葉ガニに対して「若松葉ガニ」と名付けられているほど。その分、値が上がってきているのが気になるが。

 店の人に教わった通り、足を1本折って、殻の関節の手前の部分にツメで切れ目を入れる。脱皮直後なので殻が柔らかく、折るのも割るのも簡単だ。そしてそろりそろりとゆっくり引くと、するりと簡単に身が抜けた。コツさえつかめば、ズワイガニよりも身を出しやすそうだ。純白の身を、口で出迎えるようにしてひと口。トロトロで瑞々しく、まるでクリームのようなに甘みが濃厚である。カニ独特の味と香りがかなり強いようで、ほっこりと食べ応えがあるズワイガニに比べて、まだ成熟途中の粗野な味か。

 今回は食べなかったが、もうひとつ手頃な値段のカニがある。越前ガニのメス・セイコガニで、小柄で身はあまり入っていないが、ミソや卵がうまいのが特徴。いいダシがとれるため、鍋やカニ飯に向いている。水ガニともに、例の黄タグはつかないが、ともに実力は越前ガニに勝るとも劣らずだ。そしてちょっと裏技だが、地元のカニ問屋に聞いたお得なカニの選び方が! 次号の三国・越前ガニ完結編で…。(2005年3月8日食記)


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