ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

旅で出会ったローカルごはんbyFb…仁賀保 『笹乃井』の、にぎりと稲庭うどんのセット

2012年12月10日 | ◆旅で出会ったローカルごはん

 多島海がそのまま隆起した象潟は、その景観がそのまま海底にも続いており、変化に富んだ海底地形は様々な種類の底魚の生息に適しているという。加えて背後に控える霊山・鳥海山の伏流水が海底から湧出して、栄養価の高い海域を形成。さらに北前船がのってくる暖流・対馬海流と寒流・千島海流が沖合でぶつかり、好漁場をつくり出す。芭蕉をはじめとする、当地ゆかりの自然環境が、魚どころ象潟の後ろ盾となっているように思える。

 そんな立地に期待して、旅の最初の昼食に仁賀保駅前の「笹乃井」にお邪魔。金浦や象潟で揚がる地魚の寿司に定評がある店だが、ご主人に地物の話を振ると、少々歯切れが悪い。というのも11月のこの地方沿岸は時化が多い時期で、この数日は漁に出られていないという。そのため入荷が安定せず、ネタを揃えるのが大変なのだとか。

 ご主人によると、象潟では地元オリジナルの魚介を売りにしようと取り組んでいるが、最近の漁獲量から安定供給と価格が心配という。夏の名物の岩ガキは、震災後に伏流水の流れが変わったことやとり過ぎも原因で、ここ2年ほど水揚げが減少。特にこの夏は気温が上がったため、身がやせていたそうである。サバは「鳥海サバ」と名付けて、一本釣りや活け締めを条件にブランド化。関サバにも劣らない食味とも評価されたが、ブランド化と同時に漁獲が減少した。ほかサケとイクラを売りにするのも考えたが、今年は豊漁ながら毎年漁獲が安定するとは限らない。地元の漁獲をうまく売るために、ご主人は色々苦心の様子である。

 そんな魚事情の中、一番人気のにぎりと稲庭うどんのセットを注文すると、ホタテ、甘エビ、アオリイカ、タラのこぶ締め、マグロの6カンのにぎりが並んだ。マグロ以外は地元で水揚げされた漁獲で、イカはバキバキ歯ごたえが激しく、甘みと粘りは控えめ。甘エビは鮮度がいいから身がプツプツ締まり瑞々しい。マグロのヅケは地元で人気の食べ方で、ムッチリしなやかな赤身が血の匂いがせずスッキリ。そしてこの日の地元ネタの代表のタラは、塩味が効いたソフトな白身にほんのり漂うコンブの香りが、北前船の寄港地らしさか? ご主人によると、タラはダダミ(白子)がおいしくなる前の今頃が、栄養が身から抜けておらず味がいいという。

 稲庭うどんは椀ものがわりで、さっぱりした塩ベースのつゆがこの店のオリジナル。ご飯ものに合うように甘い醤油つゆから変えたそうで、細麺でしこしこのうどんがツルツルお腹に通る。にぎりもいいが、冬の日本海はやはり、温まるローカル魚料理が欲しくなる。タラならじゃっぱ汁、そして冬の秋田の真打ち・ハタハタのしょっつる鍋あたりが気になるのは、熱々の稲庭うどんのお誘いなのだろうか?



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