十勝が丘展望台からの眺めは、まさに十勝を一望できるパノラマだ。パッチワークの畑のど真ん中を横断して、左右に悠々と流れる十勝川。この季節はサケの遡上風景もまた、十勝の自然の風物詩である。展望台にいたガイドさんによると、今年は遡上がやや早く、左方面の橋のたもとにある千代田堰堤では、もう川面にサケの姿がたくさん見られるそう。人工孵化用に捕獲され、札内などにある孵化場で授精、稚魚の育成がされるという。堰堤や孵化場の場所を指差して教えてくれるのは、十勝いちの展望台ならではか。
自転車で河岸を20分ほどの千代田堰堤では、水が流れ落ちる堰堤にピョンと跳ねたり、正面の流れに浮いてくるサケの姿が。動きが緩やかなのは、遡上で疲弊しているからか。捕獲作業が行われる対岸では、大網をクレーンで上げ下ろしする作業が見られる。網に数十匹のサケが跳ね回り、捕らえては箱へ放り、と何とも豪快なサケ漁である。作業の親父さんによるとほとんど白ザケで、オスもメスも人工孵化用という。採卵した身は乾物など加工に回すものもあるが、遡上して来たサケは食用に捕らえることはないそうである。
対岸を温泉街へ戻る途中には、人工魚道の脇に見学スペースを設けた施設「ととろーど」があり、水槽越しにサケの遡上の様子が観察できる。今年は同時期で例年の三倍以上の数で、急な水流を次々と越えて行く様は力強さを感じる。澱みで溜めてから一気に行く者、水面部をスパッと泳ぎ抜く者。流れ戻されるのも結構いて、力尽きる寸前、最後の力を振り絞っているようだ。鼻は白く禿げ身は茶がかったりと、見た目もボロっとして気の毒なような。ここを越えてもプールで捕獲され人工孵化に回され、千代田堰堤と同じ運命をたどることになる。
先の親父さんの話の通り、遡上してくるサケは「ほっちゃれ」と呼ばれ、疲弊して味も脂もなく食用にはしない。食用には十勝川に入る前のを、河口付近で沖獲りしている。広尾付近の沿岸が主な漁場で、漁期になると回遊ルートを読み、隙間もないほど細かく定置網が仕掛けられるという。十勝川温泉「ホテル大平原」の夕食バイキングには、そんな旬のトキシラズの料理が並んだ。トキシラズの竜田揚げが、身がサクサクと軽くつまみにもってこい。サケを揚げるのは珍しく、旨さが内にしっかり封じられている。
そして調理コーナーでいい匂いを漂わせているのが、ローカルサケ料理のちゃんちゃん焼き。大きな鉄板で身を丸ごと、白菜やニンジンなどの野菜と一緒にザッと炒め、まぜてほぐして出来上がり。「豪快でしょう」とコック帽の兄さんによると、使っているのは広尾で上がったトキシラズで、味付けは味噌ほか酒、しょうゆと、秋ザケをシンプルに味わえる味付けである。身がしっとりホクホクと味がよく、甘い味噌味がサケも野菜も包み込むよう。両方の味が染みた白菜がジューシーでうれしく、こちらは飯にのせてかっ込みたいおかずだ。
命懸けで遡上しても堰堤で捕らえられ、人工授精に回されるもの。万全元気でさあ川を上るぞ、という前に定置網に掛かり、食用に回されるもの。十勝川をぐるり巡りサケを追いかけたら、それぞれの命の活かし方に畏敬の念が湧いたような思いである。
自転車で河岸を20分ほどの千代田堰堤では、水が流れ落ちる堰堤にピョンと跳ねたり、正面の流れに浮いてくるサケの姿が。動きが緩やかなのは、遡上で疲弊しているからか。捕獲作業が行われる対岸では、大網をクレーンで上げ下ろしする作業が見られる。網に数十匹のサケが跳ね回り、捕らえては箱へ放り、と何とも豪快なサケ漁である。作業の親父さんによるとほとんど白ザケで、オスもメスも人工孵化用という。採卵した身は乾物など加工に回すものもあるが、遡上して来たサケは食用に捕らえることはないそうである。
対岸を温泉街へ戻る途中には、人工魚道の脇に見学スペースを設けた施設「ととろーど」があり、水槽越しにサケの遡上の様子が観察できる。今年は同時期で例年の三倍以上の数で、急な水流を次々と越えて行く様は力強さを感じる。澱みで溜めてから一気に行く者、水面部をスパッと泳ぎ抜く者。流れ戻されるのも結構いて、力尽きる寸前、最後の力を振り絞っているようだ。鼻は白く禿げ身は茶がかったりと、見た目もボロっとして気の毒なような。ここを越えてもプールで捕獲され人工孵化に回され、千代田堰堤と同じ運命をたどることになる。
先の親父さんの話の通り、遡上してくるサケは「ほっちゃれ」と呼ばれ、疲弊して味も脂もなく食用にはしない。食用には十勝川に入る前のを、河口付近で沖獲りしている。広尾付近の沿岸が主な漁場で、漁期になると回遊ルートを読み、隙間もないほど細かく定置網が仕掛けられるという。十勝川温泉「ホテル大平原」の夕食バイキングには、そんな旬のトキシラズの料理が並んだ。トキシラズの竜田揚げが、身がサクサクと軽くつまみにもってこい。サケを揚げるのは珍しく、旨さが内にしっかり封じられている。
そして調理コーナーでいい匂いを漂わせているのが、ローカルサケ料理のちゃんちゃん焼き。大きな鉄板で身を丸ごと、白菜やニンジンなどの野菜と一緒にザッと炒め、まぜてほぐして出来上がり。「豪快でしょう」とコック帽の兄さんによると、使っているのは広尾で上がったトキシラズで、味付けは味噌ほか酒、しょうゆと、秋ザケをシンプルに味わえる味付けである。身がしっとりホクホクと味がよく、甘い味噌味がサケも野菜も包み込むよう。両方の味が染みた白菜がジューシーでうれしく、こちらは飯にのせてかっ込みたいおかずだ。
命懸けで遡上しても堰堤で捕らえられ、人工授精に回されるもの。万全元気でさあ川を上るぞ、という前に定置網に掛かり、食用に回されるもの。十勝川をぐるり巡りサケを追いかけたら、それぞれの命の活かし方に畏敬の念が湧いたような思いである。
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