ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

ローカル魚でとれたてごはん…登別温泉 『温泉市場』の、登別の魚介あれこれ

2015年06月28日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん
JR登別駅から登別温泉までは、バスで15分ほど。漁港や水族館のある街からぐっと登って、クマ牧場に地獄谷のある山峡の温泉街へと、ガラッと変わったたたずまいとなる。宿に荷物を置いたら、まずはひとっ風呂。第一滝本館の様々な湯船を残さず巡れば、ああ温泉へやってきたなとの実感も湧いてくる。湯上りに温泉街を歩けば、お湯の効能かほどよくお腹も空いてきた。登別駅前の海鮮直市のおばちゃんの話も思い出し、地物の魚介を肴に本格的に腰を据えたいところだ。

すると通りの外れで目に入る、「市場」との屋号。惹かれて扉をくぐると、店内は炭火の炉を囲うようにカウンター席が設けられ、壁際には生簀がズラリと並ぶ。中を覗くと花咲ガニに毛ガニにクロソイ、ナマコ、貝類はホタテにツブ貝にホッキと、まさに北海道のローカル魚介が勢ぞろい。さっきまでいた登別漁港のそばにありそうな店のような、生簀はさっき眺めた水族館の展示のような。

その名も「温泉市場」というこの店、生簀の魚介を用いた料理に定評のある、温泉街で人気の海鮮料理店である。登別漁港や前浜で水揚げされた魚介を中心に使っており、料理は刺身に焼き物に丼ものなんでもありの幅広さ。写真入りの品書きには、登別をはじめ道内産の主な魚介が名を連ねており、海鮮直市のおばちゃんのおすすめや水族館で見た魚を、あれこれと頼むことにしよう。

いまが旬のカレイの中からは、登別産とあるソウハチの焼き物をオーダー。炭火でじっくり焼くため30分ほどかかるそうで、 早く出るつくりにマツカワを選んだ。海鮮直市で売っていた、おばちゃんイチオシのツブ貝の刺身も、いただかずにはいられない。さらに水族館のおいしい企画展でも推していたボタンエビも、登別産とあったので注文。マツカワは活け締め、ツブ貝もボタンエビも生簀から出したのをさばくから、鮮度の良さは折り紙付きだ。

まず運ばれてきたマツカワは、薄くひいたのが5切れほど盛ってある。ひと切れいくとねっとり口の中をくすぐり、若草のような青い香りの後味が爽やか。飲み込んでから、残像のように甘みが起き上がってくる。続くツブ貝は薄切りながら、ゴリゴリの歯応えごとに潮の香りが鮮烈。ワタの部分はねっとりウニのような甘みが濃厚で、これは日本酒が欲しくなる。そしてボタンエビはビクビク踊るのを、押さえつけてツルリ。さっきまで生きていたまだ半透明の身が、シコシコトロリと潔いこと。

ビールが空になり、旭川・国稀酒造の「鬼ころし」を追加したところに、目の前の炉で炙られていたソウハチが焼きあがった。20センチほどの大きさはあり身もしっかり厚く、パツパツの皮をパリッと破り醤油をかけまわして、いざ突撃だ。マツカワは「王鰈」と字を当てるように、上品な白身が身上。ほぐして含めばしっとり艶めかしく、官能的な香りに思わずクラリ、とくるよう。頭もほじり縁側もばらししゃぶり、身を欠片たりとも残したくない勢い。子持ちの卵もホクホクといってから「鬼ころし」を口で迎えれば、もう言葉など何も出てきやしない。

登別漁港で初夏〜夏が漁期の魚介は、カレイの底建網と刺網、サケの春定置網、タコやエビ、ツブ貝の籠漁など。カレイはソウハチのほか、ナメタガレイにアカガレイ、ツブ貝はマツブやマキツブが、主な漁獲対象となっている。特にサケマスの定置網は6月に最盛期を迎え、エビ籠漁は7月に入ると子持ちのエビが漁獲され始める。また登別漁港はイカ漁の拠点港でもあり、本州のイカ釣り漁船が寄港・水揚げしていく秋にかけては、いっそうの賑わいを見せるという。

締めのごはんは噴火湾のホタテを使ったホタテ丼で、貝柱はごはんといくとシャクシャクと甘さが膨らみ、おかずにもってこいの刺身だ。温泉だけじゃない、魚のうまい登別も実感したところで、酔いが覚めたらもう一浴浴びたくなる。するとさらにまた湯上りの一杯も。湯と酒と魚のエンドレスループにはまれば、水族館で出会ったほかのおいしい仲間まで、残らずすっかり味わい尽くせるかも知れない。

滝本インの夕食バイキング@登別温泉

2015年06月28日 | 旅で出会った食メモ
登別温泉第一滝本館の多彩過ぎるお風呂を全巡礼して、向かいの宿の滝本インに戻り晩御飯。バイキングなのだが、普通に洋中の定番にてあまり特徴がない。「館」に旅のハレが花開いてるのに対し、「イン」は宿泊特化だからやむなし。

二食付きで8000円であの風呂を使い倒せたから、良しとしましょう。

登別てくてくさんぽ2

2015年06月28日 | てくてくさんぽ・取材紀行
土砂降りの登別での過ごし方は、飲み食いか温泉か。でも第一滝本館の温泉は、1500坪に7種の湯、湯船の総数は35。湯あたりにさえ気をつければ、1時間以上は楽しめる。

美肌、傷、万病、癒しなど、湯船ごとに効能が書かれており、タイプも露天や大湯船はじめ、ジャグジーに寝湯に打たせに歩行に蒸気に高温に低温と、バリエーションに富む。コンプリート目指したら、湯温や刺激に変化があるので結構湯疲れしない。

ベストはやはり、露天風呂。地獄谷を眼下に見下ろす迫力は、この宿ならではではなかろうか(右写真の赤丸部)。

※内湯の画像は公式より拝借。

ローカル魚でとれたてごはん…登別・マリンパークニクス『レストランリーベ』の、登別産たらこと明太子のクリームパスタ

2015年06月28日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん
登別といえば道内屈指の温泉街のイメージだが、界隈で有数の漁業拠点でもある。駅から線路沿いに歩き、踏切を渡ったところに広がる登別漁港の船溜りには、中型の漁船がびっしり停泊しているのが見えた。巻上ローラーと電照を備えていたり、赤や黒の籠を積んでいたりと、搭載する漁具は様々。操舵室の壁面には、「ホク噴すけそ刺」「渡胆つぶかご」「ホクえびかご」など、漁業海域に対象魚と漁法を示しているので分かりやすい。

6月末の今はエビカゴ漁の最盛期で、9時ごろから水揚げをしていると聞いてやってきたが、水揚げ場はガランとして人の気配がない。そばに広がる太平洋は防波堤に隔てられ見られないものの、ゴウゴウ、ズシンと腹の底に響くうなりをあげているのが、ここに立っていても分かる。雨風のある荒れた海況のため、漁に出られていないのだろうか。

鉛色の空の下を駅へと引き返すと、駅前広場の一角に数名の人だかりがしている。「登別漁港市直鮮」との幟が掲げられ、産直売店らしい。登別漁港で水揚げされた魚介を駅前で販売する「登別漁港直市」は、4月〜10月の日曜日に開催、貝類や加工品を中心に、この小さなプレハブの店舗いっぱいに魚介が並ぶという。が、店頭を覗くとツブ貝のビニール袋が数個並ぶだけである。

店のおばちゃんに今日は漁があったか聞いてみると、「今日は海が荒れて漁に出られずで、だから売り物はこれで全部なの」。ツブ貝は比較的近海で漁をするので、何とか出漁できたそうで、朝とれなので刺身にするのがオススメという。ついでに、この時期の登別漁港ではどんな魚介が旬か聞いたところ、今の時期はボタンエビや南蛮エビが美味しいけど、今年はやや不良だそう。貝類はツブ貝ほか来月になるとホッキ漁、さらに毛ガニ漁も始まり、エビとともに朝市の人気の品になるとか。

ほかイカ類、ソウハチやマツカワなどカレイ類もおすすめで、登別温泉に泊まるならぜひ食べるといい、と推してくれる。お昼ごはんにいただくのもいいかな、と時計を見たら、まだ10時過ぎ。温泉に浸りお魚を肴に一杯にはちと早いか。そこで、漁港と並び駅のそばにある、もうひとつの魚的見どころを眺めていこうと、登別マリンパークニクスへと足を向けてみた。

メインの展示施設である水族館は、中世の城郭風を模した重厚な外観で、お堀を渡って城内へと踏み入れると、ちょうど「おいしい水族館」という企画展が開催されていた。展示する魚介を食材の視点で捉え、食育につなげるのが狙いとある。食べられるものには回転寿しの金皿を模したプレート、さらにレシピ例も添えられているのが、面白いというかリアル過ぎというか。

「登別の海」と題した水槽にも、地物ならぬ近海に生息の魚類においしそうな解説が。エゾメバルは唐揚げや煮付け、アイナメは焼き霜づくりに潮汁。おなじみのホッケは開きにちゃんちゃん焼にフライで、室蘭市の魚クロソイはポワレにアクアパッツァと洋風の勧め。そんな掲示の横の水槽で同居するホッケとクロソイが、大衆魚と高級魚が呉越同舟した生簀に見えてきたりして。

登別沿岸にこれだけ様々な魚種が生息するのは、季節により海水温が変動するのが大きな要因といえる。夏から秋にかけては、津軽海峡経由で対馬暖流が流れ込み、水温が20度ぐらいまで上がる。冬から春にかけては親潮の流れが強くなり、海水温は5度まで下がる。なので春から秋はサケ、マス、ウニ、ナマコ、カレイ、ホッキ貝、エビ、カニなど漁獲が多彩なのに対し、冬場はスケソウダラの刺し網漁一本。雪の時期に未明の登別漁港を訪れれば、タラ類の水揚げで活況を呈しているという。

水槽で稚魚が群泳するサケは、今が水揚げ最盛期のトキシラズを石狩鍋やちゃんちゃん焼きで。直市でも旬と聞いたボタンエビは、つくりや塩焼き。スリムな魚体のスケソウダラは、棒ダラの煮付けもいいし特産のたらこも捨てがたい。展示にさらに足を進めるごとに、食欲と空腹も一段と進んでいく。案内の掲示によると、レストランに企画展のコラボメニューが用意されているそうで、展示の見学の総括を舌と胃袋でしておくのも大切だ。

「レストランリーベ」の登別産たらこと明太子のクリームパスタは、明太子ソースで和えたパスタの上に、たらこが山と盛り上がっており、これは魚卵好きには垂涎ものだ。たらこをフォークに軽く引っ掛け、その上にパスタをクルリと巻いて一口。明太子は火が通り舌にプツプツ香ばしく、たらこは粒がきめ細かく舌にサラサラ。異なる卵の食感が舌に心地よく、ピリッとした明太子にややしょっぱいたらこと、異なる味付けもまた食が進む。

たらこは近隣の虎杖浜のものが有名で、店のお姉さんによるとパスタに用いているのは、登別の前浜である富浦産の地物だそう。企画展のおかげで、登別水揚げの魚介の知識が深まったけれど、食べ進むにつれてさっきの水槽のスケソウダラ君の顔が浮かんできて、ちょっとばかり申し訳ない気もしなくもないか?