JR登別駅から登別温泉までは、バスで15分ほど。漁港や水族館のある街からぐっと登って、クマ牧場に地獄谷のある山峡の温泉街へと、ガラッと変わったたたずまいとなる。宿に荷物を置いたら、まずはひとっ風呂。第一滝本館の様々な湯船を残さず巡れば、ああ温泉へやってきたなとの実感も湧いてくる。湯上りに温泉街を歩けば、お湯の効能かほどよくお腹も空いてきた。登別駅前の海鮮直市のおばちゃんの話も思い出し、地物の魚介を肴に本格的に腰を据えたいところだ。
すると通りの外れで目に入る、「市場」との屋号。惹かれて扉をくぐると、店内は炭火の炉を囲うようにカウンター席が設けられ、壁際には生簀がズラリと並ぶ。中を覗くと花咲ガニに毛ガニにクロソイ、ナマコ、貝類はホタテにツブ貝にホッキと、まさに北海道のローカル魚介が勢ぞろい。さっきまでいた登別漁港のそばにありそうな店のような、生簀はさっき眺めた水族館の展示のような。
その名も「温泉市場」というこの店、生簀の魚介を用いた料理に定評のある、温泉街で人気の海鮮料理店である。登別漁港や前浜で水揚げされた魚介を中心に使っており、料理は刺身に焼き物に丼ものなんでもありの幅広さ。写真入りの品書きには、登別をはじめ道内産の主な魚介が名を連ねており、海鮮直市のおばちゃんのおすすめや水族館で見た魚を、あれこれと頼むことにしよう。
いまが旬のカレイの中からは、登別産とあるソウハチの焼き物をオーダー。炭火でじっくり焼くため30分ほどかかるそうで、 早く出るつくりにマツカワを選んだ。海鮮直市で売っていた、おばちゃんイチオシのツブ貝の刺身も、いただかずにはいられない。さらに水族館のおいしい企画展でも推していたボタンエビも、登別産とあったので注文。マツカワは活け締め、ツブ貝もボタンエビも生簀から出したのをさばくから、鮮度の良さは折り紙付きだ。
まず運ばれてきたマツカワは、薄くひいたのが5切れほど盛ってある。ひと切れいくとねっとり口の中をくすぐり、若草のような青い香りの後味が爽やか。飲み込んでから、残像のように甘みが起き上がってくる。続くツブ貝は薄切りながら、ゴリゴリの歯応えごとに潮の香りが鮮烈。ワタの部分はねっとりウニのような甘みが濃厚で、これは日本酒が欲しくなる。そしてボタンエビはビクビク踊るのを、押さえつけてツルリ。さっきまで生きていたまだ半透明の身が、シコシコトロリと潔いこと。
ビールが空になり、旭川・国稀酒造の「鬼ころし」を追加したところに、目の前の炉で炙られていたソウハチが焼きあがった。20センチほどの大きさはあり身もしっかり厚く、パツパツの皮をパリッと破り醤油をかけまわして、いざ突撃だ。マツカワは「王鰈」と字を当てるように、上品な白身が身上。ほぐして含めばしっとり艶めかしく、官能的な香りに思わずクラリ、とくるよう。頭もほじり縁側もばらししゃぶり、身を欠片たりとも残したくない勢い。子持ちの卵もホクホクといってから「鬼ころし」を口で迎えれば、もう言葉など何も出てきやしない。
登別漁港で初夏〜夏が漁期の魚介は、カレイの底建網と刺網、サケの春定置網、タコやエビ、ツブ貝の籠漁など。カレイはソウハチのほか、ナメタガレイにアカガレイ、ツブ貝はマツブやマキツブが、主な漁獲対象となっている。特にサケマスの定置網は6月に最盛期を迎え、エビ籠漁は7月に入ると子持ちのエビが漁獲され始める。また登別漁港はイカ漁の拠点港でもあり、本州のイカ釣り漁船が寄港・水揚げしていく秋にかけては、いっそうの賑わいを見せるという。
締めのごはんは噴火湾のホタテを使ったホタテ丼で、貝柱はごはんといくとシャクシャクと甘さが膨らみ、おかずにもってこいの刺身だ。温泉だけじゃない、魚のうまい登別も実感したところで、酔いが覚めたらもう一浴浴びたくなる。するとさらにまた湯上りの一杯も。湯と酒と魚のエンドレスループにはまれば、水族館で出会ったほかのおいしい仲間まで、残らずすっかり味わい尽くせるかも知れない。
すると通りの外れで目に入る、「市場」との屋号。惹かれて扉をくぐると、店内は炭火の炉を囲うようにカウンター席が設けられ、壁際には生簀がズラリと並ぶ。中を覗くと花咲ガニに毛ガニにクロソイ、ナマコ、貝類はホタテにツブ貝にホッキと、まさに北海道のローカル魚介が勢ぞろい。さっきまでいた登別漁港のそばにありそうな店のような、生簀はさっき眺めた水族館の展示のような。
その名も「温泉市場」というこの店、生簀の魚介を用いた料理に定評のある、温泉街で人気の海鮮料理店である。登別漁港や前浜で水揚げされた魚介を中心に使っており、料理は刺身に焼き物に丼ものなんでもありの幅広さ。写真入りの品書きには、登別をはじめ道内産の主な魚介が名を連ねており、海鮮直市のおばちゃんのおすすめや水族館で見た魚を、あれこれと頼むことにしよう。
いまが旬のカレイの中からは、登別産とあるソウハチの焼き物をオーダー。炭火でじっくり焼くため30分ほどかかるそうで、 早く出るつくりにマツカワを選んだ。海鮮直市で売っていた、おばちゃんイチオシのツブ貝の刺身も、いただかずにはいられない。さらに水族館のおいしい企画展でも推していたボタンエビも、登別産とあったので注文。マツカワは活け締め、ツブ貝もボタンエビも生簀から出したのをさばくから、鮮度の良さは折り紙付きだ。
まず運ばれてきたマツカワは、薄くひいたのが5切れほど盛ってある。ひと切れいくとねっとり口の中をくすぐり、若草のような青い香りの後味が爽やか。飲み込んでから、残像のように甘みが起き上がってくる。続くツブ貝は薄切りながら、ゴリゴリの歯応えごとに潮の香りが鮮烈。ワタの部分はねっとりウニのような甘みが濃厚で、これは日本酒が欲しくなる。そしてボタンエビはビクビク踊るのを、押さえつけてツルリ。さっきまで生きていたまだ半透明の身が、シコシコトロリと潔いこと。
ビールが空になり、旭川・国稀酒造の「鬼ころし」を追加したところに、目の前の炉で炙られていたソウハチが焼きあがった。20センチほどの大きさはあり身もしっかり厚く、パツパツの皮をパリッと破り醤油をかけまわして、いざ突撃だ。マツカワは「王鰈」と字を当てるように、上品な白身が身上。ほぐして含めばしっとり艶めかしく、官能的な香りに思わずクラリ、とくるよう。頭もほじり縁側もばらししゃぶり、身を欠片たりとも残したくない勢い。子持ちの卵もホクホクといってから「鬼ころし」を口で迎えれば、もう言葉など何も出てきやしない。
登別漁港で初夏〜夏が漁期の魚介は、カレイの底建網と刺網、サケの春定置網、タコやエビ、ツブ貝の籠漁など。カレイはソウハチのほか、ナメタガレイにアカガレイ、ツブ貝はマツブやマキツブが、主な漁獲対象となっている。特にサケマスの定置網は6月に最盛期を迎え、エビ籠漁は7月に入ると子持ちのエビが漁獲され始める。また登別漁港はイカ漁の拠点港でもあり、本州のイカ釣り漁船が寄港・水揚げしていく秋にかけては、いっそうの賑わいを見せるという。
締めのごはんは噴火湾のホタテを使ったホタテ丼で、貝柱はごはんといくとシャクシャクと甘さが膨らみ、おかずにもってこいの刺身だ。温泉だけじゃない、魚のうまい登別も実感したところで、酔いが覚めたらもう一浴浴びたくなる。するとさらにまた湯上りの一杯も。湯と酒と魚のエンドレスループにはまれば、水族館で出会ったほかのおいしい仲間まで、残らずすっかり味わい尽くせるかも知れない。