ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

日々是好食…食は風物詩たれ

2013年12月31日 | ◆日々是好食

カツオのタタキが食膳に上ると、いよいよ初夏の趣になってきた。昭和の頃は、そんな季節感あふれる話題がこの時期の風物詩だったが、いつしか年明け早々からお目にかかれるように。初ガツオの初の字が、初夏でなく「初春」と捉えられても、不思議ではない昨今である。

カツオは日本列島の太平洋岸に、季節の到来を告げながら回遊する魚だ。枕崎や宮崎での水揚げが早めの春の到来を伝え、3〜4月に土佐の清水や久礼、和歌山の周参見に串本といった、カツオ処での最盛期の報を聞く。そして首都圏が「目に青葉、山ホトトギス」の季節に様変わりした頃、東京の人たちは御前崎に焼津、千葉の勝浦で水揚げのカツオに舌鼓を打つ、という具合である。

カツオのうまさは、その鮮度に直結する。漁獲して食されるまでは、まさに時間との戦いだ。沖合のなぶら目掛けて出漁し、曳き縄や一本釣りで短時間で漁獲。すぐに帰港・水揚げする「日戻り漁」が、土地土地の旬たる所以である。それが、最近ははるか遠洋まで操業に出て、カツオが地元沖を通過する前に漁獲することもあるという。おかげで旬のカツオを早め早めに味わえるのだが、日本列島のはるか南、フィリピン沖まで出漁しているとの話には、少々先走り過ぎのような。

漁船の高速化や保冷技術の革新は、漁獲向上にはメリットかも知れない。一方で、それにより食が伝える季節感が変貌するのには、ちょっと寂しい気もする。江戸っ子が鎌倉から高速船リレーで運んだ、初ガツオへ込めた心意気。漁業者や流通業者にその思いさえあれば、環境がいかに変われども食は風物詩となり続けるはずだ。