ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

旅で出会ったローカルごはん…山梨・芦川村 『おごっそう屋』の、草餅

2011年11月08日 | ◆旅で出会ったローカルごはん
 山梨視察の2日目に訪れた芦川村は甲府盆地南寄り、標高700メートルほどの山間の狭い斜面に位置する山村だ。もとは駿河と甲斐を結ぶ街道が通っていて、ちょうど海の物資と山の物資の中継地として賑わったそうで、集落を歩くとかつて市が開かれた広場、立派な山門の寺、関所の跡など、当時の名残を随所にとどめている。兜造りの立派な民家や石垣で畦を固めた段々畑が見られ、秋のピーカンの青空のもと、ほんのり紅葉の山肌を眺めながら歩くのは、実に気持ちがいいものだ。
 村の玄関口にある「おごっそう屋」は、村の野菜をはじめみそや漬物など加工品を扱う物産店で、ここを起点にボランティアガイドによる1時間ほどの村内散歩が行われている。その前にお茶をいただいたのだが、漬物やまんじゅうのうまいこと。草餅は村で春とれたヨモギをゆでて刻んで冷凍しておいたのを通年使っており、鮮やかな緑は天然の色。青臭い香りがプンプン漂い、田舎風に甘い餡によく合う。漬物は地元産の「鳴沢菜」を油で炒めたもので、野沢菜のように酸味と香りが立ってとまらない。こりゃ、ばあちゃんちの味だね。
 ばあちゃんといえば、村内散策で出会うばあちゃんたちがみんなチャーミングなこと。縁側に呼ばれブドウをごちそうになったり、かやぶき民家の屋根裏を見せてくれたりと、旧知の感覚で接してくれるのが泣けてくる。名物や見どころにこれといったものがあるわけじゃないけど、素朴な日本の田舎風景がまんま残っているいいところだ。

旅で出会ったローカルごはん…甲府 『奥藤分店』の、甲府鳥もつ煮

2011年11月08日 | ◆旅で出会ったローカルごはん
 試飲の後はすぐにお昼ごはんで、甲府といえばB-1グランプリで名を上げた鳥もつ煮を食べないわけにはいかない。この店は有名店とは聞いていたが、土曜の昼時もあり、駐車場には他県ナンバーのクルマが4割ほどの盛況で、店内は満席、入口から人があふれて待っているほどだ。
 甲府の鳥もつ煮はそもそも、そば屋でそばと一緒に食べる一品料理で、この店でもそばとの組み合わせで扱われている。用意されたのはざるに盛った田舎そばに麦めしととろろが組み合わされた、ボリュームあるセットだ。そばはおかわり自由とのこと。
 鳥もつ煮は赤黒い見た目で、見るからにかなり味が濃そう。レバーから箸をのばすとくせがなくホクホクといける。砂肝のザクザク感、ハツのしゃっきりした歯ごたえが対象的。キンカンは未成熟な卵だけに、黄身のコクがそれほどなくあっさりしている。濃厚な甘辛さが山国の食らしいが、少々量が多く4種ほどのモツがひたすら続く上、甘辛い味が濃厚なので完食は大変だ。そばよりも白いご飯にのせたり、日本酒の肴にすると合うかも。
 この料理、2010年の厚木のB-1でゴールドグランプリを受賞後に一気に全国区となったが、この日来ていたPR団体「みなさまの縁をとりもつ隊」の方によると、料理そのものではなくこうした「常食」をPRする活動が受賞したのだ、と熱く語る。それは否定しないが、ゆるきゃらがつくられ、商標が登録され、加えて11月3日から制定の認定制度で、規定の具材と料理法でないと「甲府鳥もつ煮」を名乗れなくなった。知名度アップ、粗悪なあやかり料理や便乗商品を排するためらしいが、素朴なローカルさ、地元の誰もが提供できる懐の深さこそが、本来常食のあるべき姿なのでは。

旅で出会ったローカルごはん…山梨 『レストランゼルコバ』にて、シャトールミエールの新酒ワインを試飲

2011年11月08日 | ◆旅で出会ったローカルごはん
1日目の最初に訪れたのがワイナリー・シャトールミエール。創業126年と周辺のワイナリーの中では歴史が古く、契約農家ほか自社でもブドウ農場を保有しており、ソービニヨンやシャルドネなどを循環型農業で栽培しているという。
 レストランゼルコバは8月8日にオープンしたばかり。ワインの試飲のつまみ用のベーコンを作り出したのが始まりで、料理はスローフードを推進、地域食材でからだにいいものを供するようにしており、地元の農家が持ち込む地場野菜を使用した、当地流のフレンチを供しているという。
 試飲したのは発泡ワインのペティアンに、デラウェアを用いたルミエールフルール、赤のシャトールミエール、甲州ヌーボーの4種。ルミエールフルールはデラウェアを仕込んでおり、フルーティーに甘い。甲州ヌーボーは白の辛口で、キリッと凛とした切れ味が爽やか。 シャトールミエールはボルドータイプのボディがしっかりしたワインで、メルローやカベルネソービニョンなどのブドウを使った長期熟成タイプ。2009年に仕込んだため「まだ固い」と料理長が話すように、甘みより少々渋みが強いかも。
 カナッペには件の自家製ベーコンがのっており、ワインのおりを燻材にしてつくられた、赤ワインの香りが特徴。防腐剤と発色剤は使っておらず、燻しでこなれた自然な味わいが優しい。ワインもいいが、ご当地食材フレンチをコースでいただきに再訪したいものだ。