ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

ローカル魚でとれたてごはん…新潟・本町市場 『阿部鮮魚店』の、浜焼き

2011年11月05日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん
  最後はちょっと立ち寄った新潟で見つけた、魚の浜焼き。本町のアーケードには魚や花や野菜などの露店が出るのだが、その外れの長屋風の店舗群の一角で、この浜焼きが味わえる。
 もともとは日本海で採れた魚を、文字通り砂浜で炭火焼きにして食べたもので、この日の魚はサケにカレイ、サンマ、ハタハタ、アユ。もっとも地元で採れた魚はあいにくなく、サンマは北海道、ハタハタは鳥取沖のが脂が乗ってうまい、とご主人。先代から60年、ここで店を開いており、本町市場の散歩にはもってこいのおやつである。
 ハタハタひと串はひとり分には多い、と思っていたら、なんと3匹をサービスで頂戴した。焼きおにぎりにヒントを得たという甘い味噌が、ハタハタの乳製品甘さをひきたててこれはウマい。骨ごといけるから、魚嫌いの子供にも人気の品だそうだ。

ローカル魚でとれたてごはん…村上 『味匠喜っ川の』、鮭の酒浸しなど

2011年11月05日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん
村上編のおまけ。喜っ川で買ったサケ料理の数々。酒浸しに塩引きザケ、焼き漬け、どんがら煮など、村上の代表的なサケの郷土料理が真空パックで小分けで買える。塩をしてあるのでどれも常温で持ち帰れるのが旅に便利だ。
 酒浸しはこの日、新ものが入ったところだそうで、味はまだ淡く12月を過ぎて熟成したのがおすすめとも。使っているのはもちろん、れっきとした村上のサケで、なんと皮の酒浸しも。皮はサケの中でトップクラスの美味な部位だけに、これは楽しみだ。
 塩引きザケもさすがに1本は土産で買えないから、切り身の真空パックはうれしい。こちらはさすがに地場産のサケでは数が足りないため、他地域の県内産ほか東北、北海道のサケも使っているという。とはいえ、加工方法は伝統的な村上の技法。ご主人が語っていた「風土が味を作ってくれる」のだから、文句なしだろう。

ローカル魚でとれたてごはん…村上 『味匠喜っ川』の、塩引き鮭

2011年11月05日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん

村上のサケづくし散歩で最後に訪れたのが、サケを用いた料理を古くから作り続けている「味匠 喜っ川」を訪れた。寛永年間創業、もとは造り酒屋だったのが、村上のサケを用いた食文化を残すべく、戦後から塩引きザケやサケの酒浸しといった、村上の伝統的サケ料理を提供している。
 村上のサケ料理は百種類を超えるといわれ、元来は川に上がってくるため脂が少なく、繁殖のため卵を採取したあとのサケを、おいしく無駄なく食べるための食文化だった。塩引きザケは冬場の保存食でもあり、軒先にぶら下がるサケは冬の風物詩。ここではとれたサケを内臓を抜いて塩をして、11月の終わりから12月の頭頃に写真の干し場へ運んでくる。木枯らしが吹き始めるといい味が出はじめるとか。
 塩引きザケは翌年の1月ごろから食べられ、正月料理にもなっているが、酒浸しはさらに干し続けて酒に漬けて乾燥させ、村上大祭のある7月ごろからが食べごろ。こちらはサケジャーキーといった感じで、もう一つの村上の魅力である地酒との相性も抜群。
 ちなみに全国のサケ水揚げ地の中で、塩引きザケと酒浸しを作っているのは村上のみ。その理由は乾物に適した村上の地形と気候にある。冬はマイナス2〜3度の外からの風が吹き抜け乾燥に適し、夏は30度を越すことで旨味が出る。さらに梅雨が長く旨味が落ち着くなど、発酵を程よくするためタンパク質やアミノ酸がちょうどいい具合に変化して、味がよくなるそうだ。四季のメリハリがある年が美味しく仕上がるそうで、「村上の風と塩がつくる自然の芸術品」とご主人。
 天井からずらりとサケがぶら下がる干し場で伺った話の中で、「塩引きザケと酒浸しは村上の家のおかずであり、ふるさと、おふくろの味。私たちは商品をつくるというより文化をつくっている」との言葉が印象に残った。水揚げ地ならではの素敵な食文化、今もここに健在だ。


ローカル魚でとれたてごはん…村上 『石田屋』の、はらこ丼

2011年11月05日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん
お昼はもちろんサケ料理、ということで、駅前にある「石田屋」にお邪魔した。老舗旅館の食事どころで、城下町当時の建物をリニューアルして、しゃれた和モダンな内装が落ち着ける。
 はらこ丼は村上の食イベント「村上どんぶり合戦」に出展している料理で、ご飯が見えないほどにはらこがたっぷりとのせられている。「今年の新ハラコ」と店内の張り紙にもあり、口に運ぶと皮がやわらかく舌で押しただけでプチッ、ジュワッとはぜる。醤油と酒の味付けが薄味で、ザクザクと豪快にかっこむのがうまい。味噌汁もサケのアラ汁。
 村上のサケはウライや居繰り網漁などの川での捕獲のほか、沖でも漁獲しており、寝屋や岩船、瀬波で、沖合に定置網を仕掛けて漁獲している。はらこ丼に使っているのも、沖どりのサケのハラコ。川に入ったサケは産卵のために脂が落ち、卵も皮が固くなるので、料理屋ではこの沖どりのサケを使うところもあるという。川にはいらなくても、これももちろん「村上のサケ」。
 おかみさんによると、今年は三陸が震災の影響でサケ漁ができないために、村上のサケの魚価も高く、イクラも三陸の加工・冷蔵施設が壊れて貯蔵したものがダメになり、値段が高いという。東北の日本海側は、震災の直接的被害はないものの、思わぬところで影響が出ているようだ。

庄内村上てくてくさんぽ7

2011年11月05日 | てくてくさんぽ・取材紀行

村上の鮭づくし街歩きの続きで、三面川で行われている伝統のサケ漁を見学した。「居繰り網漁」といって、サケを捕えるウライから下流の瀬波橋のところで、船を使って行われている。
 見に行くとちょうど上流へ向けて漁を始めたところで、網用の船が二艘とサケを追い込む用の船の三艘で操業。まず二艘が上流側から河口側へ向けて回頭して、ハの字型の配置になって間に白い網を渡し、やや広がりながら下っていく。息が合ったようにピッタリ並行して下り、上ってくるサケを船で下りながら迎える形で網が引かれていく。
 二艘の舟はいったん広がった後に間を狭めると、下流側から追い込み用の船が近づいてきて、二艘が次第に網を絞っていく。舳先が触れるまで近づき、網をたぐると、数匹バタバタと網上げされた。
 居繰り網漁には現在でも、昔と同じ木造の幅が狭い船を使われ、バランスが悪く立つのが大変だそう。竿で川底を突いて漕ぐので操船が難しく、前後にひとりずつ乗るが同時に呼吸を合わせて漕がないと進まない。「うまく操船できるまで10年かかる」ともいわれている。実際には人工繁殖用のサケは、ウライでとれたもので十分まかなえるそうだが、村上のサケの伝統を伝える風物詩として残っている。