ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

旅で出会ったローカルごはん93…軽井沢 『信州ハム軽井沢工房』で、低添加のホワイトソーセージ作り

2007年07月26日 | ◆旅で出会ったローカルごはん

 「ペットと過ごす休日」と、様々な体験をテーマとした、2日間にわたる軽井沢の視察会も、いよいよ最後の視察先へと向かうことになった。それはいいけれど、移動のバスの中でつい、ウトウト。眠気は心地よい揺れのせいだけではなく、お昼のバーベキューをちょっと食べすぎてしまい、加えてビールもちょっとおかわりが過ぎたのかも。
 最後の視察も体験モノで、『信州ハム軽井沢工房』が主催している、ソーセージの手作り体験だ。午前中にやった乗馬は初体験で、危ういながらも何とかこなせたが、ソーセージ作り体験ならこれまで2、3度やったことがあるから、少々腕に自信あり。もっとも、寝ぼけ眼では手順を間違えたり、変なものを入れないように、気をつけないと。

 信州ハム軽井沢工房は、軽井沢駅のすぐ近くにあり、デリカショップとレストランと体験施設が一緒になった施設である。エプロンをつけてキャップをかぶり、手を洗ったら、講師の方から手順の説明が始まった。
 この日作成するのは、燻製なしで仕上げるホワイトウインナーという種類。すでに作業テーブルの上には、挽肉がたっぷり入った大き目のボウルが置かれている。肉はカナダ産の黒豚で、腕肉の部分を4~6ミリぐらいの粗曳きにして、ひと晩寝かせたもの。味を調えるために少量の調味料と、香りを出すためにパセリを加えてあるという。量はおよそ1キロで、これで何本のウインナーができるか聞いたところ、およそ4045本分。作業するひとグループ3~4人で、完成後の試食とおみやげ分にちょうど、というぐらいだろう。

 まずは、ボウルの挽肉をこねることからはじまり。塩漬け剤を混ぜた肉の20%分にあたる水を加えて、ひたすら練る。グループのみんなで交互にやるのだが、以前体験した際に後の方でやるほど、肉に粘りが出てこねるのに力が要ることを思い出す。
 そこで、では最初は自分が、と真っ先に手を上げて、水を加えた肉をさらりと混ぜたところで、次の人に交代。これにてお役御免、とのんびりしていたら、一巡したのでもう一度どうぞ、と、こってり粘りが出た肉が入ったボウルを再び差し出された。そういえば以前やったときは、ひとグループ6~7人と、人数が今日の倍ぐらいだったっけか。


まずボウルで肉をこね、充填機で羊腸に肉詰め、半分に折って適当な長さでひねる

 塩漬け剤のリン酸がたんぱく質と反応して、しっかりと粘りが出てきたところで、ソーセージ作りのハイライト、充填機を使っての羊腸への肉詰め作業である。充填機とは茶筒よりひと回り太いぐらいの鉄の筒を横にしたような装置で、片側にハンドル、もう片側に細い口のあるノズルがついている。ハンドルをぐるぐる回すと筒の中の肉が圧迫され、反対側のノズルの先から押し出されて、ノズルの先にセットされた羊腸へと送り込まれていく仕組みだ。
 まずは間に空気が入らないように気をつけながら、粘る肉をしゃもじで充填機の筒部へと詰める。続いてノズルの口金に羊腸をセットするのだが、腸が薄いので口が見つからず、つるつるすべるからうまくとりつけられない。今まで体験した際も、不器用な自分はこの作業が一番苦手だったか。結局、別の器用そうな? 人に交代してもらい、長い羊腸をすべて、ノズルの口金にかぶせこんだら準備完了である。

 ここからは3人ひと組となって、息のあった作業が求められる。ひとりがハンドルを回し、もうひとりが肉の出具合に合わせて、口金にかぶせた羊腸をたぐり出していく。そしてもうひとりが、肉が詰まった部分を折れ曲がらないよう、順次送っていく。最初はおっかなびっくりだったが、次第に呼吸があってくると、一定のテンポでソーセージがどんどん伸びていく。タイミングが合うと、一気に1メートルほどバーッ、と勢いで進むことがあるから面白い。
 しばらくすると長大なソーセージが、作業テーブルの上に何本も並んだ。そこで充填作業はほかのみんなにまかせて、この長いソーセージをひねって小分けするのを担当することに。まずはちょうど真ん中をくるりとねじって半分に、そしてねじった箇所を指にひっかけてぶらさげて、上から順に仕上がりの長さに、2本ひと組でねじっていく。ただしこれだけだと、手を離すとねじった箇所がくるくる回ってほどけ、元どおりに戻ってしまう。そこで1箇所ねじるごとにひもに結び目をこさえる要領で、ソーセージの端を輪にくぐらせるのがポイント… と、このあたりは以前やったときに覚えたことの受け売りだけれど。
 ねじっては輪をくぐらせて、を繰り返し、1本分の小分けが終わったぞ、と持ち上げた途端、くるくるまわって元の長~いソーセージへと戻ってしまったではないか。すると、「ソーセージの端を輪にくぐらせるときは、かならず片方の端だけにしてくださいね。両端ともくぐらせちゃったら、とけちゃって結び目になりませんよ」と、隣のグループに小分けの方法を説明する、講師の方の声が聞こえてきた。

小分けし終わってできあがり。この後ゆでて、炒めて頂く

 充填もすべて完了、手が空いたほかの人も小分け作業にかかった結果、とりあえずすべての作業が終了した。最後にこれをゆでて仕上げだ。ゆでるのは調理ではなく殺菌が目的なので、7080度ぐらいの温度で15分ほど時間をかけるのがポイント。マメに火の具合を調節しないと、沸騰した湯でゆでたら、せっかくの豚肉の旨みがぬけてしまう。
 
代表者がゆでている間、デリカショップで生ハムやチョリソウインナー、ボロニアソーセージをおみやげ用に品定めしていると、しばらくしてできあがったソーセージをいっぱい盛った皿が運ばれてきた。一同、隣接のカフェレストランに集まり、さっそく1本ずつ試食だ。
 ゆでてから軽く炒めてあり、プツリと弾ける皮の下からは、肉汁があふれんばかりにジューシー。調味料を控えている分、タマネギなど野菜を多めに入れているので、味が複雑に仕上がっている。市販のソーセージのように、味付けが強すぎないから、肉の味がそのまま楽しめるのがいい。パセリの香りと苦味が相性よく、高原のソーセージらしくさわやかな味わいである。

ハムやソーセージ、ベーコン、サラミなど種類豊富。お土産にもぜひ

 講師の方によると、ここでつくるソーセージは見栄えをよくする発色剤や、肉のまとまりをよくする結着剤は使わず、添加物は極力抑えているという。添加物の使用量としては最少の極限で、これ以上へらすと肉がぱさついてしまうぐらいの、「低添加物」のソーセージなのだそうである。
 一般的に、大手メーカーの既製のソーセージには、コストの面や日持ちを考慮して、様々な種類の添加物が使用されている。一方で、ソーセージの手作り体験ではこのように、添加物をほとんど使用しないことが多い。食肉会社の偽装問題や、輸入食材の安全面などが近頃とりざたされる中、素材そのままの持ち味を生かし、かつ安全なソーセージも、軽井沢の本物志向につながっているようにも思えてくる。

 これにて軽井沢視察の全行程が終了、この後に移動で乗り継ぐ予定のバスの時刻が迫っているため、いつしか本降りになった中を、自分だけ先にクルマで軽井沢駅まで送ってもらう。ほかの参加者は軽井沢駅から新幹線で帰京の予定で、お昼のバーベキューに、おやつのソーセージ試食で満腹となったあとは、列車で東京まで熟睡なんだろう。
 自分はこれから前橋へと移動して、最近力を入れているという「豚肉で町おこし」をテーマにした食べ歩きが、晩飯として待っている。高崎までの新幹線代を節約して、バスで横川へ、さらに普通電車を乗り継いでの移動となるが、碓氷峠を走るバスやのんびり各駅停車の揺れの効果で、前橋到着までに少しでもバーベキューとソーセージが消化されるのを、祈るばかりである。(2007629日食記)