ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

町で見つけたオモシロごはん93…京橋 『優希寿司』の、ちらし寿司バースデーケーキなど

2007年07月04日 | ◆町で見つけたオモシロごはん
 以前、ここでも紹介した京橋の寿司屋「優希寿司」が、一時的に閉店、場所も移転することになった。入居しているビルが建て直しとなってしまうからだそうで、京橋の交差点からすぐの立地は、仕事場が銀座一丁目に移ってからもフットワークが良かっただけに、少々残念である。
 そんな訳で、優希寿司のヘビーユーザーの後輩が幹事となり、惜別の飲み会を開くことになった。彼女の誕生祝い、というお題もあるけれど、仕事仲間や彼女の友人が適当に集まり、ゆるゆると飲み続けていく、という、何とものどかなご趣向である。

 まずは開会予定時刻に合わせて、気合充分で繰り出した、われわれ仕事関係の先発部隊でビールで乾杯。この日は週の半ばであるにも関わらず、店はなかなかの盛況ぶりで、我々に割り当てられたテーブルも6人ぐらいが座れる1卓のみ。先発部隊からしてすでに2~3人オーバーしており、のっけからほかの席などより椅子をかきあつめて、のスタートである。この後も続々、参加者がいるようで、座れるかな、とご主人が、カウンターの向こうで笑っている。
 そして最初に登場した肴は、キビナゴのつくりだ。銀色の魚体に黒のラインと、鮮やかな身色の小魚が、丸皿にまるで菊の花のように盛ってあって、目にも楽しめる。キビナゴは、鹿児島の錦江湾で水揚げされる、ウルメイワシの仲間の地魚。体長10センチほど小さく、手開きにして酢味噌で頂くのが地元流の食べ方だ。身はプリプリと弾力があり、トロリとした甘さに2、3つまみながら、たちまちビールが空になる。ここからはいつもの、焼酎の緑茶割りにシフトしていく。それにしても東京のど真ん中で、これだけ鮮度のいいキビナゴが頂けるのは珍しい。

 参加者は続々と増え、カウンター用の高い椅子から見下ろすように参加しているメンバーも。仲間のひとりが主賓の誕生日プレゼントに、なぜかタイの食材や調味料を手渡したあたりで、次の皿は何と、カラスミが運ばれてきた。いわずと知れた日本三大高級珍味に挙げられる品で、ボラの卵巣を塩漬け、乾燥させたもの。鮮やかなオレンジ色が、何とも魅惑的だ。薄切りにされた横に、大根の薄切りも添えてあり、なかなか本格的。両方を重ねてシャクッと頂くと、ネットリしたカラスミにダイコンの汁気が加わる、という寸法。日本酒があれば大変危険な一品だな、と思いつつ、緑茶わりをさらにおかわり。主賓の友人がつくってくれた緑茶割りのグラスを受け取り、グッとやるのだが、何だかだんだん酒の分量が多くなってきているような。
 この日は、店の常連である主賓の誕生日ということで、ご主人も幾分、料理に気合というか、サービス精神が入っているよう。鹿児島の地魚の次は、長崎の珍味、ときた訳だが、主賓は確か、九州には生まれや育ちもなかったような?

 そのご主人の気合か、サービス精神か、エンターテイメントなのは分からないが、この日のメイン料理はちらし寿司だ。大皿にいっぱい盛られた寿司飯の上には、イクラに甘エビ、インゲンにキュウリ、厚焼き玉子と、赤、緑、黄が色鮮やかにちりばめられている。そして中央に鎮座した、大きな花型のローソクがポイント。
 仲間のひとりが火をつけたとたん、ハッピーバースデーの歌とともに、花びらがゆっくりと開きだした。見事な寿司バースデーケーキだ。花形ローソクひとつで何歳分か… は、主賓が女性だから問わずとして(笑)、おめでとう。具だくさんのちらしは酒の肴にも、締めにも向いており、ついおかわりしてしまう。

 …と、せっかく移転前に皆でやってきたのだから、もう少し店の様子を記しておきたいのだが、酒の分量が多い緑茶割りにここでノックアウトされてしまい、以後、翌朝にとんでもない状態になって目覚めるまで、恥ずかしながら何も覚えていない。上記の記述も、記憶を何とかたどってやっとこさ記した内容である。
 この店、握りをおまかせでも4000円しないぐらいと安く、ほか各種丼メニューなども評判という。いつ来ても深酒してばかりと、寿司屋のでの過ごし方としては恥ずかしい限りなので、移転前の閉店前に、きっちりシラフで訪れておかなければ。一度お昼に訪れて、その実力のほどをきちんと堪能してみるのもいいかも知れない。でもビールの1本ぐらいは頼んでしまいそうだが…。(2007年6月20日酔記)