暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

二つの破壊

2007-12-14 | -2007:わりとマシなもの
私と一緒に
あの果樹園へ帰ろう
みかん、ぶどうに
ももやいちぢく
春から冬まで実らせたあの林へ
今はきっと 入り口の両手にある
一対のいちょうが見頃だろう
あそこは昔となにも変わっていない
むしろ更に色と茂みを増して
私たちを歓迎してくれる
甘いものが食べたいから ほら
きっかけならここにある
だから一緒に帰ってしまおう
変化は時に疑い辛くなる
今ある事で済ませようとする
中々 偽りだと言い出そうとも出来ず
その場逃れの笑顔で誤魔化すばかり
あそこなら何も変わっていない
なにしろあの果樹園は
ここから幾万も遠いのだから

新緑の葉に囲まれて
おばさんの収穫を手伝った
実りが陽炎に歪むころ
涼みを借りてかくれんぼをした
赤と黄色と茶色に囲まれ
隠れて食べた甘い木の実のあの味を
細かな雪が積もっても
土に芳香は染み付いていた

昔はよく遊んでくれた
あの浅黒い肌をしたおばさんにも会おう
あんなにいい笑顔で働く人は
君だってまだ見ていないだろう
捨てることのできない記憶は
確かに果樹園の大部分を占めている
逃避だと笑われてもいい
あのしあわせな時間に 戻れるなら
みかん、ぶどうに
ももやいちぢく
好きな果物をもいで食べていい
植物も土も人間も
みんな私たちを歓迎してくれる
だからどうか 拒絶でもいい
返事を声に出して欲しい

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (891)
2008-06-12 06:15:30
報われない 返事 求めてしまう
知っているのにね
分かっているもの
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Unknown (鶏卵)
2008-06-13 08:18:52
ちいさな子どものように
生き続けてほしいのです。
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