暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

悪意の壺

2019-09-05 | -2018,2019
落窪んだ蠱毒の穴に
指を入れれば腐り落ち
身を投げた尊ぶべきひとは
都合が良いと誹られる

なんて善き人々だろう!
自らの身を挺してまで!
我らを救けてくれたのだ!
彼らの犠牲をたたえよう!

剥き出した骨は洗われもせず
次の穴を満たす水が
水たる証拠を待ち望まれる
浸された足首の鎖は落ち

私にできないことをして、
ああなんと素晴らしいひと、
あなたがいるから私はこうして、
五体満足でいられるわ。

指が落ちれば次は腕
腕も消えれば次は足
足も溶けたら次は鼻
その次、次を、次を

なぜ苦しそうな顔をするの?
どこへ行こうとしているの?
誰に助けを求めているの?
あなたは我らの救い主

誰にも出来ないことを成す
尊い人は消費され
賛美歌が朗々と歌われる
臓腑の欠片が配られる

かの者の死を讃えるべく
地中深くへ埋められた棺は
骨も肉も髪の毛さえも
一片の細胞片すら残されず

なんて善き人々だろう!
尊い英霊をけして忘れず!
毒は毒だと証明された!
血肉は皆の一部となった!

いつか染みゆく巫蠱の毒よ
骨身を臓腑を食い破れ
尊い人はすべての者に
等しく与えられるべき称号だ

壺の中の毒虫は
いつの間にか消えている
善き人々よ、あなたはいずれ
英霊の道を辿るだろう

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