暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

メトロ

2022-09-19 | 暗い
見上げども伽藍堂があるばかり
反響が幾重にも押し寄せる
寄り添えども募るのは虚しさばかり
天井は日に日に黒く煤けて
ああ、こういうときに
ひとはひとがこいしくなるのだと
空気を押し潰す鉄の塊を見遣りながら
傘の柄をぎゅっと強く握った
けれどもこういうときに
わたしはひとをつきおとしたくなるのだと
浅ましい恥を押し隠して天井を見上げる
見上げども伽藍堂があるばかり
日に日に煤けゆく壁のくろさが
わたしの胸に反響する、
幾重にも 幾重にも

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