ブログ うつと酒と小説な日々

躁うつ病に悩み、酒を飲みながらも、小説を読み、書く、おじさんの日記

呪の思想 神と人間との間

2012年06月09日 | 思想・学問

 雨の休日。

 先般実家から大量に貰い受けた亡父の蔵書など眺めています。
 とりあえず、哲学者・梅原猛漢文学者にして古代漢字の泰斗・白川静の対談集を読みました
 「呪の思想 神と人間との間」です。

 白川静にかかると、漢字というのは大抵呪いから来ていることになるようです。

 例えば
 これは首と進むが一緒になってできた文字で、道というのは敵や生贄の生首を運ぶためのものであったろうと言います。
 例えば
 これは鼻を上にした髑髏を載せる台このとだそうで。
 現在もアマゾンやアフリカの原始的な暮らしをしている部族の小屋には、よく髑髏を並べるための台だ設置してあるんだとか。
 魔除けですかねぇ。

 梅原猛はそれに応え、わが国の縄文の文様もまた魔除けであったろうと言います。
 とくに袖や襟からは魔が入ってきやすいから、袖や襟にとくに念入りに縄文の文様を入れたんだとか。

 さらに白川静は、文字はともともと人と人との交流手段ではなく、神と人との交通手段であったはずだと言います。
 人間は物が言えますが、神様は物を言わないので、文字を使った、と。
 だからわが国の行政文書である木簡や竹簡などは、文字本来の使用方法が廃れたずっと後に生まれた、人間だけのためのものだと断言していました。

 良いですねぇ。

 こういう浮世離れしたことを仕事にして大金が稼げるというのは。

 それにしても人間というものはほとほと妖怪怪異の類が好きなようで、時代をさかのぼればさかのぼるほど、人は妖怪や怨霊、古い神々と一緒に暮らしていたことがうかがえます。
 それならなぜ、近代文明の発展とともに、もっとも人間らしいとも言える、この世ならぬ存在を畏怖する心を、前近代的として排斥するようになったのでしょうね。

 原初、人間がもっとも怖れたのは闇であったろうと想像します。
 あらゆるものを隠してしまい、だからこそ何が潜んでいても不思議ではない闇。
 現代のお化け屋敷なんかも、ずいぶん暗くしてありますね。
 あれは原初の恐怖を今も人間は持ちつ続けていることの証左ではありますまいか。
 「月夜の晩ばかりじゃねぇんだぜ」という定番の凄みも、要は闇を怖れる精神に訴えかけているものと思われます。

 現代、いくら節電と叫んだところで、繁華街は一晩中明るく、繁華街ではなくても街灯が夜の闇を消しています。

 「呪の思想」は、原初の恐怖の感情と、それを克服しようとしてなお克服できない人間精神の奥底を垣間見せてくれる良書でした。

呪の思想―神と人との間
白川 静,梅原 猛
平凡社

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マザーズ・デイ

2012年06月09日 | ホラー・サスペンス・SF等の映画

 昨夜はなかなかの秀作にあたりました。
 「マザーズ・デイ」です。

 豪華な郊外の中古住宅を購入し、友人らを招いて新居披露パーティを楽しむ夫婦。
 この夫婦は幼い息子を事故で亡くした傷心から、引越しによって心機一転、人生をやり直そうともくろんでいます。

 そこへ、その家の元の住人で連続強盗犯の三兄弟が逃げてきます。
 三兄弟は家が売られていたことを知らなかったのです。
 パーティに集まっていた人々を監禁する三兄弟。
 三兄弟は、携帯で悪事の働き方とルールを教えた絶対的存在である母親を呼びます。
 数時間後、母親と末っ子の娘が家に到着。
 三兄弟は凶悪で乱暴ですが、母親は礼儀正しく、一見親切そうに見えます。
 しかしこの母親こそ、最も冷酷で残忍な性格だったのです。
 国外逃亡のために国境で待つ案内人が求める1万ドルがどうしても必要。
 そこで彼女らは、パーティに集まった人々を銃で脅し、金品を巻き上げます。
 しかし、どうしても足りません。
 その時、三兄弟はその家に母親宛で多額の金を送金していたはずだと言い出し、母親は家の持ち主夫婦に金のありかを問いただしますが、夫婦は知らないの一点張り。
 どちらか、もしくは2人ともが嘘をついていると母親は見抜きます。
 なぜ夫婦は命がけで金を守ろうとするのか。
 金を巻き上げてすばやく逃走する予定だった極悪一家はしだいにその凶暴な本性を表していきます。

 テンポの良い展開、母親の狂的なまでの冷酷さ、人質となった人々の絶望。

 しかもしだいに、人質たちの嘘や悪が暴かれていくのです。
 残酷描写は控えめですが、しかし人間が持つ悪が、犯人側だけでなく、人質側からも描かれます。

 自分が助かりたいために他の人質を見殺しにし、あるいは積極的に危害を加える者、おのれの妻を守るために他の人質の命を危険にさらす者。

 さらに重要なのは、母親というものの持つエゴイズムが、これでもか、というほど前面に押し出されます。

 後味は悪いですが、悪を描いて秀逸なホラー・サスペンスに仕上がっています。

 自信をもってお勧めできる一作です。

マザーズデイ [DVD]
レベッカ・デ・モーネイ,ショーン・アシュモア,ブリアナ・エヴィガン,アレクサ・ヴェガ,デボラ・アン・ウール
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