昨日は珍しく、韓国の小説を読みました。
翻訳部門で本屋大賞を受賞した「アーモンド」です。
生まれつき偏桃体(アーモンド)が極端に小さく、そのためにほとんど感情を持たず、他人に共感することもできない怪物と呼ばれる少年と、逆に感情の塊のような粗野で乱暴な不良少年との不思議な交流を描き、それぞれの少年が少しづつ成長していく過程を描いています。
私は「箪笥」や「半地下の家族」などの名作映画を作り出した韓国のエンターテイメント作りの巧妙さに惹かれますが、小説は読んだことがありませんでした。
韓国には著名な古典文学も無く、文学不毛の地だと思っていたのです。
しかしこの小説を読んで、それは私の誤解であったことに気付きました。
「アーモンド」では、恐怖や怒り、愛や喜びといった感情とは何なのか、心と脳の関係は、といった問題が感情の無い少年の目線で語られます。
16歳の少年が少しづつ感情の芽生えを見せるのですが、20歳になった時、30歳になった時どのように変化しているのか切実に知りたいと思わされました。
そして何より、翻訳文が素晴らしい。
翻訳文というのはどこか不自然になるものですが、読みやすい日本語に訳されています。
もしかしたら立地も近い韓国の言語は日本語と似ているのかもしれません。
韓国文学という未知への扉が開かれた幸福な読書体験であったと思います。