昨夜は恒川光太郎の連作短編集「化物園」を読みました。
7つの短編が収められています。
一つ一つの作品は独立した物語ですが、同じ化物が登場することによって、連作と見做すことができます。
同じ化物とは言っても、猫だったり蛇だったり、果ては顔が無く、数センチ浮いているものだったり、見た目は様々ですが、それらは同じ物です。
この短編集の圧巻は、最後に掲載されている「音楽の子供たち」の迫力でしょうね。
「音楽の子供たち」によって、それまでは明かされなかった化物に関することが分かります。
化物は人間が誕生するはるか以前から存在する物であって、その姿は変幻自在であり、かつては人間を喰らうこともあったことが示唆されます。
その後異形の化物は人間世界の片隅で息をひそめ、長く、人間との関係を保ってきました。
人間によって化物はどう変わるのか、また、化物によって人間はどのような影響を受けるのか、それらがぼんやりと描かれます。
人間と化物との距離感が良い感じです。
この作者ならではの、どこか寂しさを感じさせる、メランコリーとでも言うべき雰囲気が漂っていて、良い連作短編集であったと思います。
これで現在出版されている恒川作品は全て読んでしまいました。
読んでいないのは、雑誌等に発表され、まだ単行本になっていない作品です。
これらが本として売り出されるのが楽しみです。