横道世之介3部作の最後、「永遠と横道世之介」を読み終わりました。
上下2巻。
合わせて700頁に及ぶ長編です。
第1作では大学1年生の一年間を、第2作では就職に失敗してバイトで過ごす24歳の1年間を、今作ではまがりなりにもプロのカメラマンとなった39歳の世之介が描かれています。
お調子者で誰からも好かれる世之介。
唯一、女性からはもてません。
今作では、30歳でお付き合いした薄幸の女性との思い出が頻繁に語られます。
世之介が彼女に出会った時、すでに彼女は余命2年の宣告を受けていました。
しかし世之介は、彼女に「早く出会えて良かった」と言います。
2年遅かったら彼女は亡くなっていたと思うと、2年といえど長い年月なのかもしれません。
短い夏の思い出も、クリスマスの思い出も、2回だけ。
それでも世之介にとっては最高の彼女なのです。
彼女と死に別れて後、新しい彼女と付き合うことになりますが、あろうことか最初の告白の時に、「2番目に好き」と言ってしまいます。
死に別れた彼女が永遠に一番ということでしょうか。
世之介にとって最高の人生はリラックスして生きること。
世之介は実際にそうやって生きています。
世之介は40歳で事故死してしまうのですが、彼は精一杯に生きたと思わせる小説でした。
吉田修一と言えばバリバリの純文学作家ですが、こんなに軽い、そして何も起こらない小説も描けるのですね。
軽い嫉妬を感じました。