世の中には恋の歌が引きも切らず、少々食傷気味です。
それもあまりにストレートで稚拙な歌詞が目立ち、辟易します。
美しい日本語を紡ぎ出す能力の無い者が無理やり詞を書くからでしょうねぇ。
かつて、作詞家・作曲家・歌手はほぼ分業が確立されており、それがゆえ、高い作詞能力を持った人しか作詞しませんでした。
歌手も歌唱力が優れていたり、味わい深い声をもっていたりする人だけがプロとなったのでしょう。
それが1970年代あたりから、シンガーソングライターと呼ばれる、作詞作曲を一人でこなし、さらには自分で歌っちゃうという人が増え始め、それと比例して聞くに堪えない幼稚な詞が出回り始めたように思います。
これにより、日本語による美的な歌の崩壊を生じ、ついには俵万智とかいう、自由詩を無理やり定型の短歌に押し込めたような人がちやほやされるに及んで、日本語は壊滅的打撃を受けました。
嘆かわしいことですねぇ。
さらにはら抜き言葉が横行し、もはやら音をきちんと発音しただけでお年寄り扱いです。
時代の流行を嘆くのはいつの時代もお年寄りのくだらぬ愚痴とはいえ、私はせっかちなのか、早くも感覚が老齢に近づいたらしく、嘆かわしくて仕方ありません。
「徒然草」にも、
何事も、古き世のみぞ慕はしき。今様は、無下にいやしくこそなりゆくめれ。
とあります。
徒然草 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス) | |
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鎌倉時代を生きた兼好法師もまた、昔は良かった式の、年寄めいたことを書き残しているわけですから、私が現代の日本語の乱れを嘆いたところで、後の世の人々から見れば、馬鹿馬鹿しく感じるのでしょう。
何事も繰り返しです。
言葉は変わっていくものと知ってはいますが、現代の変化は早すぎるような気がします。
恋の歌に戻りますが、私が近頃気に入っているのは、SEKAI NO OWARIという子供に人気のバンドが歌う、人ならぬ女性との恋の曲の数々です。
不死身のロボットとの恋を歌った「不死鳥」。
雪女との「スノー・マジック・ファンタジー」、かぐや姫がガード下で酔っぱらったりする「ムーン・ライト・ステーション」、不自由な水族館で飼われている人魚が客に恋する「マーメイド・ラプソディ」などなど。
いずれもこの世に存在し得ない女性との恋という儚さを秘めつつ、時に激しく、時にコミカルに歌ってくれちゃいます。
それを私はうっとりと聞くというわけ。
近頃の日本語の乱れを嘆きつつ、子供らに人気のバンドにはまる私も少々分裂気味のようです。
人というもの、古きを求めつつ、現代から逃れては生きられないのだと愚かにも実感せざるを得ません。
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