ブログ うつと酒と小説な日々

躁うつ病に悩み、酒を飲みながらも、小説を読み、書く、おじさんの日記

境界線

2009年04月21日 | 思想・学問

  イタリアの哲学者、ジョルジュ・アガンベンは、「境界線を疑え」と言っています。「われわれ」と「彼ら」と言ってもいいでしょう。
 健常者と精神病者、日本人と朝鮮人、白人と有色人種。 共同体を維持するためには、「われわれ」という括りを設けて、「彼ら」を作り出さなければいけません。あるいは、「彼ら」が在るから「われわれ」が在る、と言ったほうが適切かもしれません。
  どこの国でも、外国人の入国には一定の制限がありますし、社会的弱者や異質な ものに対する差別があります。
  私自身、精神病を発症し、差別的発言を受けたことがあります。そのとき、私は「彼ら」にされていたわけです。
  しかし、社会的存在である人間は、必ず、境界線を設けてしまいます。そうでなければ、集団は維持できません。愛国心とか、母校愛とかいったものも、まさに境界線です。 これに対処する方法はあるでしょうか。おそらく、根本的方法は皆無でしょう。
  そもそも言語というもの自体が、境界線を引くためのものです。あれとこれを分けるためのものです。月と星のように。
  アガンベンは、境界線を引くために与えられた言語しか存在しない以上、その言語を使って、疑問を呈し、時にはアナーキストのように自身を汚しながら、闘い続ける以外にない、と言っています。
  近頃マスコミでよく取り上げられる、ホームレスやニートの問題を見ていて、アガンベンの思索に学ぶべきだと、痛感します。


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