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ブログ うつと酒と小説な日々

躁うつ病に悩み、酒を飲みながらも、小説を読み、書く、おじさんの日記

「色を見る、色を楽しむ」 ブリジストン美術館

2013年07月15日 | 美術

 今日は久しぶりに美術館に出かけました。

 京橋のブリジストン美術館で開催されている「色を見る、色を楽しむ」展を鑑賞するためです。




 まずは車を飛ばして都営八重洲駐車場へ。
 休日のせいか道がガラガラで40分ほどで到着。
 全然知らなかったのですが、日本橋高島屋で2000円以上買い物をすれば3時間まで駐車無料とのことで、昼時でしたので、高島屋で昼飯を食いました。
 2000円をちょっと超えて、一安心。

 日本橋高島屋や日本橋三越には、子どもの頃親に連れられて時折出かけました。
 重厚なたたずまいは当時と変わらず、しばし感傷に耽りました。

 で、高島屋から徒歩5分ほどのブリジストン美術館へ。
 ここを訪れるのは、アンフォルメル展を観て以来。
 じつに久しぶりです。
 その時はアンフォルメル以前の、象徴主義の画家、ギュスターブ・モローの絵に魅了されたことを思い出します。

 わが国ではルノワールなどの印象派が根強い人気を誇っていますが、私には印象派は健康的に過ぎるようで、好みません。

 今回の展覧会は色彩をテーマにしているせいか、多種多様な絵画が展示されていました。

 で、モローより12~13歳くらい年下の同じ象徴主義の画家、ルドンの絵がひと際目を引きました。
 ルドンには黒の時代と言われる時期があり、黒こそ色の本質として、モノクロの幻想的な絵ばかり残しています。



 「かげった翼の下で、黒い存在が激しく噛みついていた」です。

 しかし私がより興味を持ったのは、黒の時代を経て再び色彩豊かな絵画を残すようになった頃の逸品、「神秘的な語らい」です。

  淡い青を基調に、うつむく女を年長の女がなだめているようにも、誘っているようにも見えます。

 いずれにしろ、この世の者ではありますまい。

 じつに幻想的で美的な絵画で、私はこの絵の前で30分以上、佇んでいました。

 じつはこの構図、ルドンが好んで描いたもので、岐阜美術館が所蔵している「神秘的な対話」のほうが有名で、色彩も豊かです。



 ルドンのコーナーを抜けると、マチス



 上のような切り絵が多数並んでいました。

 しかし正直、ルドンの絵画のように私の心を捉えることはありませんでした。

 美術鑑賞というのは、生命力を吸い取られるような作業で、観ている時は興奮状態で気付きませんが、一歩美術館の外に出るとどっと疲れを感じます。

 喫茶店で疲れを癒し、車を飛ばして帰りました。
 ルドンの画集を一冊購入して。

オディロン・ルドン―自作を語る画文集 夢のなかで
Odilon Redon,藤田 尊潮
八坂書房


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草刈り場

2013年06月11日 | 美術

 現代アートの世界において、わが国が草刈り場となっているらしいことを、時折耳にします。

 わが国の美術愛好家は、今も西洋美術でいえば印象派あたりに留まっている人が多く、グロテスクとも頓知とも言える現代アートに拒否反応を示すのでしょう。

 例えば美少女フィギア
 あれはわが国では主にヲタクの人々が好む特殊な趣味であるように捉えられ、美術作品として取り上げることはありません。
 しかし、米国などではあれは美術作品として取引され、わが国で1万円程度で仕入れたものが、40万も50万もの高値で売買され、しかも飛ぶように売れているのだとか。
 さすがにそれを知ったわが国のフィギア職人が声を上げ、一時期よりは値が上がったようですが、今も美術作品と見なすことはありません。

 同じようなことは幕末から明治初期にかけても起こりました。
 わが国では低俗な流行画としてしか見なされず、物を包むのに使ったりしていた浮世絵が、欧州に渡るや、革新的な美術作品としてもてはやされ、その技法を真似た絵画が欧州の画家によって数多く製作されました。

 村上隆のように、様々な現代アートに挑戦し、その一つとして美少女フィギアを作る人はともかく、美少女フィギア専門の人は、アーティストというより職人と見なされているように感じます。

 

村上隆の美少女フィギアです。

 現代美術の世界は、火薬を爆発させて美術作品を製作する中国の蔡國強だとか、素人には難解な頓知の迷宮に入りこんでしまったかのごとくです。



 蔡國強とその作品です。

 今となってはピカソなんて分かりやすいほうですね。


 しかし、美術の本質が変ったわけではありません。
 観る者の心を捉えることができれば、それは名作なわけで、とっつきにくさは問題ではありません。

 要するに、考えることをやめ、理解しようとせず、感じればよいのです。

 わが国においても、現代美術が正当な評価を得られるようになってほしいと、願ってやみません。
 少なくとも草刈り場になるような状況は改めなければならないと思うのです。

村上隆完全読本 美術手帖全記事1992-2012 (BT BOOKS)
美術手帖編集部
美術出版社



芸術闘争論
村上 隆
幻冬舎



芸術起業論
村上 隆
幻冬舎



何処に行きつくのかはわからない、でも何処にいたのかはわかる?―ジェニファー・ウェン・マ ドラゴン現代美術館展覧会カタログ
蔡 國強,Jennifer Wen Ma
現代企画室



蔡國強「原初火球」展カタログ
鷹見明彦,金坂留美子,金坂留美子,小野修子,甲斐渉,ブライアン・スモールショウ
P3 art and environment


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無、無念、山岡忠曠氏の絵画、売約済み

2013年06月09日 | 美術

 昨日、東京芸術大学の売店で、山岡忠曠という人の絵に出合い、これを購入しようと決めたことはこのブログで紹介しました。

 で、今朝、売店へ電話をかけて購入したいので予約させてくれとお願いしたら、すでに売約済みとのこと。

 あまりにも残念です。
  

 今日は立ち直れません。  

 いつ売れたのか尋ねたところ、6月5日に売店にかかげたところ、その日のうちに売れてしまったようです。

 ということは昨日観た時点ですでに売約済みだったということ。
 だったらその旨札をぶら下げておきなさい。

 あらぬ期待をし、焦がれるひと夜を過ごしてしまったではないですか。

 美術品の売買というのは、基本的にはオリジナルの一点もの。
 本やCDのように大勢の人が同じものを買えるようにはできていません。 

 このうえは、山岡忠曠という人の今後の動向を、注意深く見守る他ありませんねぇ。


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予感

2013年06月08日 | 美術

 初夏の陽気に恵まれながらも、屈託を抱えた私は、それをしばし吹き飛ばすため、散歩に出かけました。

 どこへ行こうかと考え、なぜか、東京藝術大学が頭に浮かびました。

 なぜでしょうか。

 行ってみれば分かること。

 私は不思議な予感を感じつつ、都営大江戸線の上野御徒町駅で降りて、上野公園を突っ切り、東京藝術大学にたどり着きました。

 東京藝術大学の売店で、なぜ私がここを目指したのかが、判明しました。

 あまりにも美しい半月の絵が、売られていたのです。

 描いたのは東京藝術大学OBの山岡忠曠という若い絵描き。
 1985年生まれと言いますから、やっと30歳。
 まだこれからの人です。

 こういう経験は三度目で、一人はギュスターブ・モロー、もう一人はやなぎみわです。
 ギュスターブ・モローはとうの昔に亡くなっているので新作を楽しむことはできません。
 しかし、やなぎみわ山岡忠曠はこれから制作されるであろう美術を待つ楽しみがあります。

 で、その絵、5万円ちょっとで売っていたのですが、とりあえずボーナスが出るまで待とうと思い、今日は購入を断念しました。
 それほど小さな絵ではなかったので、車で来たほうが良かろうという気持ちもありました。

 その後少々興奮気味にお寺だらけの谷中から根津のあたりをぶらついて、帰宅の途につきました。

 小説家にしても絵描きにしても音楽家にしても、一瞬にして気に入るということが、ごくまれにありますね。
 屈託を抱えていたはずが、そんな僥倖に恵まれた、幸せな一日となりました。

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会田誠展 天才でごめんなさい

2013年02月16日 | 美術

 今日は冷たくて強い北風が首都圏を吹き荒れていましたね。
 外を歩くのは困難なこの日こそ、かねて行きたいと思っていた展覧会に出かけました。

 六本木ヒルズの53階にある森美術館に会田誠展・天才でごめんなさいを観に行きました。



 会田誠といえば、村上隆と並ぶ現代アートの先端を行く美術家ですね。
 絵画、彫刻、映像、様ざまなジャンルを超えて活躍するスーパースターです。

 極めて写実的な作品もあれば、悪ふざけのような作品もあります。

 唯一写真撮影が許されていた作品、考えない人を撮ってきました。



 美術館に入ると、代表作、あぜ道が迎えてくれました。



 写実的でありながら、あぜ道と少女の髪の分け目が繋がっているという不思議な構図で、私はこの作品を好んでいます。

 というのも、あまりに過激な作品や政治的メッセージ性を持った作品が多いなか、この作品には不思議な郷愁みたいなものを感じるからです。

 過激と言えば下の作品。
 というタイトルの連作の一部です。





 幻想的とも残酷とも言える独特の美学に貫かれているとは思いますが、人を不快にさせる要素も併せ持っています。
 ただこの構図、会田誠のオリジナルではありませんね。
 30年以上も前に永井豪「バイオレンス・ジャック」人犬として描いています。



 これはバイオレンス・ジャックの宿敵で独裁者のスラムキングが経営するレストランで働いていた若い男女が駆け落ちし、スラムキングに捉えられて手足を切られ、舌を抜かれてペットにされ、最後は闘犬として死んでいく、という残酷なもので、小学校の頃読んでひどくショックを受けたことを覚えています。

 これに比べれば会田誠はだいぶ美的ではありますねぇ。

 戦争リターンズというシリーズも目を引きました。



 また、会田誠ビン・ラーディンに扮し、なぜかコタツで日本酒を飲みながら愚痴をこぼす、というふざけた映像作品もありました。

 

 いずれも新鮮な驚きに満ちた作品群でした。
 好悪は分かれると思いますが、何でも出来ちゃう美術家なんでしょうね。
 きっと葛飾北斎なんかもそうだったんじゃないかと思います。

 あんまり熱心に観すぎて疲れてしまいました。

会田誠作品集 天才でごめんなさい
会田誠
青幻舎
三十路―会田誠第二作品集
会田 誠
ABC出版
カリコリせんとや生まれけむ
会田 誠
幻冬舎



孤独な惑星―会田誠作品集
会田 誠
DANぼ



バイオレンスジャック [少年向け:コミックセット]
永井 豪
日本文芸社

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刺青

2012年10月29日 | 美術

 先ほどまでバラエティー番組で、刺青を入れた若い女性数名と、刺青を入れることに反対する芸能人数名の座談会をやっていました。

 刺青を入れようが入れまいが成人ならば勝手でしょうに。

 それをなんでまたテレビ番組に呼んで入らぬお節介をするのでしょうね。

 刺青を入れていると、一般社会で生きづらくなることは間違いないでしょう。
 橋下大阪市長も市職員の刺青を禁じるような発言をしていましたし、健康ランドもたいていは刺青お断りですし、接客業のほとんどは刺青を入れているだけで採用されないでしょう。
 おそらくまともな親なら倅が刺青を入れた女と結婚すると言ったら反対するでしょう。

 しかしだからこそ、刺青には独特の価値があります。
 すなわち、一般社会の常識とは背を向けて、生涯闇社会で生きていくのだという覚悟を示すには、簡単には除去できない巨大な刺青を全身に入れることが効果的です。
 だからヤクザは刺青を入れるのでしょう。

 それをファッションだとか個人の自由だとか言って刺青を入れ、しかし偏見や差別に反対だというのは、自己矛盾でしょうね。
 世間から嫌われるようなものだから入れているのでは?
 それだけが唯一の価値なのでは?

 それとも刺青を入れたら一般社会では差別や偏見に会うのだという程度の世間知すらないのでしょうか。
 お気の毒。

 私の女友達にも、数名ですが、蝶やマリア様の刺青をお尻や背中などの目立たぬ場所に入れている者がいます。
 腕とか首と違って、裸になって初めて知るもので、男としては素朴な感動がありましたね。
 通常人に見せない部位を見せてくれたわけですから。

 しかしおそらく多くの刺青を入れる女は、自己顕示欲が強く、私の女友達のような効果的な部位に刺青を入れようとはしないのでしょうね。
 よりわかりやすい部位に、派手に。

 私は他人でしかない若い女が派手な刺青を入れたからと言ってご注意申し上げるほどお人よしではありません。
 成人すれば犯罪行為以外何をしようと知ったことではありません。
 ただ、私はそんな痛い思いをして皮膚に絵を描きたいと思ったことがないだけです。

 私だったら刺青シールを毎日とっかえひっかえし、様ざまな絵柄を楽しみますがねぇ。
 飽きたら素肌に戻れますし。


美人画

2012年08月28日 | 美術

 先ほどNHK-BSで上村松園の特集を放送していました。
 上村松園といえば、わが国で最も有名な女流画家の1人でしょうね。
 そして日本画で女性を描き続けた人として有名です。
 私も数年前、東京国立近代美術館に上村松園展を観に行きましたが、あんまり混んでていやになりました。
 私が彼女の美人画に感じるのは、精緻で美しいけれど、どこか情動が感じられない、ということです。
 おとぎの国の美人とでも申しましょうか。

 下は上村松園「蛍」です。


 私が男だからなのか、きれい過ぎてつまらないような感じがします。

 どちらかというと、同時代に美人画家として活躍した鏑木清方のほうが人間の情を感じます。



 鏑木清方「遊女」です。
 画題のせいもありますが、妖艶な感じで、見惚れますねぇ。

 さらに進んで、ほぼポルノ扱いされていた責め絵の伊藤晴雨となると、ほとんど欲望の塊のような絵です。



 上村松園鏑木清方と違って芸術家扱いされないまま、かなりえげつない責め絵を残し、SM趣味の方々から神のように崇められました。

 人それぞれに趣味はあるでしょうが、私は最も強く人間精神の躍動を感じさせる伊藤晴雨の責め絵に、心惹かれます。

 団鬼六が伊藤晴雨題材にした面白い作品を書いています。
 ご一読をお勧めします。

異形の宴―責め絵師・伊藤晴雨奇伝 (幻冬舎アウトロー文庫)
団 鬼六
幻冬舎



外道の群れ―責め絵師・伊藤晴雨伝 (幻冬舎アウトロー文庫)
団 鬼六
幻冬舎

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二条城展

2012年08月19日 | 美術

 今日は江戸東京博物館に二条城展を観にいってきました。
 この博物館、都内にしては珍しく、巨大駐車場があるのですよねぇ。
 その分行くのが気楽です。

 二条城展は、徳川家康による造営から、徳川慶喜による大政奉還までの徳川家の栄枯盛衰を追いながら、襖絵や天井画の実物が展示されていました。
 京都から外して持ってきたんでしょうねぇ。
 今京都の二条城に行ってもお宝が観られないということで、得した気分。



 それにしても武家政権が好む美術というのは荒っぽいものだ、という印象を受けました。
 二の丸御殿大広間の「松鷹図」など、巨大な上に鷹があり得ない比率の大きさで描かれており、縮み志向の日本美術の中では、異色です。
 権力者だけあって、金ぴかのやかんの様に大きな酒盃だの、派手さが目に付きました。
 
 後水尾天皇に嫁した徳川秀忠の娘、東福門院の木像には、菊の御紋と葵の紋が並んで彫られており、これは不敬なんじゃないかと思いました。

 徳川将軍家はかしこきあたりと並び立つと言いたかったんでしょうけれど。

 暑さ厳しいせいか、館内はエアコンが効いていますから、けっこう客が入っていました。

 帰り、ドトールで休んでいると、イタリア人と思しき若い男女四人組が入ってきましたが、騒々しい連中でしたねぇ。
 あまりの騒々しさに、早々に立ち去るよりほかありませんでした。
 大阪のおばちゃんも連中には敵わないんじゃないでしょうかねぇ。

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エミール・ガレ

2012年05月31日 | 美術

 一昨年の今頃、目黒区美術館でエミール・ガレの生きた時代という展覧会が開かれました。
 行こう行こうと思っているうちに展覧会は終わってしまい、その後忘れていました。

 このほど某図書館でその時の展示図録を観る機会に恵まれ、改めてフランス、アール・ヌーヴォーを代表するガラス工芸品や家具や調度品などの名品に酔いました。

 トリステの花器です。

 後に退廃的と称され、美術的価値が低いとされたアール・ヌーヴォーですが、この作品には退廃的な香りはしませんね。
 むしろ花瓶の青の、その青さが際立って、何か霊的な感じがします。



 一方こちらの置物は、悪趣味とさえ言える異彩を放っています。
 むしろこちらのほうがアール・ヌーヴォーのイメージに近いかもしれません。

燕文両耳付鶴首花器です。

 こちらはまた、なんとも繊細な花器ですねぇ。
 ぽきっと折れちゃいそうです。

 燕たちがひそひそ話をしている図柄が可愛らしいですね。
 なんと燕たち、墨で描かれているそうです。
 新しい技法を生み出したのでしょう。

 アール・ヌーヴォーは直訳すれば新しい芸術ということですから、19世紀末の芸術家たちは、競って新しい技法を生み出したのでしょうねぇ。

大樹ユーカリ文花器です。

 これはまた、生命力に溢れた大型の器ですねぇ。

 ガレは静謐な青の青さを霊的に描き出したかと思えば、悪趣味な作品を物し、可愛らしい作品を造ったかと思えば生命賛歌のような作品を生み出したのですねぇ。
 
 まさしくガラス工芸の天才です。

 目黒区美術館の展示図録を置いているなんて、某図書館、Good Job!

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ボストン美術館 日本の至宝特別展

2012年05月27日 | 美術

 今日は上野の東京国立博物館へ出かけました。
 展示は、「ボストン美術館 日本の至宝特別展」です。
 さる筋から招待券をもらったので、行ってきました。

 車を上野警察署前の時間貸し駐車場にとめて、てくてくと歩き出しました。
 都内一、安全な時間貸し駐車場なのではないかと思います。
 目の前が警察署ですからねぇ。

 東京国立博物館に着くと、入場者多数につき、入場制限を行っているとのことで、30分待ちと言う案内。
 げんなりしましたが、ここまで来て観ずに帰るわけにもいきません。長蛇の列に並びました。
 やっと入ってはみたものの、混んでましたねぇ。
 東京国立近代美術館に「上村松園展」を観に行った時以来の混雑ぶりです。

 私が嫌いなものは、上り坂と、待つことと、人混み

 上り坂以外は揃っているではありませんか。

 美術鑑賞というよりは、人の頭の多様さを観に行ったようなもの。
 はげあり、バーコードあり、茶髪あり、帽子あり、不本意ながらあらぬ物を観察してしまいました。

 展覧会は、絵巻、襖絵、小袖、刀剣、仏像仏画などがバランスよく揃っており、お隣、本館のミニチュア版が平成館に出現したかのごとくでした。



 これらわが国古来の美術品が、ボストン美術館に収められ、日々研究されているとは、不思議な感じがします。

 幕末から明治の混乱期に、あるいは売られ、あるいは騙し取られて海を渡ったのですねぇ。

 彼ら好事家は、わけても日本の刀剣に心惹かれたようです。
 命のやりとりをするための道具でしかない刀剣に、日本人は精神性を注入し、それは外つ国々の人々を魅了したのですねぇ。
 命を奪うことにかけては抜群の能力を有する日本刀が、同時に極めて高い精神性を象徴していたとは、まったく驚きです。

 混雑する会場のなかで、私は刀剣の前でだけは、立ち止まって、うっとりとこれを眺めたのです。

 展覧会を後にすると、不忍池やアメ横を冷やかして帰りました。
 けっこう暑かったですねぇ。
 少し日焼けしたような気がします。
 歩数は意外に伸びて、12,042歩。
 良い運動になりました。

名品流転―ボストン美術館の「日本」
堀田 謹吾
日本放送出版協会

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メイプルソープ事件

2012年02月19日 | 美術

 今日、2月19日という日を迎えて、私はメイプルソープ事件で最高裁がメイプルソープの写真集はわいせつ図画にあたらないとして出版社の主張を認め、国側敗訴の判決を出したときのことを、はっきりと思い出します。
 2008年のことでした。

 メイプルソープといえば、現代米国を代表する写真家。
 花の写真や男のヌードの写真が多いですが、彼の死後発行された「Mapplethorpe 」という写真集に、男性性器を露出させた作品が何点か掲載されているのが問題となったようです。

 下がその写真集です。↓

Mapplethorpe
Robert Mapplethorpe Foundation,Arthur C. Danto
Te Neues Pub Group                                                 
  

 古くはサド裁判といい、四畳半襖の下張り裁判といい、わいせつか芸術かを争う裁判においては、常に国側が勝訴し、芸術家や出版社は敗訴してきました。
 それがメイプルソープ事件では国が敗訴したわけで、この種の事件では画期的なことです。

 では、メイプルソープの写真をいくつか。



 大人しめの花の写真です。

 

  
  こちらになると、どこか毒気のあるエロティックな写真に見えてきます。







 メイプルソープは黒人男性の鍛え抜かれた肉体美を好んでいたようです。
 それは私生活でもそうで、同性愛者であった彼のもとには黒人の美少年・美青年がいたようです。



 こちらは国がわいせつ図画に指定した写真のうちの一枚です。
 国、という個人はいないわけで、役人だか大臣だかが会議にかけて決めるんでしょうけど、その会議、面白いでしょうねぇ。
 もぐりこんでみたいものです。


 メイプルソープの人と作品を紹介した番組の一部です。

 

 彼は42歳のとき、エイズで亡くなります。
 バブル絶頂の1989年でした。

 私はその頃大学生で、何冊か彼の写真集を購入しました。
 ストレートで凛とした花やメイル・ヌードの写真の数々は、私を慄然とさせるに十分でした。
 写真の持つ力を過小評価していたことを、痛感させられましたねぇ。

 もう亡くなって20年以上たつのですねぇ。

 いまだにメイプルソープはニュー・ヨークのとんがった芸術家の先頭を走っているような気がしてなりません。

Flowers
Robert Mapplethorpe
Bulfinch



メイプルソープ
Patricia Morrisroe,田中 樹里
新潮社

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ダリの命日

2012年01月23日 | 美術

 今日はスペインの天才画家、サルバドール・ダリの命日です。
 1989年、私が大学生の時でした。



 彼は奇行で知れらていましたが、親しい人の前では繊細で常識的だったそうです。

 勝新太郎が記者会見でもう酒も煙草もやらない、と語りながら、旨そうに煙草をふかし、ワインを飲んでいたようなもので、一種の偽悪だったのではないでしょうか。

 若い頃シュールレアリスム運動に加わりながら、アンドレ・ブルトンの怒りをかい、除名されたりもしました。
 アンドレ・ブルトンによれば、ダリのファシズムへの親和性を問題視したようですが、じつは高額で売れるその作品に嫉妬したのかもと考えることは、碌な作品を残さなかった文芸家のブルトンらしいともいえ、面白いものです。

 私は中学生の頃ダリの絵と出会い、強烈な印象を残しました。
 いわゆるシュールレアリスムにしては分かりやすいし、写実の技法で幻想的な絵を描くというのが、非常に新鮮に思われました。

 では、ダリの絵を二つ。





 美醜を超えようとしたシュールレアリスムを除名されたのは当然かもしれません。
 ダリの絵は、どこまでも美しいですから。

ダリ・私の50の秘伝―画家を志す者よ、ただ絵を描きたまえ!
Salvador Dali,音土 知花
マール社
ダリ全画集 (タッシェン・ミディアートシリーズ)
ロベール デシャルヌ,ジル ネレ,Gilles N´eret
タッシェンジャパン
シュルレアリスム宣言・溶ける魚 (岩波文庫)
Andre Breton,巖谷 國士
岩波書店
ナジャ (岩波文庫)
巖谷 國士
岩波書店

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能面と能装束

2012年01月14日 | 美術

 今日は久しぶりに美術館に出かけました。
 日本橋の三井記念美術館です。
 お目当ては、三井家所蔵の「能面と能装束」展です。



 能の衣装や面は、おそらく世界に例のない、最も美しいファッションであろうと思います。

 衣装や面だけでなく、笛や鼓にまで様々な意匠が凝らされ、面をしまう箱にまで、美しい装飾が施されていることを知りました。

 まったくわが民族の美意識の独自性と高度さは、驚嘆すべきレベルです。

 なかでも、有名な秀吉愛蔵の花の小面(こおもて)は、少女らしいふっくらとした頬と生き生きした生気が漲っており、素晴らしい面でした。

 
花の小面です。

 一方もう少しお姉さんの面で有名な孫次郎は、気品漂うものでした。

 
孫次郎です。

 
この2つの面を実物で、間近で観られることは生涯あるまいと思っていたので、たいへん幸せです。
 日本に生まれて良かったぁ。

 その他般若小野小町が老いてしまった後の老女など、有名な室町時代の面をたっぷりと観ることができました。

 あんまりじっくり観たせいで、目がつかれてしまいました。

 帰りは日本橋三越を冷やかし、ぶらぶらと日本橋人形町へ出て、甘酒横丁などを散策し、都営新宿線の浜町駅から帰路につきました。

 これだけ観られて千円は安いと思います。

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着物

2012年01月10日 | 美術

 正月2日に実家で新年会を開いた折、母親から冬の着物一式をプレゼントされました。

 着物なんて着ていく所もないのですが、時折能見物や歌舞伎見物に出かけますので、その際着ようかと思っています。
 まだ一度も手をとおしておらず、どんなものかなとは思いますが、私は外人離れした顔をしていますので、似合うんじゃないかと思います。

 それにしても、女性の晴れ着というのは、派手なような渋いような、世界で最も美しいファッションでしょうねぇ。


 
着物はファッションでありながらそれを芸術にまで高めた、幻想美を身にまとう強力な衣装です。

 このようなファッションは世界に例がありません。



 でも古い着物を着た少女というのはなんとなく不気味ですね。



 顔を隠していると、よけい不気味です。

 しかし幻想美とは本来不気味なもの。

 時として、着物を身にまとった美しい女性がこの世ならぬ妖しい存在に見えてしまうのは、着物が持つ凶暴なまでの美しさを考えれば、当然かもしれません。

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根付

2012年01月04日 | 美術

 根付が海外の古美術愛好家の間で流行っているそうですね。
 なかにはオークションで3千万円以上もの値がつくこともあるとか。



 印籠の先に付いている小さなウサギの柄が入ったものが根付です。

 今で言えば、携帯ストラップとかキイ・ホルダーみたいなものでしょうか。
 小さな物に手の込んだ細工をする日本人らしい一品です。
 
 根付の実例をいくつか。



 





 どれも遊び心に溢れています。

 今、世界でも携帯ストラップの種類の豊富さ、細工の丁寧さはわが国が一番だと聞きました。
 メールに使う絵文字や、デコレーション・メールなどもわが国独特の風習だそうです。

 道具を擬人化して可愛がるのは、わが国においては何も子どもに限ったことではありません。

 大の大人が、お気に入りの道具や車に愛称をつけて可愛がり、悦に入っている姿はあまり見栄えの良いものではありませんが、微笑ましくもあります。

 根付どころか、米粒に絵を描く人とか、米粒で仏像を造る人までいるというから驚きです。
 
 私は手先が不器用なのでそんなことができる人が羨ましいですねぇ。

 米粒に絵を描いてみたいものです。

根付 (NHK美の壺)
NHK「美の壺」制作班
日本放送出版協会
根付讃歌―根付ハンドブック
日本根付研究会
里文出版

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