初夏の陽気に恵まれながらも、屈託を抱えた私は、それをしばし吹き飛ばすため、散歩に出かけました。
どこへ行こうかと考え、なぜか、東京藝術大学が頭に浮かびました。
なぜでしょうか。
行ってみれば分かること。
私は不思議な予感を感じつつ、都営大江戸線の上野御徒町駅で降りて、上野公園を突っ切り、東京藝術大学にたどり着きました。
東京藝術大学の売店で、なぜ私がここを目指したのかが、判明しました。
あまりにも美しい半月の絵が、売られていたのです。
描いたのは東京藝術大学OBの山岡忠曠という若い絵描き。
1985年生まれと言いますから、やっと30歳。
まだこれからの人です。
こういう経験は三度目で、一人はギュスターブ・モロー、もう一人はやなぎみわです。
ギュスターブ・モローはとうの昔に亡くなっているので新作を楽しむことはできません。
しかし、やなぎみわと山岡忠曠はこれから制作されるであろう美術を待つ楽しみがあります。
で、その絵、5万円ちょっとで売っていたのですが、とりあえずボーナスが出るまで待とうと思い、今日は購入を断念しました。
それほど小さな絵ではなかったので、車で来たほうが良かろうという気持ちもありました。
その後少々興奮気味にお寺だらけの谷中から根津のあたりをぶらついて、帰宅の途につきました。
小説家にしても絵描きにしても音楽家にしても、一瞬にして気に入るということが、ごくまれにありますね。
屈託を抱えていたはずが、そんな僥倖に恵まれた、幸せな一日となりました。
最新の画像[もっと見る]