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ステージおきたま

無農薬百姓33年
舞台作り続けて22年
がむしゃら走り6年
コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

山椒大夫で書こう!

2019-02-16 09:38:08 | 菜の花座

 いくらなんだって、もう書き始めなくっちゃ!またまた、台本遅れで稽古開始1週間押し!?なんて許されない。稽古時間の不足を理由に、この締め切り日を選んだんだもの、書けよ、書き上げろよ。

 いつもの通り、ひらめきは突如降臨した。山椒大夫だ。

 このお話し、引っ掛かる。どこか変だ。舟で連れ去られたお付きの女房が辱めを嫌って入水、てのはまっ、ご主人ほっておいて自分だけ死んでいいんかい?って不満はあっても、まっ、身売りされ苦界に沈むよりは海の底、って憔悴した思いってことで我慢しよう。せっかく搔っ攫った奥方様、逃げないように足の腱切っちまうって、そんなぁ、役にたたんじゃない、バカな人攫いめ。

 一方、安寿と厨子王だ。この二人、まるで役に立たない。15歳と13歳だぜ。いっくらいいとこのお嬢ちゃん、お坊ちゃんで暮らしてきたからって、潮汲みとか柴集めくらいできるだろ。いや、生き延びるためだ、そのくらい頑張れよ。最初から、僕、無理!あたい、できないもん!って投げちまうって、こんな軟弱な少年少女にどうして同情できるって言うんだよ。ところが、通りがかりの住人は可哀そ!ってんで、代わりに柴刈ってやったり潮汲み手伝ったりするんだぜ、信じられん。

 それ知った悪漢山椒大夫、これがまたヒステリージジイのとんちきで、罰としてさらにその3倍もの量のノルマを押っ付けるんだ。銭2貫と半も出して買い取った若いだ、もったいないって思わんのかねぇ。上手に慣らしていきゃ、末永くいい労働力になろうってもんじゃないか。安寿なんて、素晴らしい美人だってさ、なんでその美貌や体で稼がせようとしないのかねぇ。人買いのベテランだったら、そのくらい悪知恵以前の人身売買ノウハウだと思うけど。

 挙句、厨子王にゃ逃げられるし、安寿は手引きしたろって責めて虐殺しちまう。もう、何か、理性的判断を見失わせる隠れた怨念みたいなもんでもあるんじゃないか?この姉弟に対して、許せぬ事情でもあるのか?それとも、いじめが目的で買い取ったとでも言うのか?わからん。

 しかもだ。この無能で大して知恵もない安寿と厨子王には、神様のご加護がどこまでも付いて回るんだよ。二人の頬に押し付けられた焼き鏝の印は、地蔵さんが消し去ってくれる。厨子王が逃げ込んだ寺は、厨子王の守り神毘沙門天を祀ってあって、坊さんは命がけで厨子王を皮籠の中に匿うんだ。一旦は追手に見つかるんだが、その籠を開けてみれば、地蔵菩薩が光輝いていて、見つからず。坊さんは皮籠に入れた厨子王を背負って京まで送る。京に放り出された厨子王、阿闍梨大師に拾われ、観音様の夢のお告げを受けた梅津の院の養子になる。

 磨き上げたら、高貴の若者に生まれ変わり、身に付けていた家系図の巻物から、岩城の国主の息子だってことがわかり、トントンと出世する。かぁぁぁっ、まいるね!あるのは家柄だけだぜ。勇気があるわけじゃなし、知恵に優れるれるわけじゃなし、人に優しくするでなし、信心深いわけでもなし、だだ、持ち駒としちゃ、高貴の身分!家柄!!それだけ。なのに神様、仏様まで見方についてどこまでも守ってくれる。

 一方、いじめの張本人山椒大夫は、国司となって赴任した厨子王に、獄門、鋸引きの刑を言い渡され、それを実行するのは、息子の三郎、七日七晩かけて父親の生首を引き切った。

 どうよ?この違い。ひどくねえか?あまりの不公平、不条理。身分一つでこうも人生、分け隔てがあっていいものか?たしかに、大夫も息子も冷酷で非道だしアホだが、それだって、姉弟のあまりの能天気ぶりに苛立ったのかもしれんじゃないか。なにもできないくせに、お高くとまって上から目線の奴、気に入らんだろ。

 ここは一つ、大夫と三郎の弁護を引き受けてやってもいいんじゃないか?

 そう、それがこれから書こうとしている台本の筋立てだ。思いっ切りひねくれてる。十分に知れ渡ったお話し、人々の心の中に善悪固定してしまわれてる昔話。手強いぞ。でも、なんか、こういう、身分の高い人間は何をやってもやらなくても偉いってって社会通念、これ、ほんと腹が立つんだよな。

コメント
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