ステージおきたま

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えっ?!そこで笑い???シニア5期生公演『生前葬につき』

2016-11-25 09:09:57 | シニア演劇

 笑いはいい。観客の笑いは役者を元気にしてくれる。これでいいんだ、と自信が湧く。もっと行くぞと勢いがつく。客席の方も和やかなムードに包まれる。舞台との一体感が生まれて幸せになる。だから、笑いを待ち受ける。随所にばらまいた笑いの撒きびし、踏め踏んでくれ、と願いを込めて舞台を見つめる。

 今回の舞台、滑り出しはひやっと冷たかった。そりゃそうだ。葬式シーンで始まり、突如としてよさこいソーラン!なんだ?この芝居どうなってんだ?笑いどころじゃない。突拍子もない展開を追いかけるのに精いっぱい。かと思えば、葬儀や生前葬についての議論のあれこれ、なーるほど、とは感じても笑ってる場合じゃない。役者の方も固い。コミカルな演技なのか、上がっているのか判断に迷う中途半端。

 それが、白浪3人銀之助で一気に戸惑いの幕が切って落とされた。そう、実際に定式幕をスパッと落とした。現れたのは3人の白浪銀之助。

 白浪5人男の衣装とセリフ回しで主人公根来銀之助の来し方を語る。1人目ではこれまた呆気に取られていた観客、二人目の銀之助になって、声がかかり拍手が沸いた。そうか、こういう、おふざけなんでもありの芝居なんだ!って気づいたのだと思う。そこからは、お客さんの心も意識もほぐれた。休憩後、の再開にはちょっと工夫。テレビ同様、先に終わったシーンを繰り返してから始めて、これが大受け。そこからはほぼ笑いの波状攻撃。役者も気を良くしてのりにのって最後まで突っ走れた。笑いの力だな。

 今回の笑いには、セリフや仕草が可笑しさで取った笑いもあったが、舞台の役者たちを日常で知ってるが故の笑いも少なくなかった。見知った者が演じていれば、それだけで親近感湧き、おのずと頬も緩むというもの。そんなご贔屓さん、親衛隊を100人近くも引き付けての舞台上だ、ライト振る代わりに笑ってくれるわけだから、これは強い。拙い演技でも意図を察して笑い、とちってつまれば、頑張れと笑いで声援する。こんな心強い応援団の盛り上げもあって、役者はいつものレベを越えて演じ切った。そう、ちょっとやり過ぎ?って感もなきにしもあらずなほどに。

 でも、こういう身内の笑いは、思ってもみない効果を引き起こした。かつての恋人の娘との誤解が溶けて、車椅子の銀之助と娘が踊る場面、これは、ジーンとくる感動シーンになるはずだったのだが、なんと大きな笑いに包まれてしまった。娘役が地域の人気者だったこととか、背の高い女性だったこと、それまでで、笑いのセンサーが全開状態になっていたからだと思う。予期せぬわらいだった。あるいは、車いすで踊るってことが、滑稽感を生み出したのか?しかも、このダンス、音響機器の不具合で短い時間で切れてしまったからなおさら、心を動かすまでに至らなかった。演出としても残念だったが、踊った当人がとてもがっかりしていた。

 どうも、歳をとると笑いのスイッチが入りやすくなるようなのも、ちょっと困ったものだ。もう少し、セリフや演技の意味を笑い以外の感性スイッチで見てもらえたらなぁ、なんてことも思った。笑ってもらって不満言って悪いんだけど。

 あるいは、こちら側にシーンのコミカル要素を見切る力が欠けていたのかもしれない。笑いに助けられ、笑いに翻弄され、それでも、笑いで終われて、やっぱり良かったなぁ。

コメント
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