ステージおきたま

無農薬百姓33年
舞台作り続けて22年
がむしゃら走り6年
コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

今夜も壊し屋:菜の花プラザシニア団『クロスロード』稽古

2016-06-17 08:32:53 | シニア演劇

 「ダメ!」「もう一度!」、たった2つ3つのセリフにどこまでも続くダメ出し。役者の顔が、惑い、悩みから苛立ちに変わっていく。「どうしろって言うんだ!」ありありと不満が見て取れる。言い返したい言葉をぐっと飲みこんでいるのがわかる。それでも、非常に「やり直し!」

 これまでシニアの芝居じゃ、まっ、あんまり難しいこと言わないで、楽しくやりましょ、って気持ちが強かった。60過ぎて舞台の魅力に取りつかれた人たち、やり遂げようってだけだって、大したもんじゃないか。それに、体はもちろん、頭だって固まってるしね、今さら揉みほぐすなんて、無理!なんて、ごめん!どこかで見切りつけてた。

 でも、菜の花プラザシニア団の公演も3回目だよ、そうそういつまでも、間違いもご愛敬のシニア売りで通すわけにゃいかんだろ。見に来てくれる人たちだって、なんだ、いつまでも下手だなぁ、そんなもんかシニア演劇は、自己満足に付き合ってらんねえよ、なんて愛想尽かししかねない。おっ、上手くなったじゃないか!とか、年寄も進化するんだぁ!年々面白くなるなぁ!って見る人感心させちたいじゃないか、観客引っ張り込みたいじゃないか。

 演出する僕の方も、そんななあなあ気分に我慢ならなくなってもきている。2回に1回は耳を塞いで通過していたアクセント、イントネーションの間違いも耳障りで仕方なくなってきたし、その人特有の節回しにも、いつもその調子かい?って苛立つようになってきた。対話になっていない話し方、普段の人柄が滲み出過ぎる発声、変にうねるようなセリフ回し、抑揚の乏しいボソボソ声、気になりだしたら我慢ならなくなってきた。

 役者だろ?いろんな役になり切らなくっちゃ。別の人生生きるために芝居やるんだろ、自分を捨てろよ、思い切り飛び込まなくちゃ。持ち味は持ち味でいい。でも、それだけに頼ってたら、どの役もみんな同じ顔になっちまう。今回の台本は、これまでの当て書きからははみ出してる。キャバレーのホステスとか、詐欺師とか、腹黒かったり、怒りを心に秘めていたり、一筋縄にはいかない設定が多い。大部分の人は、1人2役以上をこなす。主役は75歳から15歳までを1人で演じる、高い壁が設定されている。

 誰だって、ダメ!ダメ!攻め続けられれば、いい加減うんざりきて、終いには腹も立つことだろう。自分なりに自信をもってる役者はなおのことだ。たしかに、はまれば上手い、いい味出す。でも、そこから離れたらお手上げなんだ。いや、お手上げしない、降参しないから困る。自己流に縋りついて、その場を切り抜けられると思っている。この思い込みが変わることを妨げる。新しい演技術を遠ざける。

 ワンパターンを壊す仕事は、かなりの荒療治だ。自信や矜持を粉砕する作業なんたから。ある意味、アイデンティティの否定でもある。不快感はたまりにたまっていくことだろう。凝り固まった年寄りには過ぎた要求なのかもしれない。

 でも、変われない、変わらなくていい、と立ち止まってしまえば、そここそが老いの終着点なんだと思う。自分は変われる、もっと上手くなれる、もっと違う人生を生きることができる、その思いをいつまでもがしっと握りしめていてほしい。そのために、非情に破壊し続ける、ダメ出しを続ける、それが共に舞台を作る者への愛情なんだと思う。

コメント
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