ステージおきたま

無農薬百姓33年
舞台作り続けて22年
がむしゃら走り6年
コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

呆け爺さんが当たり役

2016-06-26 08:47:13 | コント

 菜の花座の役者には、これ演じたら絶対受ける!〇〇と言ったらこの役!そんな当たり役を持って欲しいと願っている。お客さんも心待ちにして、その役柄で登場すれば拍手喝采、なんてはまり役をだ。

 役者の個性の乏しさか、作者の力量不足か、菜の花座ではこれまで、そんな大人気のキャラクターが生まれていない。唯一の例外は、ナオミの婆ちゃん、これは、数々のコント作品で登場し、大いに笑いを取り、お客さんからは、あんた本当は若いんだ!なんて、婆ちゃん役者として不動の地位を確保している。当人は大いに不満でもあるようだが。

 ナオミ婆に迫るのは誰か、と思っていたら、現れたねぇ、今度はジジイだ。それも呆け爺さん役。演じるのは菜の花座代表のユウタロウさん。5月から始まった認知症サポート講座コントで、認知症の爺さんを演じ、小学生にまで大受けしている。自分の娘を忘れる、言われたことを取り違える、すぐに食べたがる、トイレの場所を間違える、そして、ついには徘徊!する。認知症の特徴的な症状を手際よく紹介するコントだ。婆さんと娘が絡んで話は展開するが、ほとんど爺さんの独壇場だ。

 この役、実はコントが初発ではなく、昨年の舞台『不幸せくらべ』に登場する爺ちゃんが元ネタになっている。この芝居では、不幸せをひけらかすために、呆け老人に成りすますという設定だったが、これが実に面白かった。随所で笑いを巻き起こし、爆笑コメディの一角をしっかりと担ってくれた。

 正直に言って、役者としてのユウタロウさんは、上手くない。どんな役を演じても、みんな同じになる。せっかちな性格がそのまま出て、セリフはつんのめりがちで、落ち着いた役どころとか大物とかしっとりしたシーンなどは大の苦手だ。かと言って、コミカルに徹しきることもできず、これまではそこそこの脇役として舞台の一隅をふさいできた。

 ところが。今回のコントで完全に吹っ切れた。呆け老人役を恥ずかしいと思うこともなく、照れることもなく、嬉々として演じている。自信に満ち溢れている。これまで3回の公演で自身のはまり役を確信したのだろう。先日の吉島小学校の公演は殊のほか手ごたえ十分だったようで、とくとくとして、その成果を報告し、地域で出前コントを上演することの大切さを熱く語っていた。この調子で残り10数回の公演を重ねれば、呆け老人役者=ユウタロウ、の名声は町中に行きわたることだろう。道で出会った子どもたちに、あっ、呆け爺さん!っと指さされるかもしれない。まっ、サインをねだられることはないにしても、握手くらいは求められるかもしれない。他のメンバーに、この爺さん役の代役を勧めているのだが、とても敵わないと、二の足、三の足を踏んでいる。

 当たり役から得た自信と演技でさらに別の役も大いに開花させてもらいたいものだが、あるいは、固まってしまうかもしれない。まっ、それもいいだろう。藤山寛美だって、アホ役で一生演じ通したわけだから、徹すれば高みに到達できるだろう。おっと、寛美と比べるのは、あまりに無謀ってもんだった。

 

コメント
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