ステージおきたま

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コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

役者がミュージシャン!って芝居を作りたいと思っていた。

2016-06-11 09:00:25 | シニア演劇

 菜の花プラザシニア団の次回公演『クロスロード・人生の岐路』のチラシが上がった。

 今回の絵柄はずいぶん写実的だ。ギターを肩にかけたおっさんがクロスロードに背を向けて佇み、分かれ道には、粋な装いの皺くちゃ婆さんが歩き出している。おっさんはカッコよすぎ、婆さんは皺皺で可哀想、というのが劇団内でのもっぱらの評判だ。まっ、たしかに男の方は、出てくるシーンすべてで男の哀愁を漂わせる役どころなのだし、何より、ミュージシャンという設定が、そこはかとなく憧れを誘う。いやぁ、楽器できるって得だよな、って演ずる役者にも言ったら、へへへっへと、笑いやがった。

 音楽が物語を引っ張る作品、ずっと書いてみたいと思っていた。ミュージカルのように歌と踊りで転がしていくということてではなくて、音楽とダンスそのものがキーワードとなる物語だ。生音を使って舞台を仕上げるてのも、前々からやりたいと思っていたことだ。こまつ座の後期の作品では、ピアニストが常に舞台の片隅にいて効果的な演奏で劇全体を盛り上げていた。そうそう、『組曲虐殺』じゃぁ、小曾根真が舞台中央奥上に陣取って圧倒的な演奏聞かせていたっけ。ああいう、演技に寄り添う形、舞台を支える形も悪くないが、もっともっと魅力的なのは演じる役者が演奏者でもあるって形だ。『上海バンスキング』!あんなのがやってみたい!

 憧れがあらぬ彼方に噴出して、『面影チャンチキ』なんてチンドン屋を主役にした芝居を作ったこともあった。恥ずかしながらこの舞台では、僕もチンドン屋の一員としてサックスを吹いたりもした。若手女優に無理やりクラリネット稽古させたりもした。でも、所詮、ど素人の悪あがき、演奏としてはものにはならなかったなぁ。作品は、山形県芸術祭奨励賞もらったことはもらったんだけど、音楽で物語を作るというレベルには足元にも及ばなかった。

 今回、シニア4期生から目出度く菜の花座昇格を果たしたHさん、彼は、なんとサックスが吹けるんだ。素人には違いないが、芝居の中で観客に聞いてもらうには、十分すぎる実力の持ち主だ。シニア4期生公演『シェアハウス ブルース』を見た人なら、クライマックスでの「レフト アローン」のしみじみとしたサックスソロを思い出せることだろう。そのHさんの菜の花座デビュー、これはどうしたって、ミュージシャン出さない手はないよ。役は二つ、どちらもミュージシャンだ。一つは、キャバレー付きのビッグバンドのバンマス、と言っても、すでに生演奏のキャバレーの時代は去っていて、たった一人残ったバンドマン。それも、ついに首を言い渡されるその日、っていう設定だ。どうだ?かなり哀愁ただようだろう。

 もう一つの役は、米軍キャンプ出入りのギターリスト。朝鮮戦争が終結したころのお話しだ。朝鮮への出撃基地となっていた日本中の米軍基地には若いアメリカ兵がたくさん配属されていて、そこでは毎晩?本国の音楽で踊りあかす若者たちの姿があった。彼らにご機嫌な音楽を提供していたのが、日本のミュージシャンたち。でも、動乱が終わるとともに、米兵も減少し、多くのミュージシャンが職を失った。彼らの多くは、その後の日本のポップスシーンを引っ張ったり、ジャズ文化を根付かせたりしていくのだが、中には、実力も機転も乏しく、音楽で立つことを諦めた者たちも数多くいた、はずだ。そんなうら寂しいギターリスト、それがもう一つの役ということになる。

 なに?わびしいだけだろ、て?そうなぁ、たしかにみんな敗残者、落魄れ者だ。でも、夢破れ、追われゆく者の後ろ姿にどうしようもなく愛着をいだいてしまうんだなぁ。で、そんな男に女も惹かれる、って思いたい。なっ、カッコいいだろ。だから、チラシデザインしたあすむ君もこんな風にカッコよく決めてくれたわけなんだよ。役者知らないから仕方ない、なんてことは言ってはいけない。でも、精一杯、男の悲哀を漂わせてもらいたいと思っている。もちろん、サックスもギターの演奏も盛りだくさんだ。いいよなぁ、楽器できるって!

 もう一人クロスロードを別にたどる皺くちゃ婆さんの方は、・・・・長くなりすぎたので、この次の機会に種明かししよう。ごめん、こっちが主役なんだけどね。

 

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