畑に取り残した白菜、ぐんぐん生がっている。毎朝、味噌汁の実は白菜の菜の花。最初はそっと色を添える程度だったものが、今じゃ椀から溢れんばかり、菜っ葉の煮ものの如き様相を呈している。もちろん、夜は湯豆腐で豆腐と張り合ったり、炒め物ででかい顔したりして、春の幸を無駄にせぬよう頑張っちゃいるが、なんせ、追いつかない。塩漬けにもしてみたけど、果たしてお味の方はどうだろ?
ぐいぐいと生長するのは、花やその周囲の若葉だけじゃない。それを囲む冬を耐え忍んだ葉っぱたちもまた、はばはばと緑を広げている。放っておけば、座布団くらいには肥え広がる。新鮮な緑、残念ながら人間が食うには固すぎる。このままトラクターですき込む、そんなことはしない。そのために家畜がいるわけじゃないか。って言ってもお隣さんだ。
春先、子ヤギが生まれた。それも2頭!そうだ、彼らにやればいいんだ。早速、5.6株、根本から切り取って、持って行った。おお、いるいる!いやぁ、めんごいもんだなぁ。
もうずいぶん大きくなって、母ヤギにじゃれつきながら飛び回っている。
母親の方は、白菜を見つけたようで、エサやり口から首を伸ばせるだけ伸ばして、早く寄越せと矢の催促だ。わかった、わかった。今、やっから。夢中で食らいつく母ヤギ。子ヤギなど入り込む余地まるでなし。そうだよな、冬の間、藁や干し草だけだったものな、そりゃ、新鮮な緑が欲しかったろう。
奥を覗くと、父親が暴れまくっている。どうしてそっちだけやるんだ、こっちにも寄越せ!よしよし、おまえにもやるからな。大きな株を選んで放り込む。ものすごい勢いで食らいつく。冬の間しばらく見ぬ間に大きくなって、子供たちなら威圧感を感じるほどに立派になっている。そうさなぁ、父親だもんな。
よし、わかった。これから毎日、届けてやるよ。あと1週間くらいは続くだろう。その頃にゃ、雑草も伸びてきて、畑や庭でたらふく食えるようになるだろう。畑の方もきれいになって、堆肥も撒ける、耕耘もできる。無駄も出ない。家畜がいることで、エコサイクルも回っていくってことだ。おっと、なのに、家畜の世話は他人任せ、偉そうなことは言えないよな。