「概要」
(BOOK asai.com 末国善己氏 より)
天正18(1590)年、徳川家康は、豊臣秀吉から関東八か国への移封を打診される。
そこは240万石の広大な領土ながら、低湿地が多く、使える土地は少なかった。
家臣団は猛反対するが、家康は居城を江戸に決め、町造りに着手する。
………(家康の内政能力とその実行力と、家康に抜擢されそれに応えて)………江戸を大都市に変えた技術官僚に着目した連作集である。
湿地対策のため、利根川の流れを変える大工事を行う伊奈忠次を主人公にした「第一話 流れを変える」。 神田上水の建設に尽力した大久保藤五郎と内田六次郎を描く「第三節 飲み水を引く」は当時の土木工事を迫力一杯に活写した技術小説になっている。
秀吉の下で大判をつくる後藤家に雇われていた庄三郎が、自分を認めてくれた家康のため、新通貨の小判を武器に通貨戦争を仕掛ける「第二話 金貨を延べる」は、経済小説としても秀逸である。
(その他に、江戸城石垣の造成競争ー第四話 石垣を積むー、大阪城の天守閣が黒壁なのに対して江戸城はなぜ白壁かというー最終章 天守を起こすー が記述されている)
著者は、敵を倒す武将ではなく、無名でも能力があれば家臣を抜擢した家康の内政能力に着目している。
主君の期待に応えようとする主人公たちも、常識にとらわれない発想で難事業に取り組み、未来を切り開くベンチャー精神を持っているのだ。
逆境に負けず挑戦を続けた家康とその家臣の物語は、閉塞感に苦しむ現代人の希望である。
「第一節 流れを変える」のあらすじに続く
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