「あらすじ」
半沢直樹が部下の人に述べた自分の「生き様・信念」の部分に下線を入れました。
(第1章「椅子取りゲーム」)
(1) 電脳雑技集団から企業買収アドバイザーの依頼が東京セントラル証券に持ち込まれた。
2004年10月のとある月曜、東京中央銀行の系列子会社東京セントラル証券の営業企画部長として、2か月前に出向した半沢直樹(以下、半沢と略)は、電脳雑技集団(以下、電脳と略)の平山社長と妻の副社長の訪問を受ける。
電脳は平山社長が35歳の時に総合商社を辞して創業したITベンチャー企業で、どちらかといえば商品はハードよりで、インターネット関連ソフトに強い同格の東京スパイラルを買収したいのでアドバイザーになっていただきたいという用件だった。証券側の関係者は内心えっと驚いた。
電脳のメーンバンクは東京中央銀行だが、東京セントラル証券との取引実績は今までにこれといったものは無く、担当の森山調査役も、日頃は電脳の担当に門前払いを食わされている実態だった。
東京セントラル証券も業歴は浅く、今まで扱ってきた大口の案件はすべて親会社の銀行から回されたものばかりで、企業買収の実績はあまり無く、まして、敵対的買収は荷が重く、アドバイザーとしてのノウハウが十分あるわけでなく、半沢は、正直、心許なかった。
半沢は、平山社長の話にも疑念を持ち、諸田次長(以下、諸田と略)におそらく敵対的買収になるが、ノウハウはあるのかと心配するが、諸田は、この案件で会社を飛躍させる素晴らしい取引になること間違いないと乗り気になって話を勧めようとする。プロパー社員の森山調査役(以下、森山と略)は、上手くいきますかねと心配する。
(2) 何故か、担当の森山は、諸田の意向でアドバイザーチームから外される。
翌日、夕方からミーチングに入る。森山は資金面や自社の体力面から心配するが、諸田は精神論から引き受けることを前提に話を進め、我が社がアドバイザーに就くうえで障害になる事実はあるのかと議論は平行線をたどり、最後に、引き受ける方向で返答をしたいと、半沢の了承を求める諸田に、半沢は、条件面を十分詰めたうえで、至急、進めてほしいと了解した。
銀行至上主義の諸田は、森山の意向など忖度せず、通常業務でないことを理由に、森山を外してアドバイザーチームを編成する。チームリーダーに任命したのは、諸田と入行同期で銀行時代は情報開発部にいて企業買収の経験は全くなく、今は森山と同じ調査役で諸田の腹心になっていた三木重行を当てた。
東京セントラル証券は社歴の浅いこともあって、プロパーの役員は存在せず、主要ポストは銀行からの出向者が占めているのが実態であって、業務成績の良い森山も、今年、調査役に昇進したばかりである。
(3・4) 企業買収業務に疎いせいで、罰則契約が無くてあっさり契約を解約された。
東京セントラル証券社長の岡は、東京中央銀行の専務から出世競争に敗れ、現職に就いたのは一年前で、口癖は「銀行に負けるな」であった。
アドバイザー契約の事前報告に、岡社長は半沢の話を聞いて、事前に諸田の提案を受け入れて自分の意向とした手数料収入が高い成功報酬(失敗したら全くの無報酬)で行くことに機嫌は上々だった。
それから一週間ほどしても具体的なスキーム(手順付き計画)が諸田からも半沢の許に出てこなかった。半沢が三木から検討経過を聞くと、買収路線を既定方針として検討されていたので、買収案件の是非について掘り下げるところから始めろと、やり直しを命じた。
そのためもあって提案は遅れに遅れ提案書を平山社長の処に持ち込んだのは二週間も過ぎていた。その間、三木は先方に一度もコンタクトを取っていなかった。平山社長から、その遅さに見切りをつけられ、先日のアドバイザー契約は無かったことにさせてくださいと言って応接室を出て行った。
契約書には、成功報酬といえ中途解約の罰則規定も入れていなかった。半沢は呆れながらも、岡社長に報告すると、提案書のやり直しを命じたらしいな、君に、この責任は取ってもらうぞと言われた。
半沢は、やり直しを命じたことを岡社長が知っているのは、諸田が上申したのだろうと思ったが、口には出さなかった。
諸田が辞去した後、渡真利から電話があり、証券営業部が電脳とアドバイザー契約を結ぼうとしているらしいと告げられた。
東京セントラル証券が、電脳から受けた案件の提案書を検討していたときには、既に、その裏では、親会社である東京中央銀行の証券営業部が暗躍していたのだ。何者かによって電脳の買収案件を聞きつけた東京中央銀行は密かにメーンバンクの地位をちらつかせ、東京セントラル証券からアドバイザーの役割を取り上げたのだ。
(5) 半沢は内心、諸田が銀行に戻りたいために、リークしたと確信していた。
半沢は関係者を集めて誰がリークしたのか詰めたが、その場では明らかにできなかった。
席上、怒りに震える半沢は東京中央銀行への報復を誓って、「この借りは必ず返す。やられたら、倍返しだ。」と言った。
(第2章「奇襲攻撃」)
(1) 不思議なことに、三木に銀行に戻る辞令が出た。
そんな中、三木が東京中央銀行の証券営業部に調査役として戻ることになった。栄転ともみられたが、実態は、総務グループの中の閑職に回されていた。
(2) 電脳と東京中央銀行の企業買収アドバイザー契約が決裁された。
東京中央銀行の証券営業部長の伊佐山と次長の野崎が、電脳に平山夫妻を訪ねていた。
昨年、東京中央銀行は、電脳が中国に進出するための運転資金を支援していた。
伊佐山の指示で、野崎が、東京スパイラル買収スキームの第一段階だと言って、先ず、700億円をかけ、東京スパイラル発行株式の約30%弱を市場外取引で取得すると概要を説明した。
これに先立って、伊佐山は電脳の中国進出資金の支援実績、今後の運転資金の支援をちらつかせて東京セントラル証券との契約解除を迫っていたのである。
平山社長は、半沢さんから、銀行からの圧力がかかったのではないかと文句を言ってきたが否定しておいたと言い、伊佐山からの当行との決裁は何時になるのかの問いに、今、この場で決裁させてもらうと言う。
(3・4) 電脳が市場外取引で東京スパイラルの株式の30%を買い占めたと渡真利から電話。
「電脳に対する買収支援が承認されたらしい。1500億円だ。三笠副頭取と証券営業部に一任で承認されたらしい。そして明日、銀行内で証券営業部が記者会見するとのことだ。」と渡真利から半沢に電話があった。
しかし、翌日、東京スパイラルの株価の動きは無かった。
渡真利から半沢に、さきほど会見で東京スパイラル株の3割弱を市場外取引で買い占めたと発表があった。今後は公開買い付けとのことだとの連絡が入った。
(第3章「ホワイトナイト」)
(1) 東京スパイラルの瀬名社長は買収防衛策を取ると発表、大洋証券が支援にすり寄る。
ニュースによると、東京スパイラルの瀬名社長が記者会見を開き、買収には断固として対抗措置を取るという強い調子でコメントを発表したと報じていた。
瀬名社長は、創業メンバーで極端な拡大路線を主張する財務担当の清田と戦略担当の加納と経営方針を巡って対立し、先月袂を分かったばかりであった。市場外取引の対象となった株はこの二人のものだった。
そのようなときに、瀬名社長に秘書が大洋証券の担当者の二村の来訪を告げた。大洋証券は清田が紹介した会社だった。
瀬名社長に、買収対抗策をお持ちでないなら、アドバイザーにしてもらえないかとすり寄ってきた。瀬名は明日までに提案してくれと言う。
(2・3) 半沢は瀬名が中高時代の親友だったと言う森山に、ぜひ近況を知らせろと言う。
半沢は部下の森山と尾西を誘って飲みに行き、話は東京スパイラルの敵対的買収のことになり、半沢から、東京スパイラルの付合い証券は中堅の大洋証券だったと思うが、買収に関するノウハウが豊富とは言いかねるが、一方の東京中央銀行の野崎次長は、ロンドンで企業買収を手掛けたことがあって、その分野では国内屈指のバンカーだと話す。
そんな話から、瀬名社長は森山の中高時代の親友だったが、途中転向したので音信不通になっていたことを半沢は知り、森山に、ぜひ、余計な人を考えずに、旧友として近況を知らせてやれ、多分、喜ぶぞと言う。
(4) 瀬名は大洋証券の提案に即答を避ける。その後の森山の電話にあだ名で会話。
大洋証券の二村が上司の営業部長の広重多加夫を連れて約束の翌日夕方、瀬名社長を訪ねた。
ペラ一枚の提案書を差し出して、電脳側の買収に対してどんな条件であれ防衛すると言うことで、防衛策を提案させていただいたと言う。
決して過半数が取れないだけの株式を新たに発行し、その新株発行分を特定の会社に引き受けてもらうのです。 いわゆる、ホワイトナイトを引受先として提案させていただきますと言う。そして、提案書にはホワイトナイト名の部分は空白にしてあった。 アドバイザー契約をいただければと契約書を見せて、契約金3000万円、成功報酬5億円で如何ですかと広重は説明した。
瀬名は、自分が納得するホワイトナイトが見つかれば3000万円、報酬は3億円であれば契約するが、その場合でも、貴社のアドバイス能力を信じていないので、有効なアドバイスが得られない場合は、途中で契約を破棄することもあるので罰則規定は設けないでほしいと言う。
広重は色々と言い訳したが、最後に瀬名の申し出を呑んだ。そして、ホワイトナイトはフォックスだと言う。
フォックスは、PCとその周辺機器販売大手の会社で瀬名も郷田社長は尊敬している社長だったし、二村はこのスキーム自体のデメリットもリスクもないと言うが、瀬名の経営感覚がそうさせるのか、どこか引っ掛る気がしたので、検討して返事すると即答を避けた。
広重たちが帰った直後に、森山から瀬名社長に電話がかかってきた。 瀬名の受話器の向こうから少し緊張した硬い声がした。 何秒も経たない時間のうちに、中学時代の昔が突如甦り、意識が15年前に戻った。瀬名の「マサ?」に応えて森山は「ヨースケ?」と呼んだ。
(5) 森山は瀬名のセカンドオピニオンになることを約束した。
有楽町の居酒屋で、瀬名と森山は久しぶりに酒を酌み交わし、森山が東京セントラル証券の社員であることを知り、二人は電脳と東京スパイラルの敵対的買収、最初は東京セントラル証券が電脳のアドバイザーであったこと、大洋証券が東京スパイラルのアドバイザーになりたくて、ホワイトナイトをフォックスに新株発行を提案していることなどについて話をした。
森山は種々意見を述べ、瀬名はセカンドオピニオンになってくれと言った。
(6) 半沢は入行同期の友人から新株発行も場合により商法違反になることを教わる。
半沢は、入行同期で長く据え置かれていた関西法務部から本部に転勤になった苅田の歓迎会の席上、買収防衛策で新株発行して信用できる第三者に株を持ってもらうことは商法違反になることがあることを教えてもらった。
続く