スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

マイナビ女子オープン&憎しみの紐帯

2021-06-02 19:24:41 | 将棋
 昨日の第14期マイナビ女子オープン五番勝負第五局。
 振駒で西山朋佳女王の先手となりいきなり三間飛車。後手の伊藤沙恵女流三段は銀冠から穴熊へ。伊藤三段は対抗形をあまり好まない印象でしたので,最終局でこの戦型選択は意外でした。石田流に組んだ先手から仕掛けていく将棋に。
                                       
 第1図から先手は☗6五桂と跳ねていきました。取られそうな駒とはいえただのところに跳ねていくのですから意表の一手といえそうです。
 後手は☖5六歩と突き出しましたが,結果的にこの手は甘く,敗着となりました。注文に乗るようでも☖同歩と取って勝負しなければいけなかったことになります。
 実戦は☗5三桂成☖同金とさらにこの桂馬を使われて☗4一と。☖同銀☗同龍で先手はすぐに駒損を回復。☖5二銀☗3一龍と進みました。
                                       
 第2図以降は後手がほぼ防戦一方。6六の角もうまく使った先手が押し切りました。
 3勝2敗で西山女王の防衛第11期,12期,13期に続く四連覇で4期目の女王です。

 これと同じようなことは,地球の温暖化の防止を阻止することを希求する人びとや,新型コロナウイルスが蔓延することや自身がそれに感染するリスクを高めることを希求する人びとの間にも,成立するのです。たとえば地球の温暖化の防止を阻止する行動が自身の不利益になるために,そのことに悲しみtristitiaを感じる人は,第三部定理二八により,地球の温暖化の観念ideaそれ自体を否定するnegare意志作用volitioをもつような傾向がありますconari。他面からいえば,地球の温暖化が進行しているということ自体がフェイクであるという観念を肯定しようとします。同様に,新型コロナウイルスが蔓延する行動に悲しみを感じる人は,新型コロナウイスるの観念自体を否定しようとします。他面からいえばそれを軽く見積もるような観念,たとえば新型コロナウイルスは風邪と同じであるというような観念についてはそれを肯定しようとするのです。このために,それとは逆の主張に対しては,それ自体に悲しみを感じるようになるのです。そしてこの悲しみは,第三部諸感情の定義七により,憎しみodiumそのものだといえるでしょう。
 よってこうした人びとはそのような主張,たとえばそれを裏付けるようなデータを示す科学があるなら,そうした科学に対して憎しみを感じるようになります。あるいはそうしたデータを基に地球の温暖化なり新型コロナウイルスの危険性などを主張する科学者や知識人を憎むようになるのです。そしてこうした憎しみが,確かにある紐帯を発生させるのです。反科学とか反知性といったような主張の根本的な原因causaのひとつが,こうした憎しみによって構成されているといっても差し支えないでしょう。もちろんそれはもっと一般的なことであって,単に地球の温暖化とか新型コロナウイルスといった個別的な事情だけで説明し尽くすことができるというものではありませんが,どのような場合であっても,この種の憎しみがその根底となっているというケースは非常に多いだろうと僕は思います。
 なお紐帯を発生させるのは憎しみ,基本感情affectus primariiでいえば悲しみの一種である憎しみだけではありません。喜びlaetitiaによって発生するような紐帯も存在します。それも説明しておきましょう。
コメント
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