スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

ヒューリック杯棋聖戦&不安の功罪

2021-06-09 19:05:41 | 将棋
 6日に木更津市で指された第92期棋聖戦五番勝負第一局。対戦成績は藤井聡太棋聖が5勝,渡辺明名人が1勝。
 振駒で渡辺名人が先手となり,相掛かり。研究合戦の将棋だったと思われます。
                                        
 後手の藤井棋聖が歩を打った局面。この手で先手は研究から外れたようです。
 1時間23分考えて☗8一香成と飛車を取りました。これだと☖8九歩成はこの一手。☗7八銀と逃げても☖8八とがありますから☗7五銀☖7九とまでは必然の進行といえそうです。そこで先手は☗4五桂と跳ねました。
                                        
 後手玉へ迫りつつ先手玉の逃げ道を作る手で,いかにもうまい手にみえるのですが,☖3三桂とぶつける手があったために,結果的に敗着になってしまいました。忙しくなっているのですが,どうしても後手玉への攻めが継続できないためです。
 戻って第1図で☗8八同銀と取るのも有力で,これだと☖8二歩☗7五銀☖7六桂と進むようです。後手は8筋に歩を打って飛車が使いにくくなるのを嫌った指し手をそこまで続けていましたので,これは先手としても有力だったかもしれません。研究に穴が開いていたというより,研究から外れたところでうまく対応できなかったというのが総括になるかと思います。
 藤井棋聖が先勝。第二局は18日に指される予定です。

 不安metusという感情affectusには,確かにある種の行動を抑制するという効果があります。実際に新型コロナウイルスに対する不安から,外出を控えるというような行動をとった人は,少なからず存在したでしょうし,現在も存在しているでしょう。ただし,不安という感情にこのような効果を期待して利用するという場合には,気を付けておかなければならないことがあります。
 第三部諸感情の定義一三説明から分かるように,不安という感情は,その反対感情である希望spesという感情と表裏一体の感情です。したがって,ある人があるものに対して不安を感じているときには,同時にそのものに対する希望も感じているのです。第三部諸感情の定義一三から分かるように,不安という感情は,それを感じる人にとって,ある疑惑dubitatioを含んでいるものの観念ideaによって生じる悲しみtristitiaです。そしてそれが疑惑を含んでいる,いい換えれば不確かな事柄と表象されるがゆえに,同じものの観念によって喜びlaetitiaも感じるのです。このことは第三部諸感情の定義一二の希望もまた,ある疑惑が含まれている,すなわち不確かであると思われている観念から生じる喜びであるということと合わせて考えれば,それ自体で明らかだといえるでしょう。これは,新型コロナウイルスに感染するかもしれないという不安を感じている人は,しかしそれが不確かな事柄であるがゆえに,それに感染しないだろうという希望ももっているということですから,さほど難しく考える必要はありません。
 このとき容易に推測できるのは,不安と希望が表裏一体の感情であるがゆえに,各々の感情の強度もまた同一であろうということです。いい換えれば,ある事柄に強い不安を抱いていればいるほど,その人はそれだけ強い希望もまた有しているのであり,逆にある事柄に対する希望が大きければ大きいほど,その事柄に対する不安もまた大きくなるだろうということです。したがって,実は新型コロナウイルスに対して大きな不安をもっている人ほど,大きな希望ももっているということになりますから,いたずらに強い不安を人に対して煽ると,その反動によって,大きな希望に基づく行動がされやすくなるということが生じ得るのです。
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