スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

天龍の雑感⑩&別種の喜び

2021-06-22 18:54:07 | NOAH
 で,ジャンボ・鶴田佐藤昭雄,大仁田厚といったレスラーは,日本テレビに抱え込まれたと天龍は言っていたのですが,一方でこの頃,鶴田と天龍は日本テレビから出向してきた松根社長から,小切手をもらったことがあったと語っています。天龍は金額は明らかにしていませんし,それが日本テレビとの専属契約金であったのか,それとも功労金であったのかも覚えていないとしていますが,受け取ったのは事実だったようです。
 はっきりと断定できるわけではありませんが,前後の話からしてこれはおそらく,鶴田と天龍が全日本プロレスから離脱するのを防止する目的があったのだと思われます。タイガー・戸口が新日本プロレスで仕事をするようになったのはこれより前のことですが,この当時も新本プロレスと全日本プロレスは敵対関係にあって,外国人選手の移籍などはあったのです。そこでもし鶴田なり天龍なりが新日本プロレスに引き抜かれてしまうということがあれば,全日本プロレスにとって,あるいは日本テレビにとって大打撃なので,そういうことが生じないように前もって日本テレビが対策したということだったのではないでしょうか。おそらくこの小切手をもらったのは鶴田と天龍のふたりだけだったと思われ,天龍は実際には日本テレビからそれだけの評価を受けていたということになります。つまり鶴田だけでなく,天龍もまた日本テレビにとって全日本を去られてはならない選手だったのです。そしてそれ以外の選手はそうではなかったのですから,このふたりだけが特別な扱いを受けていたということができるでしょう。
 実際にこの種の話は新日本プロレスからあったようです。鶴田は新日本プロレスから話があったけれども移籍しなかったという主旨のことを公言していたようですし,天龍自身にも話がまったくないというわけではなかったと明かしています。
 天龍はこの頃は馬場とはウマが合ったといっていますが,それは天龍が佐藤昭雄の改革に戸惑ったからのようです。鶴田はそういうことは気にしないので,仲間ではあったけれどもよく分からない存在だと感じていたそうです。

 もう一度,第四部定理八に注目してください。そこでいわれているのは善bonumと悪malumは認識されるものであるということです。したがって,たとえふたつの事柄が両立可能であったとしても,ある人間がそれらふたつの事柄を比較検討することによって一方だけを選択するということがあるなら,それは大なる善と小なる善を比較しているか,あるいは大なる悪と小なる悪を比較していることになるのです。よって前者の場合には小なる善が大なる善を阻害する悪とみなされることになりますし,後者の場合であれば小なる悪は大なる悪を阻害する善とみなされていることになるのです。ですから,給付金が支給されるのであれば外出を控えようと思う人が存在していたとすれば,その人はより大なる善によってより小なる善を悪とみなしていることになるのです。善と悪が認識の問題である以上は,このような事例が現にある,少なくともあり得るといわなければなりません。
                                   
 実際にそのような人が存在したということを実証することができるわけではないのですが,政治的手法としては,このようなことが生じ得るということは覚えておいた方がいいでしょう。実際に最初の緊急事態宣言が出されたとき,その宣言がその後の宣言よりも効果的であったのは,こうした事情があったからかもしれないからです。もっと一般的にいうのであれば,市民Civesに対して何らかの事情があって喜びlaetitiaを断念してもらうように要請するときには,それとは別種の喜びを与えるということが,その要請を受け入れてもらうためには効果的であるということがあるかもしれないからです。
 もっとも,二度目あるいは三度目の緊急事態宣言が,最初の緊急事態宣言ほどの効果をあげることができなかった原因causaとしては,単に別種の喜びが与えられなかったからということだけがあるわけではありません。おそらく最大の要因は,人びとが最初の時点で感じたような新型コロナウイルスに対する不安metusという感情affectusが弱まったからだといえるでしょう。ですが,不安という感情がもっている効用および害悪についてはすでに語ってありますから,ここではそのことについては説明しません。別の原因について説明します。
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