スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

マイナビ女子オープン&円の発生

2020-06-06 19:00:22 | 将棋
 3日に指された第13期マイナビ女子オープン五番勝負第五局。
 振駒で西山朋佳女王の先手。後手の加藤桃子女流三段の居飛車穴熊に先手の銀冠という持久戦。互いに前の指し手がよくなかったことを認めるような手が出ていましたが,よい辛抱だったようで,差がつかない中盤戦が続きました。命運を分けたのは次のところだったように思います。
                                        
 先手が中央の歩を突き出した局面。ここで後手は☖5六歩と打ち☗同金に☖8六歩☗同歩☖7五角という攻め合いを選択しました。
 これには☗8八飛が振飛車の常套手段。後手は☖6七歩と垂らし☗7六歩に☖5五歩と打ったものの☗6六金と寄られて☖4二角と引くことに。先手は☗6四歩と打ちました。
                                        
 第2図となって後手は飛車角を共に押さえ込まれてしまった上に,実戦でも出現した☗5三歩成☖同角☗6三歩成を受ける手段もなく,一気に非勢に転落しました。第1図で☖5二歩と受けるのは屈服のようですが,それで先手から何か有力な攻めがあったわけではありません。また攻めるのなら玉頭方面に手を付ける方が優ったでしょう。
 3勝2敗で西山女王の防衛第11期,12期に続く三連覇で通算3期目の女王です。

 直線は,それ自体で一端が固定しもう一端が運動motusをするわけではありません。いい換えれば,このことは直線の本性essentiaに含まれているわけではありませんし,直線の特質proprietasであるというわけでもありません。このゆえに,一端が固定しもう一端が運動する直線というのを,円とは何ら関連付けずに知性intellectusが認識するcognoscereならば,これはこの知性が直線を表象している,知覚しているか想起しているかそれとも想像しているのかは場合によって異なるでしょうが,いずれにしても表象しているのであって,これは直線についてもあるいは直線の運動についても表象像imagoにすぎません。つまり混乱した観念idea inadaequataなのであって,十全な観念idea adaequataではないのです。知性はこれを能動的に認識する,いい換えればその知性が十全な原因causa adaequataとなってこの条件付けられた直線の運動を認識するがゆえに,その知性は円を十全に認識することができるのです。知性が定義されたものを概念するconcipereのに資するというスピノザによる定義Definitioの条件は,このような知性の作用を前提としているのです。
 したがって,直線は円や球がそうであるように,物体corpusとして延長の属性Extensionis attributumの中に包容されている限りで存在するでしょう。このことを否定することはできないと僕は考えます。ですが,円の定義に条件付けられた直線の運動というのは,直線の本性でも特質でもないのですから,延長の属性の中に包容されて存在する限りでの直線がそのような運動をなすということはあり得ないといってもおかしくはないのです。ですから,延長の属性の中に包容される限りで存在する限りでの円が,どのような原因causaによって発生しているのかということは,少なくとも人間の知性によっては認識され得ないのではないかと僕には思えるのです。認識され得ないだけなので,実際に円の定義にあるような仕方で発生するという可能性を完全に否定するものではありませんが,そうでない場合もあり得るということは考えておかなければならないでしょう。
 よって,スピノザによる円の定義が,延長の属性の中に包容されて存在する限りでの円の発生を含んでいない可能性は残っていることになります。そこでもしそうであった場合のことを検討していきます。
コメント
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