漂着の浜辺から

囁きのような呟き。

我が町、ぼくを呼ぶ声

2014年02月16日 | 読書録
「我が町、ぼくを呼ぶ声」 ウィリアム・ゴールディング著 井出弘之訳
集英社文庫 集英社刊

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 主人公は、化学を得意としつつも、本当に好きなのは音楽であるという少年、オリヴァー。彼が育った、イギリスのどこにでもあるような田舎の小さな町スティルボーンを舞台に、無垢だったが故に様々な物事の背後にある現実を少年時代をノスタルジックに描いた青春小説。
 この本は、ずっとむかし、それこそ物語の中のオリヴァーと同じくらいの年頃から、邦題がどこかカポーティの「遠い声、遠い部屋」なんかに似ていて思わせぶりだったり、そのブックカバーの絵が落田洋子さんだったりしたので気にはなっていたのだが(もちろん、あの名作「蝿の王」の作者であるというのも大きい)、たまたま古書で手にして、初めて読んだ。
 面白かったのか、と言われれば、あまり面白くなかった、としか答えられない。「故郷の町に久々に帰郷したものの、そこにあったのはノスタルジーの生々しい残骸だけだった」というのがテーマの一つなのだろうが、物語がどこか散漫で、登場人物の描写もそれほど深くないせいか、何だか胸に響かない。同じようなテーマの名作なら、他にいくらでもある。

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