漂着の浜辺から

囁きのような呟き。

祈りの海

2006年03月01日 | 読書録
「祈りの海」
グレッグ・イーガン著
ハヤカワ文庫SF

読了。
日本独自の編集だというが、構成も含め、かなり良い短編集。最近紹介したテッド・チャンと通じるものがある。SFというジャンルの可能性を、改めて感じさせてくれる一冊。各短編は、確かにワンアイデアワンストーリーではあるし、最初からオチが分かってしまうものも多いが、大切なのはオチを知ることだけではないと思う。この短編集の各短編で語られているものは、結局は問題提議である。SFというジャンルがもともと持っていて、得意としている要素。それが、ただ社会に向けた問題提議に止まらず、自らにさえ向けられているのが文学的であるが、それが極めて理論的なSFという枠組みの中では、時には数値さえ掲げられて吟味されてしまう。かつての「ニューウェーブ」を超えた可能性を、「人の心に向き合う理系」のイーガンやチャンの作品には感じてしまう。


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