老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

アメリカの占領が継続している日本

2021-07-30 09:57:47 | アメリカ
戦後史を検証していると、様々な疑問が出てくる日本の現在である。その疑問の多くは日米関係の問題に収れんされると言っても過言ではないだろう。特に、米軍基地が日本の各地に張り巡らされている。沖縄では米軍基地が本土よりも断然多く、それでも不足しているらしく、現在は辺野古への移設工事が進んでいる。

こうした、多年に渡る疑問と「謎」に終止符を打つ著書に出会うことになった。矢部宏治著「知ってはいけない」全2巻である。

矢部氏によると、日本の現状は、実際にはアメリカの「占領」が継続されていると言う。その顕著な事例が、米軍の飛行機(戦闘機のこと)は日本本土と沖縄の上空を「自由に」飛行できるし、アメリカ本国では禁止されている「低空飛行」が許されているということ。そして、その「自由な飛行」などの法的な根拠は、安全保障条約とそれに基づく「日米地位協定」にあるという。

それだけではない。「密約」という非公式の取り決めに、日米関係の不均衡な国家関係の「謎」が集約されているという。

◎「日米関係の密約とは何か」

安全保障条約は、二回の改正を受けて、現在は新安全保障条約と言われるものになっている。しかし、矢部氏によれば、旧安全保障条約と新安全保障条約では条約の規定内容が異なっているが、実際上は「全く変わっていない」のだと言う。

その具体的内容は次のようになっているとされる。矢部氏の著書、72ページを引用する。(「知ってはいけない」1,講談社現代新書)

★安保法体系の構造
(この構造は1960年の安保改定後も少し条文上の表現を変えただけで、新安保条約+地位協定+日米合同委員会という三重構造の中に受け継がれています。)

旧安保条約 「アメリカは米軍を日本に配備する権利をもつ」
      「その配備の内容は、行政協定で決定する」

→★行政協定 
  「日本は安保条約・第1条の遂行に必要な基地を提供する。具体的な内容は日米合同委員会で定める。」
  「アメリカは米軍基地の中で絶対的な権力をもつ。米軍基地の外でも必要な権力をもつ。具体的には日米合同委員会で協議する。」
  「すべての具体的な協議は日米合同委員会でおこなう」

→★日米合同委員会 
  「日米合同委員会の議事録や合意文書は、原則として公表しない」
  「日米合同委員会で決定した日米合意は、日本の国会での承認を必要としない」(安保改定交渉の中での秘密合意 1959年4月)

以上の内容が矢部氏の著書からの引用ですが、この安保条約(新安保条約も旧安保条約と基本的に変わっていないと、矢部氏は強調する)の概略から分かることは、日米関係の重要な取り決めは、政府と政府が決めているのではなく、「日米合同委員会」という米軍の要人と日本の高級官僚が、秘密の合意、つまり「密約」で決めているということであり、これがキーポイントである。その意味は、後段にある「国会の承認」を必要としない、と定めていることから明らかです。

ここから、次のことが帰結されます。

第一に、安保条約と「密約」(法的な根拠は、日米地位協定です)があることで、日米関係は、日本の国内法の上位に位置づけされている、ということ。つまり、憲法や刑法などは安保条約の下位にあり、言ってみれば、米軍は「治外法権」の法的な扱いになっており、米軍の行動は日本の裁判所の裁判を原則として受けません。

ここから様々な問題が起きています。米兵の殺人行為などはともかく、交通事故などは日本の裁判の対象となっていません。(殺人でも、実際には日本の裁判が事実上存在しているかは疑問な事件もありました。ジェラード事件、参照)

第二に、日米合同委員会の密約で、すべてが決められるということなら、安保条約があっても、政府間の交渉は存在していないも同然であり、特に以前の国会でも大騒ぎになった「核密約」つまり、アメリカの原子力潜水艦の核兵器の持ち込みなどは、日本政府が言う「米軍の核の持ち込みはなかった」という公表は虚偽であると矢部氏は強調しています。なぜなら、アメリカは、日本との密約を情報として「公開」しているからです。

結論として、日米関係は安保条約で規定されている、というのは表面的な事柄なのであり、実際には米軍のトップと日本のエリート官僚(外務省の高官)が密約で決めていて、日本政府とアメリカ政府の「合意」で決まるわけではないということです。

ここから様々な問題が発生します。米軍が決めた取り決めが優位に立ち、アメリカの行動に日本の官僚も「協議」が条件となっていない事柄は口出しできないとなっており、沖縄上空ばかりか、本土でも非常に危険な「低空飛行」とかは、「野放し」状態であるということになります。

次回は、何故、こうした取り決めが「密約」で決まってしまうのか。改めて、岸信介元首相とアメリカ政府の最初の「密約」に触れたいと思っています。その問題が、現在の日米関係の「初期条件」となったからです。

「護憲+コラム」より
名無しの探偵

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