非国民通信

ノーモア・コイズミ

30まで続けられたのが成功の秘訣

2008-07-13 22:27:52 | ニュース

1万1000人殺到!DAIGO喜び大爆発(サンケイスポーツ)

 故竹下登元首相の孫でブレーク中の歌手、DAIGO(30)率いる3人組バンド、BREAKERZが12日、川崎市のラゾーナ川崎でライブイベントを行った。

 本番前に雷雨に見舞われたが、1万1000人が殺到。同所では羞恥心の1万2000人に次ぐ集客で、「マジで、ガチで、ハンパなくうれしウィッシュ! たぁしかに~。オリコンでトップ10入りして、30歳でひと花咲かせたい」とDAIGO節で喜びを大爆発。

 新曲「SUMMER PARTY」など3曲を熱唱し、「おじいちゃんがきっかけでテレビに呼ばれるようになって、感謝しています。やっぱ、メンバー3人で墓参り行くしかないでしょ、マジで」と竹下元首相へのお礼参りを誓っていた。

 全く知らない人のことを言うのも何ですが、どこが成功の秘訣なんでしょうか? 往年のロブ・ハルフォードばりの歌唱力とカリスマ性の持ち主だったら頷けます。しかるにここでは「竹下登元首相の孫」というところに焦点が当てられているようです。閣僚経験者の孫が政界でブレーク(跡を継いだだけ)するのはよくある、むしろそうでない場合の方が珍しいわけですが、別ジャンルで名を馳せるケースはどの程度のあるのでしょうか?

 ダンサーのSAMこと丸山正温氏の対談記事がいつだったか(安室奈美恵と結婚して話題になっていた頃のはず)新聞に掲載されていました。記憶が曖昧ですが、確か同業のダンサーとの対談だったと思います。それがどちらの発言であったかも今となってははっきりしませんが、印象に残ったやりとりもありました。曰く「(他の人が脱落していく中)どうして自分達は成功できたと思う?」「やめなかったからかな」と。

 それは当たり前のことかも知れません。歌手でもダンサーでも政治家でも、やめてしまえば脱落決定、その先の成功はないわけです。その分野で成功したければ「やめずに続けること」が必須の条件です。ですが「やめずに続けること」こう言うのは簡単ですが、実際にそうできる人はどれだけいるでしょうか? ことによるとその分野の才能もさることながら、「やめずに続けること」を可能にする+αの有無がモノを言うのかも知れません。

 夢を捨てたことはありますか? 将来はこうなりたい、そう思っていたけれど断念した経験のある人は少なくないと思います。それはどうして? 才能に限界を感じたからでしょうか、あるいはもっと別の理由、たとえば「それでは仕事にならないから」「それでは食べていけないから」そんな理由で夢をあきらめた人も多いのではないでしょうか。

 手堅い人は学校卒業と同時に夢からも卒業してしまいます。往生際の悪い人の中にはバイトしながら夢を追う人もいます。たいていの場合は夢破れて別の道を探すわけですが、履歴書に空白があるだけにまともな職には就けない、そんな未来が待っています。それを恐れてか、後者ではなく前者を選ぶ人が圧倒的多数、その辺が実状と推測します。

 ところが、夢破れて行き場を失うリスクから免れ、夢を追い続けられる人もいます。代表的な例が、資産家の子ですね。働かなくとも食べていける、生活の糧を得るために身を粉にする必要がなく、自分の好きなことに打ち込める、30になってもやりたいことを続けられる、そうした環境に恵まれた人たちです。そうした条件に恵まれていればこそ「やめずに続けること」も可能になる、埋もれた才能が日の目を見るその日まで夢を追い続けることが可能になるのです。

 環境に恵まれた人には花開くまでの時間が与えられる、結構なことです。しかるに問題はそうでない人、たとえ才能があったとしても時間的猶予に乏しい人です。生活のために働く必要に迫られる人にとって、夢を追っていられる時間は限られています。いずれは夢を捨てて働かねばならない、たとえ秘められた才能があったとしても、それが発揮される可能性に賭けられる時間は有限です。期限の訪れ(大半は卒業でしょうか)とともに、自ら才能に蓋をして、別の働き口を探さねばなりません。才能は埋もれたまま、朽ち果ててゆくわけです。

 アマチュア/同人市場でも凄い才能に出会うことがあります。まさに「これはすごい」と唸らされることもしばしばあるわけですが、それがいつの間にか活動をやめてしまうケースも多々あるのです。どうしてやめてしまったのか、それは人それぞれですが、アマチュアとして好きなことだけやってはいられなくなった、卒業して就職した、そんなケースもよくあります。

 低賃金労働に依存する製造業至上主義の産業構造を維持したいなら話は別ですが、創造性の高い社会であろうとするのなら、埋もれてゆく才能を見逃さないための環境作りは欠かせません。ハリー・ポッターシリーズで名高いJ.K.ローリングは生活保護を受けながら記念すべき第一作を書き上げました。日本のようにむりやりワープア職に押し込んでいたならば、その才能は埋もれたままだったでしょう。社会が才能を発揮する機会を提供できたからこそ、才能が見出されたのです。

 長くなったのでこれで終わりにしますが、才能を発掘するのためには、それが開花するまでの時間を与えることが重要です。「やめずに続けること」これを可能にする環境作りが必要なのです。企業版の処女信仰とも言うべき新卒至上主義の見直しもそうですし、時間当りの賃金に格差をつけない形での短時間労働など、雇用形態ではなく就労形態の多様化もそうです。そしてセーフティネットの拡充、失敗のリスクを恐れさせないための受け皿を作り、才能が労役によって潰されないよう保護すること、こうした取り組みが求められるのです。

 

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19 コメント

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彼らは恵まれていますから (Bill McCreary)
2008-07-13 22:56:17
竹下元首相の孫なんて言うに及ばず、SAMは病院経営者の息子、東京都に絵を買ってもらった某画家(笑)の父親は、東京都知事・・・。今西錦司は大金持ちの息子だったし、まあこんな話はきりがありません。東京都知事の息子はともかく、こういった人たちは、自分たちが特権階級的に恵まれている立場だということをしっかりと認識してほしいと思います。

そういう意味で言うと、安倍晋三とか麻生太郎なんて、ずいぶん余裕があった人たちだと思うんですけど、さらに馬鹿になったみたいで、これはこれで困った人物です。
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Unknown (解体火傷)
2008-07-13 23:27:30
竹下元総理の孫が、ブレイクしているようだけど、くれぐれも、いい気になって、おじいちゃんに泥を塗らないように。
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Unknown (非国民通信管理人)
2008-07-13 23:53:48
>Bill McCrearyさん

 貧困からのし上がった、そんな美談もありますが、元より裕福な家の出身であるケースが多いですよね。とりわけカネになりにくい仕事、芸術や人文などの創造的な仕事はその傾向も強そうです。恵まれている人は良いのですが、そうした才能を発揮できる環境の有無が、才能の有無よりもモノを言う、これが続いている状況がどれだけ自覚されているか、ですね。

>解体火傷さん

 岸信介の孫は言うに及ばず、祖父に泥を塗る孫が政界には大挙していますからね、芸能界に進出した人はどうなるでしょうか?
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初めまして (nanami)
2008-07-14 01:00:29
日本の現状を見ていると、寧ろ、特権階級ではない人の埋もれる才能など、「花開いてもらっては困る」ように思えます。親の収入で決まる学歴とか。
貧乏暇なしでは創作どころではありませんものね。
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ソレは運命 (修一狼)
2008-07-14 02:55:16
こんばんわ非国民通信殿
夢を追い続ける事を決めるのも諦めるのもその人の決める事なので小生云々言う権利はありません。
が、夢を諦めたから人生が闇に閉ざされる訳でもありません。
夢を追い続ける事は一つの幸福の形ではありますが、それだけが幸せと言う事でも無いでしょう。
そうした中で新たな幸せや夢を見出す事もあるハズ
ソレは『運命』

因みに小生はホンモノの天才とは『ソレしか出来ない』or『ソレしかやってこなかった』と言うある種の人間形成に置いて「偏り」があった故生まれるモノだと思っています。
ある一定の事しか出来ないなんて本当の意味で幸せなんですかね?
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才能ですか (単純な者)
2008-07-14 08:10:17
こんにちは。
面白い論題の展開ですね。さすがだなぁと関心です。

才能のない人間なので、あるという前提では付言しかねるいささか引け目を感じつつ、開き直って少しだけ才能とは反対の古い経験則で考えてみました。

現代は妙なことに労働社会に入る前から自分の希望とか夢とかを追求することが目的で就労はその手段としての過程だという意識が多いんでしょうか。会社に入ってきてある高いパーセントで新人が悩み始めます。
自分の夢と現実の職場社会との乖離にです。

かってある時期からチルチルミチルの「青い鳥現象」という言葉が流行しました。

もうどうしようもない新人には口では言わないけど早く辞めていってくれという対応を取りましたが(総務の課長からは泣きつかれましたが)気に入った新人には就労社会と夢との間の現実について話してやりました。彼らは悩んだ末にある間隔で順応し始めます。

教育社会が変なのです。小さな時から自我自尊のアイデンティティー追求優先を最先端教育思想でやっているんでしょう。その果てに現実の就労社会に出てきて、そこは利潤追求で各人がそのシステムにあらゆる面で従属を要求されるのです。

副次的にですが、個人としての生活面でも最初は社員寮や給料に見合った狭いアパート生活で貯金など出来ないしエネルギー摂取もそこそこです。

何故なんだろうと新人は悩むわけですよね。困ったものでした。当たり前でしょうよ。就労社会は絶対的に新人達の夢のために存在なんかしていないわけですから。生活の充足も最初から満足に支払ってくれるものではなく、学校教育なんか全く役に立ってくれないのが就労社会の現場なんですからね。

一から覚えさせないと、せいぜい3年は給料はただで支給されているようなものなんです。5年程度でしょうかね、その新人の順応力と運の良さでスムーズに役に立って利益に絡んでくれるようになるのは。

才能なんて、主張するような新人は使い物にならないから早く辞めていってくれた方が本人の幸せの為だったのかも知れませんよ。

あこがれて見ている華やかな芸術・芸能・文化方面も実態就労としては同じ要素を持っているのでしょう。

政治家の2代目は親の地盤とそれにからみついて生きている親の側近グループがその資産的利権を引き継いでいく為のものですし、資本主義の資産家についても
資産相続の問題でしょう。もしも規制しようとするなら「相続法」でやるべき問題です。

そうそう民主党が研究会を作って選挙地盤をどうしたら父子相伝にしないようにするとかをやり出したようですね。試行錯誤と困難の路でしょうが、跡取り議員が相当数存在し政治を国民から隔てている傾向が強いことからすると画期的で注目しても良いと思います。

では。
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泣ける (ベースケ)
2008-07-14 09:27:02
よくぞこのことを書いてくれました。

私なんかも、片田舎で子どもを抱えつつ音楽活動をしようしようともがいている人間な訳ですが、やはり相当厳しい。別にこれで飯喰おうとしてるわけでもないのに。
本文の同人さんの例もですが、ワープア層は言うに及ばず、辛うじて正規職員であっても翌日労働の為に体力を再生産するに精一杯な毎日。「不健康で非文化的な生活」そのものですね。

つまり「健康で文化的な生活」などは特権階級のためだけにある。そんな思想をもとに繰り出される「再チャレンジ」(ちょっと古いですけど)へのミスリード。そして生産されるワープア(奴隷的被搾取労働)層。”資本の魂”とはこういったものかと、感嘆のため息が…。
と思ったんですが、最後の「おじいちゃん」発言を読み直してちょっと変更。”勝ち組マンセー”な産経がこの発言を載せるのは、暗に”先祖が貧乏人なら末代まで貧乏人なんだよ”と人々を諦めさせているのかなぁ、なんて。勘繰り過ぎですかね?
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DAIGOさんは… (ももこ)
2008-07-14 11:09:46
通りすがりですが、すみません。

DAIGOさんは、一番最初にデビューしてからはお爺様のことは公表してませんでした。
いつ、どのような経緯で公表したのかは知りませんが、
利用して売れようと思うなら、最初から公表してたでしょう。

泥を塗るって…。
売れて有頂天になったりするような子じゃないでしょう。
大人なら、見れば判ると思いますが…。

いくら環境が良くても、感謝と努力が無かったらダメですよ。
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継続は力なり (ナワ~ルド@峠おやじ)
2008-07-14 11:13:22
まさに「継続は力なり」ですね。
しかしその背景を根性や気力ではなく、経済面に求めるとはさすがです。生活面から考えると当たり前のことなのですが・・・

その解消策は古来より奨学金とか篤志家(パトロン)などの存在でした。しかしそれも万人に有効ではないため、挫折する人が多かったわけですね。

その環境改善策が管理人さんの提唱される賃金格差の是正とか生活保護などの社会保障になるのかと思います。先日の『劣った雇用主』のように日本は企業至上主義すぎます。社会的な不平等も大きすぎます。

基本的生存権が脅かされず、それぞれの多様性が認められる社会が来てほしいものです。

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世襲 (案の運)
2008-07-14 12:02:24
生まれによって、夢を追えるかどうかに差が出る。
これは、現状では避けようがありません。
ただ、政治家としての地盤や権益を世襲しなかっただけマシでしょう。
(背負いきれるだけの器量が無かっただけかも知れませんが)

器量に見合わない資産を世襲して、食いつぶしても自己責任です。
その過程で資産はある程度還流されますから、
資産家個人的にはマイナスでも、社会全体ではプラスです。

ただ、政治権力や利権を世襲し、それに見合う器量がなければ、
周りの人や社会を巻き込みますから、社会全体では著しいマイナスです。
たまに、相続税100%なんてムチャを言う人もいますが、
そんなことをすれば、地位や権力の世襲という負の連鎖。

と考えれば、より実力勝負の芸能界の方が、社会的にはプラスです。
利権と自己への福祉が関心事という二世三世に比べれば、
遙かに覚悟を持った選択ですから。
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