非国民通信

ノーモア・コイズミ

セーフティネットは穴だらけ

2010-04-13 23:00:02 | ニュース

水準より低収入でも生活保護未受給229万世帯(読売新聞)

 厚生労働省は9日、生活保護の対象となる生活水準より収入が少なく、貯蓄など一定の資産もない「低所得世帯」の世帯数などを初めて推計し、結果を公表した。

 基になる調査によっては、低所得世帯の約7割が生活保護を受給していないと推計され、厚労省は今後も調査を続ける考え。

 2007年の「国民生活基礎調査」から推計した場合、全国に低所得世帯(受給世帯を含む)は337万世帯あり、このうち68%にあたる229万世帯は生活保護を受給できる可能性があるにもかかわらず、していないとみられる。全世帯の5%にあたる。

 そんなに少ないはずがないと疑問を感じないでもありませんが、厚労省の公式な推計として低所得世帯の件数が出てきました。単に収入が少ないというだけではなく、貯蓄も少ない世帯の数が337万世帯、その中で生活保護から漏れている世帯が229万世帯あるということですね。政府側としては低所得世帯の数をできるだけ少なく見せたいところでしょうけれど、最低でも337万世帯までは公式に認めざるを得ないようです。

 ただ、総務省が04年に実施した「全国消費実態調査」を基にした場合、低所得世帯は142万世帯と推計され、生活保護を受給していない世帯数も32%の45万世帯にとどまるとされた。

 ちなみに総務省の調査では、低所得世帯が極端に少なく見積もられていたことが報じられています。この辺は基準が大きく異なるのでしょう。一般に日本の貧困補足率は20%以下=つまり生活保護を受給していない世帯は80%超と言われている中で、生活保護を受給していない世帯を32%と見積もるとは、何とも大胆な算定です。政府与党の社会保障政策の不備を覆い隠すために実施された調査なのではあるまいかとすら思えてきます。

貧困層をより貧しくする日本の歪んだ所得再配分(東洋経済)

 しかも、最低生活水準を下回る収入で生活している世帯のうち、実際に生活保護を受けている人の割合を示す「補足率」は、日本では20%以下と、他の先進国を大幅に下回る。所得がゼロでも働く能力があると見なされたり、最低生活費の半月分に相当する資産を持っていれば却下される、といったように、たとえワーキングプアであっても生活保護が受けられないのが日本なのだ。働けど貧しい日本の貧困層に対するセーフティネットが、完全に欠如している。

 こちらは2年前の報道ですが、実情は変わっていません。収入がなくとも雀の涙の資産があればダメ、収入がなくとも「働く能力」があればダメ(役所で「働く能力」を認定されても、企業の採用担当者が「働く能力」を認めるとは限りません!)。だから低収入世帯でも生活保護などのセーフティネットから漏れるわけですね。しかたがないから低賃金だろうが非正規雇用だろうが、仕事とあらばしがみつかざるを得ない、こういう状況を作ることで労働力を安く買い叩こうとする財界の要望に応えてきたわけでもあります。

 ハリー・ポッターの著者であるJ.K.ローリング氏が生活保護を受けながら本を書いていたのは有名です。これがもし日本であれば、「働けるでしょ」ということで生活保護を断られ、貧乏暇なし、当然ながら小説なんか書いている余裕のない生活に落ち込んでいたかも知れません。かのジューダス・プリーストもデビュー当時は所属レーベルとの契約内容に問題があって満足な収入が得られず、生活保護を受けていたそうです。鬱病の前歴があるシングルマザーのJ.K.ローリングと違ってジューダス・プリーストの面々は若く健康な男たちでしたから、日本であれば「働けるでしょ」と追い返されたに違いありません。きっと日本であれば、生活するのに必死でバンド活動に割ける余裕など心身ともになかったことでしょう。彼らの住む国がイギリスであって日本ではなかったからこそ、後年の成功があったわけです。日本の社会保障制度は産業界のため低賃金労働者を供給するには向いていますが……

 

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4 コメント

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宮沢賢治 (最下層公務員)
2010-04-14 01:16:40
時々思うんです。まだ明治時代の方がいまよりゆとりがあったのじゃないかって。
私は文学系はからきしですが、宮沢賢治なんて実際仕事についてた時期ってかなり短かかったみたいですよね。
言わば役立たずですよ。でも、生活にあくせくしなかったので夢を見ていられたんだと思います。彼の作品がどれほど多くの人達に夢を与えてくれたかって考えると今の世相っていったい何の為って思っちゃいます。
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Unknown ()
2010-04-14 01:55:01
時給が800円だとすると、週5日8時間勤務、ボーナスなしで働いて、やっと生活保護並の収入なんですよね。
ここから年金社会保険税金諸々が引かれますので、手取りでは生活保護以下です。
「働けるだろ!」と言われて(労働基準法の適法内で)働いてもこのザマ。
この状況でセーフティネットを敷く気なんてさらさらないんでしょうね。
ただただイギリスが羨ましい。。
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記事にもありますように (Bill McCreary)
2010-04-14 03:27:32
厚労省はこの種の数字を公式には発表すらしてこなかったわけで、出たのは一つの進歩でしょうが、あんまりどうもね。

>所得がゼロでも働く能力があると見なされたり、最低生活費の半月分に相当する資産を持っていれば却下

働く能力があればどうにかなるっていうんなら、世の中失業者はゼロとは言いませんが激減しますよね(嘲笑)。また、半月分の資産があったからって、どうだっていうんでしょうね。
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Unknown (非国民通信管理人)
2010-04-14 15:12:13
>最下層公務員さん

 後世に名を残している人の中には、ロクに働かず支援者の金で好き放題やっていたケースも多いですからね。今となっては何かと美談化されていながら、その実は今で言うニートみたいな人も多いですし。公的な支援体制はともかく、社会的なゆとりは大して変わっていないのかも知れません。

>魚さん

 結構、首都圏の正社員でも月給が額面でも20万円に届かない求人が多いんですよね。で、賞与の類は記載ナシ。こんな労働環境でいったいどうしろと言うのかと思いますよ。

>Bill McCrearyさん

 そのうち、政府が失業率を今以上に低く見せかける必要に迫られたときは、「働く能力」で新たな線引きが行われるのかも知れませんね。現状でも職安への登録状況で母数に含めたり含めなかったりしているわけですが、「働く能力」があるのに働いていない人は「働く意志がない」として失業者に含めないようになったりして……
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