非国民通信

ノーモア・コイズミ

もっと先立つものがあるはず

2009-11-29 10:44:12 | ニュース

軍服海外調達「聞いたことない」=防衛相(時事通信)

 北沢俊美防衛相は27日午前の記者会見で、行政刷新会議の「事業仕分け」で自衛隊の制服購入費が海外調達などによる縮減を求められたことについて「軍服を海外に依存するなんて話は世界中で聞いたことがない。その国と危険な状態になったら、おんぼろ服で事に臨むのか」と批判、「経費削減だけで論じている。論点がずれている」と語った。

 この防衛相の「批判」から察するに、自衛隊の制服は全て国産ということのようです。私なんか安物ばっかりですから着ているものは全てmade in Chinaですけれど、皆さんはいかがでしょうか。人によって重視するポイントは違いますから一概には言えませんが、国産の衣服にこだわるのはそれなりに贅沢ですよね。まぁデフレの時代ですから贅沢はむしろ称賛されるべきであり、割高でも国内の業者から調達してこそ内需拡大に繋がります。「バイ・アメリカン」を打ち出したオバマ政権のように「バイ・ジャパニーズ」とでもやれば???

 しかるに、北沢防衛相の「批判」の根拠は随分とずれているようです。「経費削減だけで論じている~」は事業仕分け全般に対する批判として適切なものですが、一方で「軍服を海外に依存するなんて話は世界中で聞いたことがない。その国と危険な状態になったら、おんぼろ服で事に臨むのか」とは、何ともリアリズムを欠いた話です(軍隊好きにはありがちなことかも知れませんが)。

 だってほら、軍服に限れば100%国内調達かも知れませんが、それ以外では「海外に依存」しているものばかりでしょう? そこに配備されているミサイルは純国産ですか? 食料や燃料は全て日本産ですか? どれも「海外に依存」していますけれど、それによって生じた問題など何もないわけです。調達先を海外に変えることで生じる影響など、せいぜい国内の業者が売り上げを落とすくらいではないでしょうか。そもそも軍服だって最終的に国内事業者を通るだけで布地など素材まで全て日本産というわけでもないはずです。まさかの「国産木綿100%」ならいざ知らず、そうでもなければ海外に依存している現状は変わりませんから。

 ましてや、軍服なんて自衛隊の装備品の内でも最も民生品から転用しやすいものの一つではないでしょうか。例えば核弾頭の調達先は限られてますけれど、「服」ぐらいはどこでも手に入りますよね? ある国から調達できなくなったからと言って、それで服が手に入らなくなるような自体などあり得ないわけです。いったい何が起こったら「おんぼろ服で事に臨む」事態に陥るのでしょうか? 世界中を敵に回せばあるいは……と思わないでもありませんが、そんなことになったら軍服なんかよりもっと重要なものが枯渇しているでしょうし。

 まぁ少なくとも日本において軍隊とは聖域ですから、歪んだ特権意識の1つも抱えていたとしてもおかしくはありません。公務員叩きで喝采を浴びる政治家が今や主流を占めるにも関わらず、自衛隊という組織への批判が僅かにある程度で「自衛隊員」叩きなんてのは皆無、それだけ自衛隊は特別な存在なのです(参考)。企業の新人研修先としても自衛隊人気は高まるばかり、それだけ愛されているのでしょう。しかし、自衛隊も少しくらいは世間の冷たい風を浴びても良いのではないかと思いますね。

 コスト削減のために向上を海外移転なんてのは今や全く珍しくない話、時にはコールセンターまで海外移転したりと、人件費の安い国へのシフトは止まるところを知りません。そして我々の社会では高付加価値産業への移行ではなく、発展途上国とのコスト競争(とりわけ人件費の面での!)に走りつつあるわけですが、そうした流れから最も無縁なままでいられたのが自衛隊のような気がします。福祉分野ですら外国人労働者の「輸入」が始まる中で、なぜか軍隊関係だけは全て日本人が担うのが当たり前みたいな感覚が根付いてはいないでしょうか? どこか安価で請け負ってくれる国に「国防」を委託しようなんてことは誰も言い出しません。だけど軍隊だけがいつまでも特権的な立場でいられるとしたら、それはそれでおかしな話です。内需拡大という面では軍服の国内調達継続を支持しますけれど(理解力に乏しい仕分け人の相手をしなければならないことにも同情します)、北沢防衛相の掲げる理由では納得できませんね。

 

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15 コメント

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同感です (Bill McCreary)
2009-11-29 11:56:34
戦闘機その他を外国から調達していて、軍服は国産品にこだわるというのも、軍事大好き人間の思考ではとんでもないということになるのでしょうが、本質的にはなんともこっけいな話ではあります。

自動小銃だって、カラシニコフあたりを購入したほうがよっぽどコスト削減にもつながっていいように思いますけどね。
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Unknown (やす)
2009-11-29 12:26:50
沖縄の基地の職員お給料がカットされたって言うのは、もう国辱ものですよね。
最高の、奴隷ですよ。
ただで使ってくださいといわんばかりの。
まさしくアメリッポンとしか言いようがいないでしょう。
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同じ事を考えていました(笑) (Elekt_ra)
2009-11-29 13:27:50
武器装備品を散々アメリカ様等に依存して、軍服だけは国産維持で「日本の誇り」を維持とかでしたら随分と安い愛国心ですね(笑)
愛国を哀哭する市民団体が、「中国に媚びる」NHKを糾弾するTシャツというのを作りましたが、実は中国製だと知って揉めた事がありましたが(笑)
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Unknown (非国民通信管理人)
2009-11-29 13:58:52
>Bill McCrearyさん

 まぁ軍事は実用ではなくイデオロギーの世界ですから、国産へのこだわりが維持しやすい世界なのかも知れません。日用品の価格にはうるさいけれど、飾り物のブランド品は価格度外視で選ぶような、節約できない主婦感覚みたいなものが、軍隊周辺で幅を利かせているような気がします。

>やすさん

 まるで米軍にカットされたかのような口ぶりですが、鳩山内閣がカットしようとしているだけじゃないですか? 被害者ぶる前に直視すべきものがあるでしょう。

>Elekt_raさん

 反日だの愛国だの喧しい連中も、日頃から使っているのは中国製品ばっかりなんですよね。よほどの金持ちで、かつ暇人でないとmade in Japanで固めることなど不可能のはず、自衛隊の理想はそっちみたいですが……
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Unknown (3A0114)
2009-11-29 14:30:34
流石にカラシニコフ云々は、ゲリラの闇市じゃね~んだから…と呆れますが。
軍服はまあ確かに国によって、コストも防衛も考えた上で「国産のみ」って国もあれば、モノによっては海外調達してる国もありますね。
問題は、そういった政策や事例を考慮したり調べたりした上で議論する、なんていうつもりも、それだけの知識も無い仕分け人しか居ないということで…
軍事やスパコンは愛国云々な方に限らず素人でも興味のある人も多いんで、反論をたくさんしてもらえて羨ましいくらいですが、それだけでなく仕分けに限らず「ムダ」呼ばわりされてる他の分野も、同レベルで難癖つけてツブされまくってるわけで、それが本当に正しいのか?とか、考えてくれる人がもう少し増えてくれてもいいんじゃないかと思うんですがね…
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突き詰めると (ヒイロ)
2009-11-29 15:22:28
「全てにおいて純国産はあり得ない」と割り切ることが必要なのですが、切り替えが出来ない人が多いわけで。

車でも、中国でエンジンを生産しているメーカーとか、韓国製の製鉄をドアパネルに使用しているメーカーを必死になって叩いている連中もいますが、それと重なるのかなと思います。

衣類の話が出ていましたが、中国製を避けて東南アジア製に変えても、北の国と国交がある国で生産していたらそれはそれでトラブルの元を抱えるわけですから。

自衛隊の装備でも「求める要素が揃っているなら安い方にしたら」と思うのですが、「自衛隊にコストを求めるな」と逆ギレされるのがオチかもしれません。
個人的には欧州かロシアから購入して、と思うのですが。
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Unknown (非国民通信管理人)
2009-11-29 23:07:46
>3A0114さん

 まぁ正規調達したって今よりは安上がりですから、コストの問われる民間企業であれば真面目に検討されてもおかしくないのではないでしょうか。仰るように事業仕分けそのものは一方的にムダ呼ばわりするばかりの茶番ですが、この防衛相の反論では低レベルな争いだなぁ、と。

>ヒイロさん

 ロシアはまだしも欧州から買ったらコスト削減にはならないんじゃないですかね? 中国から買った方が安いでしょうし、「調達先」「お客様」の関係を深めていった方が国防の面では現実的でしょうし。
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Unknown (3A0114)
2009-11-29 23:21:32
まあ服程度でも国防が絡めば小競り合いすらなさそうな国を探さないと…ってなこともあるのかもしれないですけどね(私も同情的過ぎるかな?(汗))。
どうせ議論するなら、そもそも安保自体が国防の「アウトソーシング」なんだから、契約先ともっとコスト的に有利な条件にしてもらおうとかって話をしてもいいでしょうに、自分のトコからの出向社員の給料削ってオシマイなんですよね…
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AK47ですね (最下層公務員)
2009-11-29 23:26:38
砂を噛んでも弾が出るくらい単純で丈夫な銃なので世界中で人気があるそうですね。一方、M-16は精密機械ですから、完全な手入れをしないと使えなくなる。
ゴルゴ13で、この設計者が「どうしてゴルゴがM-16を選んだのか?」ってテーマでの作品がありましたっけ。
値段も今の自衛隊で使ってるのに比べたら安いでしょうね。
ちなみに、ロシアに旅行した時に貰ったソ連製の軍人用腕時計、手巻きですが使い易くって丈夫ですね。中性子爆弾をくらっても止まらない。ってただ単に旧式なんですが、それがいい場合もありますよね。兵器にしたらアメリカ以外で買える自由があったらもっと費用も抑えられたし、日本の国防の形に沿ったものが揃えられたはずですが。アメリカ関係そのものが聖域なのは今度の政権も同じですね。話題がズレてました、すいません。
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Unknown (非国民通信管理人)
2009-11-29 23:56:03
>3A0114さん

 まぁ兵器も燃料も食料も他所から買ってるのに、軍服だけmade in Japanにこだわるようなら、ますます以て自己満足の世界になっちゃうのではないでしょうか。国防とは本質的にそういうものかも知れませんけれど。

>最下層公務員さん

 ロシア製というと何かと信用ならないイメージですが(少なくともロシア贔屓のロシア文学専攻者の間ではそういう認識が一般的でした)、AK47とか妙に信頼性が高い代物もあるんですよね。まぁ国防とは信頼性やコストなど二の次で、よりイデオロジカルな基準が幅を効かせる世界のような気もします。
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