非国民通信

ノーモア・コイズミ

得意気に語れるようなものなのか

2009-09-28 23:01:31 | ニュース

各国首脳に「脱官僚」説く=金融サミットで鳩山首相(時事通信)

 24日開幕した20カ国・地域(G20)首脳会議(金融サミット)で、鳩山由紀夫首相は官僚依存の討議に陥らないよう、各国首脳に「脱官僚」を訴えた。

 G20の運営のあり方が議論された24日夜の夕食会。席上、首相は「参加国の数が多いと事前調整が必要になるが、事前調整をすればするほど官僚の意向が強く反映されてしまう」と指摘。その上で、「首脳自身が指導力を発揮することが必要だ」と政治家主導の論議が必要と強調した。 

 鳩山内閣の看板である「脱官僚」ですが、国際的な評価はどうなのでしょうね。日本国内では「官僚=悪」という単純な図式が罷り通っているだけに、この「脱官僚」も全く無批判なまま有権者に受け入れられているようですけれど、この手の官僚敵視の世界観が日本特有のものなのか、それとも世界共通のものなのか、あるいは死刑制度のように問題のある国に限って残存しているものなのか、その辺が気になります。G20という場で対外的な説明を要しているからには、他の参加国からすれば異例なことではないかとも推測されるのですが、いかがでしょう。それが当たり前のことであるならば敢えて言及する必要もないはずです。特異な在り方だからこそ、わざわざ強調しなければならなかったのではないかな、と。

日米財務相会談の説明回避=報道機関向けで同行筋(時事通信)

 藤井裕久財務相は24日、当地で米国、韓国、オーストラリアの3カ国財務相とそれぞれ個別会談したが、財務省同行筋が日米会談に関する報道機関向けの詳細説明を避ける一幕があった。

 同行筋は藤井財務相が会談後に行ったぶら下がり会見を踏まえ、記者団に対し「会見での財務相発言がすべて」と繰り返し、ガイトナー米財務長官とのやり取りを明らかにしなかった。ただ、韓国、豪州については説明を行った。

 事務次官会見を廃止するなど「政治主導」を掲げる鳩山政権の開示姿勢が米ピッツバーグの20カ国・地域(G20)首脳会議(金融サミット)にまで及んだ格好だ。 

 さて脱官僚/政治主導の一環なのか、「会見での財務相発言がすべて」と官僚が口をつぐんでしまったようです。世間の評価はどうなのでしょう。官僚が口を挟むな、というのが民主党の主張であり、世論の大勢でもあったと思いますが、何しろ官僚ですから黙っていようが口を開こうが、どっちみち非難されるものなのかも知れません。いずれにせよ、この状態では「財務相発言がすべて」であり、それを信じるしかないような状態です。別に財務省が嘘をついたり、何かを意図的に隠しているのではないかと勘ぐるわけではありませんが……

 日本の場合、公務員や官僚に対する絶対的な不信がまず先にあって、その反動か公務員叩きや脱官僚を掲げる政治指導者に対しては盲目的な信頼が集まってしまうのかも知れません。単純な善悪二元論の世界の住人ですから、悪い奴と戦っているのは皆ヒーローなのでしょう。ただ私は官僚にも閣僚にも、決して全般的な信頼を置けないものでして、だからこそ「嘘がつけない」ような制度作りが必要ではないかと思うのです。

 その手の人の頭の中では、嘘をつくのは官僚だけ、だから官僚の口さえ塞いでしまえば万事解決するものと、そう思われているフシもあります(現に、そういう前提に添って内閣が動いているわけです)。だけど官僚の口がふさがれて、民主党の閣僚だけが詳細を説明する、全ては党閣僚の良心次第という現状で、もし民主党の大臣が嘘をついたらどうなるのでしょうか? 「民主党はそんなことしません」と、力強く断言してくれる人も偶に押しかけてくるのですけれど、そりゃ希望的観測というものですし。

 「間違えない」「誤らない」ことを前提としたシステム作りが日本の伝統です。誰かが過ちを犯して何らかの損害が発生しても、それは過ちを犯した奴が悪い、と。そう完結するのが日本式です。一方で「誰しも魔が差すことぐらいある」「失敗することもある」ことを前提としてシステムを作っていく発想もあります。誰かが何か過ちを犯そうとしても、事前に食い止められる、被害を最小限に押しとどめられるような制度作りもあるわけです。後者の立場からすれば、まず「嘘をつけない」仕組み作りが大切ですね、例えばそう、会見を特定の個人だけが行う(個人の判断で隠すことも偽ることも可能!)のではなく、複数の人間が行う(誤ったことを公表すれば周りに気づかれる!)等々……

 政治家が何かを隠そうとしていても、口を開いてしまうような官僚が理想だと私は思います。民主党は隠し事なんてしません、そう信じている幸せな人は結構ですが、私はそこまで信仰心が厚くないものですから。自民党に限らず民主党だって隠し事の一つや二つも出てくるはずです。そこで政治家に遠慮して口を閉ざし続ける官僚と、敢えて秘密をぶちまける官僚、望ましいのはどちらでしょうか?

 現状では、前者が圧倒的に多いようです。政治家が「密約はありません」「そのような資料はありません」と、そう語ったときに官僚達はどうしていたでしょうか。政治家の意向を無視して、勇気ある告発に踏み切る官僚というのは滅多にお目にかかれません。大半は政治家の発言同様「密約はありません」「そのような資料はありません」と、口裏を合わせてきたわけです。あるいは「国会答弁での首相発言がすべて」とか。これではダメですよね。

 本気で官僚支配だの官僚主導だのと思い込んでいる人の頭の中では、自民党政府は密約を本当に知らなかった、知っていれば国民に公開するつもりだったのに、官僚が教えてくれなかったから不可能だった、そういうことにでもなっているのでしょうか。官僚達が自民党政府に口裏を合わせていたとすれば、「主犯」は政府の方ですが、その辺を取り違えている人も多いような気がします。自民党を免責したいわけでもあるまいに、なぜか官僚の方を「主犯」に仕立てようとする、それだけ官僚が嫌いなんでしょうけれど、これもある種の修正主義のような印象を受けます。

 上で述べたように、政府が嘘をついたり国民を偽ろうとしたときには、政府の意向を無視してでも真実を語れる官僚であって欲しいと思うわけです。ところが昨今は何でも一元化、官僚の記者会見はおろか、議員立法をも党が管理しようとする方針であり、かつ司法への介入も口にする有様(参考、民主独裁)、全ては民主党の思うがままというわけです。民主党が聖人君子の集団であれば全ては上手くいくでしょうけれど、そうでなかったときは自民党時代を上回る悲惨な展開が待ち受けているかもしれません。

 

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7 コメント

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これはそれ以外言えない (こっぱなお役人(北のほう))
2009-09-30 01:40:42
まあ、喋るなと閣議で決められちゃしゃべれるわけがないですよね…
http://www.kantei.go.jp/jp/tyokan/hatoyama/2009/0916siryou2.pdf←閣議決定文

まあ、とりあえず私らについても緘口令に近い状況にされてますし、口を開けば首筋に秋風が吹きこむような状態で誰がしゃべれますか(涙)
下手なリークでもしようものなら国家公務員法第100条違反で一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金+良くて懲戒免職処分、悪くすると失職(懲役刑を受けると第38条の規定で自動失職)が待ってるので身動きとれそうもないですね(苦笑)
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苦、九月も終わるぅ… (生きるしカバネ)
2009-09-30 04:29:15
貴エントリーにおいて、新政権以降 執拗に主張されているテーマは、

誰か、あるいは特定の組織を悪として(見立てて)糾弾、迫害することへの強い危惧。かと感じます。

マスメディアが連日大いにその逆を煽るようなことになりますから、いくら言っても言い足りない思いでしょうか。

非国民通信様のような主張を新聞やテレビほどに知らしめて、…俺は思い込んでいないか?、イメージだけじゃないか?、と世論一般にも時々自問して頂く機会が容易に訪れればいいと思いますが…。(それでも尚「カンゼンチョーアクの何が悪い!」なら、まあ、ん…、どうなんで笑?)

現状、マスコミって何番目の権力なんでしょうね…。
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無意識なのか意図的なのか (ベースケ)
2009-09-30 09:49:04
世の中は勘違いをしてますよね。
(ごく一般的な意味で)悪いのは官僚ではなく官僚主義でしょう。
しかも核密約の問題はいかに歴代事務次官が引き継いできたとはいえ、もともと”密約”を行ったのは政治家、しかも個人ではなく政権与党の意向を代表する立場の政治家でしょう。そしてその政権の意と一体不可分に官僚を”鍛えてきた”のが日本の官僚政治の姿かと。
その意味ではこれまでだって充分「政治主導」だったし、これから新たな「官僚主義」に陥る可能性があるということです。(あとは以前コメントした内容と同じなので割愛します)
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Unknown (源内山人)
2009-09-30 10:13:57
「脱官僚・政治主導」・・・日本国内でしかもてはやされない異様なフレーズのようです。

何かの記事で読んだのですが、記者が日本の「脱官僚・政治主導」について英国の国会議員に話したところ、彼から「じゃあ、今まで日本の国会議員は何をしていたのか?」と訊かれたということです。
「脱官僚・政治主導」なんて、見方を変えれば「日本の政治家は怠慢で能力不足だった」という恥ずかしい事実を晒しているだけだと思います。
そんなことを国際会議の場で訴えるセンスっていったい?????
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トップダウンたあ上意下達サ (kuroneko)
2009-09-30 21:59:36
 参考にさせていただいて記事を書きました。
 個々の民主党の政策に○や×をつけるより、民主党の「官邸主導」とか「トップダウン」やそれを支持する情動に、なにか危うさを感じます。
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Unknown (TK)
2009-09-30 22:36:59
>鳩山内閣の看板である「脱官僚」ですが、国際的な評価はどうなのでしょうね。
政権交代直後に海外の識者が民主党について語っているのをいくつか見ましたが、どれも官僚政策には否定的だったのが印象的でしたね。

「官僚支配」については、この言葉は政治家の責任逃れにしか見えません。
明治維新からずっとこの状態でやってきて今さら、「我々は官僚に支配されてる!」
源内山人さんの言うとおりで、お前たちは今まで何をしてたんだと。。
小泉元総理、現鳩山総理を見れば、官僚に強い権限が与えられることはあっても政治家より下にいることは明らかだと思うのですが。
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Unknown (非国民通信管理人)
2009-09-30 23:35:48
>こっぱなお役人さん

 色々と大層な理由付けがなされてはいますが、内部告発する口を封じるためにも機能するのが政治主導ですからね。全ては閣僚の思惑次第、真相は全て闇の中……

>生きるしカバネさん

 えぇ、民主党政権が誕生して「変わった」部分もあるのですけれど、「変わらない」部分もあって、それこそが小泉時代から継承した「敵に見立てる」手法だと思うわけです。こうした点への批判は本当に少ないのですが、マスコミも好きなんでしょうかねぇ。

>ベースケさん

 そう、密約はまず政治家が結んで政治家が隠してきたことであって、官僚の罪は「政治家の言うがままに口裏を合わせた」ことのはず、そうであるからには時の政府の役目こそ糾弾されるべきなのですけれど、何故か主犯と従犯の関係が逆転してしまうんですよね、何か見落としていませんかと問いたいです。

>源内山人さん

 鳩山としては無能な自民党と違って民主党は別モノと考えているのかも知れませんね。祖父や父親、自身の半生だって自民党とともにあったはずなんですけれど。まぁ責任転嫁の姿勢が見え隠れしています。

>kuronekoさん

 個々の政策をピックアップすれば評価できるものもいくつかあるのですけれど、このトップダウンの姿勢は危ういですよね。そしてトップダウンのやり方に批判らしい批判が出てこない辺りも。今日のエントリにも書きましたが、「一元化できているかどうか」というレベルの論議はあっても、「そもそも一元化すべきなのか」という議論はまったく盛り上がらないですし。

>TKさん

 そう、責任逃れの部分が大きいと思いますね。今までの政治を否定する中で、その責任を「官僚のせい」にしてしまおうとしているフシがあるのではないかと。官僚を犯人に仕立てることで政治家の責任を有耶無耶にしている側面も多々あるはずなのですが……
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