非国民通信

ノーモア・コイズミ

民主独裁

2009-09-19 21:59:53 | ニュース

指揮権発動、制度として認められる~法相(日本テレビ)

 千葉景子法相は16日の会見で、事件捜査への指揮権発動について「制度として認められている」などと述べ、これまでの法相よりも踏み込んだ考えを示した。

 法相は、個別の事件捜査について検察官に指示を出すことはできないが、検事総長だけは指揮することができるとされている。これまでの法相は、指揮権の発動は司法への政治介入を招くとして否定的な姿勢を取っていた。しかし、千葉法相は会見で、「慎重にしなければならないが、検察の行き過ぎがあれば指揮権の発動は制度としては認められている」と述べ、これまでの法相よりも踏み込んだ考えを示した。

 民主党政権が誕生し、自民党政権時代から変わる部分と継続する部分がそれぞれあるわけです。「変る」部分に関しては賛否両論ある一方で、「継続する」部分に関しては国民的な合意ができているのかほとんど注目すらされていません。あたかも、それが当然のことであるかのごとく受け入れられているようです。そこでこの新たな法相はいかがでしょう? 死刑制度に対する方向性は多少ながら「変わる」と見られており、その辺は一定の注目を集めています。まぁ、死刑愛好家の系譜が途絶えたことは好ましい変化に違いないのですが、行政と司法の関係はどうでしょうか?

 元より日本の司法は三権分立の放棄に特徴があり、最高裁などは行政への不介入をモットーとしてきました。それでも自民党時代にはまだ最低限の歯止めが利いていたのか「指揮権の発動は司法への政治介入を招くとして否定的な姿勢」が主流でした。しかるにこの民主党の法務大臣は、司法への政治介入を辞さずと就任早々に表明したわけです。自民党さえ踏み越えなかった最後の一線を犯すのは民主党でしょうか。行政が司法をコントロールする、それも彼らの「政治主導」なのかも知れません。

民主、議員立法を原則禁止 全国会議員に通知(朝日新聞)

 民主党は18日、政府・与党の二元的意思決定を一元化するため、議員立法は原則禁止し、法案提出は原則、政府提案に限ることを決め、同党所属の全国会議員に通知した。政策決定がスムーズになり、族議員の誕生を防ぐといった効果が期待されるが、政治主導が不完全なままでは従来の政府見解にとらわれて自由な立法活動が阻害される可能性もある。

 民主党は、自民党政権では党内の事前審査を経ないと政府が法案を提出できないといった弊害があったとして、政府・与党一元化を主張しており、すでに党政策調査会の廃止が決まっている。これにより、族議員の関与で法案の内容がゆがめられたり、法案の提出が遅れたりすることがなくなるとみられている。

 議員立法が認められる例外として「選挙・国会など議員の政治活動に係る、優れて政治的な問題」にかかわる法案とした。公職選挙法や政治資金規正法の改正案といった「政治とカネ」の問題に関連する法案などが該当するとみられる。

 ただ、議員立法がこうしたケースに限られ、原則禁止されれば、超党派や党内有志による立法活動ができず、政策決定の幅がこれまでより狭まる可能性がある。例えば、改正臓器移植法や水俣病救済特別措置法など今年の通常国会で成立した弱者救済にかかわる法律は有志議員によって成立にこぎつけた。臓器移植法は党議拘束を外すことで採決が可能になった経緯もある。だが、議員立法の原則禁止により、こうした法案の提出が難しくなる恐れがある。

 ……で、こうなると完全に「自民党を超えた」感があります。小泉以降の「新しい自民党」の路線をより先鋭化させた結果がこれです。まぁ政治主導とは官邸主導の同義語ですから、官邸の思惑を超えて国会が動くことのないようにしたい、だから例外的な場合を除いて議員立法は「原則禁止」になるのでしょう。まぁ自民党時代だって議員なら誰でも法案を提出できるわけではなかったのでしょうけれど、民主党政権の元ではその傾向が一層、加速されるようです。

 そもそも昨今ではやたらと「一元化」が叫ばれて、それが無批判に肯定されていますが、権力の一元化とはすなわち「独裁」のことではないでしょうか。そして「独裁=一元化」に陥らないためにこそ三権分立の考え方があり、行政(内閣、官邸)とは異なる独立した判断を下す機関として立法府(国会)があり、司法があるわけです。政府と与党を含む国会、双方が監視し合うのが本来であって、それを「政治主導」なるワンフレーズで一元化しようとする、国会の機能まで官邸に吸収してしまおうとするのは三権分立に対する公然たる挑戦です。

 勧善懲悪の世界の住人であるのなら一元化こそ望ましいのかも知れません。皇帝陛下の善政が邪なる家臣の手で歪められないように、そう取り計らうのが筋になるのでしょう。しかし国会議員のあるべき姿とは、ただ内閣の決定を素通しすることなのでしょうか? 時には抵抗勢力となって行政の過ちを未然に押しとどめる、自ら政策を立案して政治を動かしていくのも国会議員の役目です。そうした国会議員の役割が大きく制限されようとしているのですが、当の議員達の思いはいかほどでしょう。自分たちの党首を総理の座に据えることが唯一の目的なら、これでも良いのでしょうけれど……

 司法への介入を示唆し、国会をも行政の統制下に置こうとする、これが「政治主導」です。こうした「政治主導」の方向性こそ民主党の最も危険な部分である、そう説いてきたわけですが、自体は私が危惧していた以上に急速な展開を見せているようです。行政の一極支配による「スムーズな政策決定」とは国民から待望されているものであるかも知れませんが、そこで明確に否定されている三権分立による相互監視が失われた先はどうなるのでしょうか? 中には善い独裁と悪い独裁があると考えている人もいるのかもしれませんが、とんでもない話です。善い独裁など、お伽噺の中にしか存在しないのですから。

 

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参考、権力に与えられるべきは自由ではなく監視


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10 コメント

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いやー予想通りっていうか何と言うか (ベースケ)
2009-09-20 19:50:21
中央集権化キタ━━━(゜∀゜)━━━!!!!みたいな。まぁ「地方分権」という言葉で騙すよりは正直な分いくらかましかもしれませんけど、こうもあからさまなのもちょっとね・・・
さて「官僚主義脱却」を売りにしている新内閣ですが、独裁ってのも(それを行うのがどの階級であれ)ゆくゆくは新たな利権とか別のかたちの官僚制を生み出すことになるだろうと言うのは、これまでの歴史を見れば予想がつきます。この場合「赤い官僚制」でなくて何と言うんでしょう。我が長野5区選出の議員さんは今回の政権交代を「無血革命」とか言っちゃってますが、そうなるとなおさらそれを訊いてみたくなります。
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Unknown (非国民通信管理人)
2009-09-20 23:19:19
>ベースケさん

 「政治主導」の他には「地方分権」も掲げているわけですけれど、その実態はと言えば橋下みたいなのを歓ばせるシロモノ、地方ごとに独裁権限を与える類ですからね。綺麗事を表に出してみたところで、どうにも強権志向が拭えない印象です。これはこれで、今までとは別の新しい「聖域」を作るやり方だと思うのですけれど、どうも過去の失敗への反省がないと言いますか…… ちなみに「無血革命」ですか、「カイカク」に比べると「革命」の方がより猛々しいイメージがありますが、やはり「小泉よりも小泉的な」展開が待っているのかも知れません。
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>善い独裁と悪い独裁 (Bill McCreary)
2009-09-21 00:34:17
ひところは(今はともかく)石原なんてのも「善い独裁者」のような扱いすらされていました。時間の問題で正体はばれますが、あんなものを高く評価していた東京都民(日本人)というのも情けないにもほどがあるというものです。
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Unknown (非国民通信管理人)
2009-09-21 01:03:09
>Bill McCrearyさん

 なんと言いますか、自分と同じ方向を向いていれば独裁者も善人に見える/見られるみたいですね。石原も小泉も、カイカクの旗を掲げて、それに期待が集まっている間はいかに無理を押し通そうとも「善い独裁者」のようでしたから。そして同じ道をたどろうとする鳩山も、やはり正体がばれるのは取り返しがつかなくなってからでしょうか……
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Unknown (マッドサイエンティスト)
2009-09-21 16:59:36
はじめまして。
すいません。
勝手に「民主独裁」の記事を
当ブログに張り付けさせて頂きました。
事前にお断りしなくてすみません。

私は産経的保守と呼ばれる者でしょう。
政治はなかなか難しいですね。
これからもお邪魔します。
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デタラメばかり (ヒイロ)
2009-09-21 21:24:30
捜査権の濫用は「やられたらやり返す」という原始的な発想としか言いようがありません。

議員立法の禁止もトホホな気分です。全てではなくても、立法によって救われた人々もいるわけですから。「もう少し、性善説に立って考えろ」という感じです。

「国策捜査の類をやられた」というなら、開き直って自民党と心中する覚悟で全てを暴露した方がよほど救いようがあるのですが。
この話はどこの新聞もしていないという解釈でよろしいのでしょうか。産経辺りがこれを取り上げて「エセ左翼」呼ばわりすればそれはそれでいいと思っているのですが。

ネトウヨ様の中には、自民党を「中道左派」とみなし、民主党を「真性左翼」と言っている人もいるようですが「どこが」という気がします。
この件は、彼らにとっては「ないこと」なのかもしれません。
この件のように、自民党的なことをしていても「民主党がするから気に入らない」ということで無視している可能性は否定していませんが。
都合の良いことをつまみ食いして粗探しに走っていても仕方が無いはずですが。

少しでも良いソースを探して、自分の疑問を解消したり、考えを変える、あるいは具体性を高めることの難しさを感じる次第です。
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黒海議員の本質的な仕事って? (こっぱなお役人(北のほう))
2009-09-22 00:54:39
民主党のお偉方に質問「立法府って何するところ?」と「行政府って何をするところ?」の2問を捧げたいと思いますわ…

まあ、指揮権に関しては基本を言うと検事とは「捜査をして」「起訴をして」「公判を維持する」役割を負った「行政官」なのでその枠の中で、公平公正の原則を忘れないのであれば指揮権を使ってもいいとは思いますね。(まあ、今でも上層部が気に入らないことをやれば人事を使って止めてたんでしょうし…)

でも、「議員立法は原則禁止」はいただけません。立法(に伴う議案提出)は立法府が行うべき一番の仕事じゃないですか…逆に「内閣提案」を予算本体・条約批准・のみにして、そのほかはすべて議員提案で行くべきじゃないのかと私とかは思うのですが…(給与法等勧告事案は両院議長提案ということで)

後、ダム工事ストップとか話題になってますが、北海道の某ダムの場合、2つのダムで完全に抑え込む構想(というか計算)で1つ目のダムが完成した時に2つ目のダムにストップが…その後、台風直撃して1つ目のダムはぎりぎりの調整で被害を最小限度に抑え込んだんですが…現在国家賠償訴訟中(つまりやばいレベルで被害が)…でようやく2つ目のダムの着工ができると思ったら前原さんストップ命令かけて…今度2つ目のダムの事業が止まったらその事業(というか川の管理を)地方団体に渡すぞ~確実に前回の被害より大きくなるから(苦笑)
(北海道の場合、「雨が止んだ時点で」待機解除という規定があるらしいです…河川増水のピークは雨が止んだ後くるんですが…まあ、そんなところに管理をさせたら被害はえらいことになりそうです)
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Unknown (非国民通信管理人)
2009-09-22 14:19:39
>マッドサイエンティストさん

 ご紹介ありがとうございました。本当に危険なものと虚構に過ぎないものを分別いただければ幸いなのですが。

>ヒイロさん

 検察が自分たちに不都合な動きをとるなら「行き過ぎ」とみなして介入する、そういう可能性も高そうですからね。議員立法制限も同様なのですが、どうも世論の大勢としては民主党が推し進めている「政治主導=権力の一元化」には何一つ疑問を感じていないのかもしれません。だからメディアが取り上げるとしたら、この一元化の方針が揺らいだとき(例えば小沢が動き出したとか)に限られてしまうのではないでしょうか。

>こっぱなお役人さん

 党のこの方針を受け入れるということは、国会議員として本来の役割を放棄するに等しいことですからね。民主党議員には離党するか議席を返上して欲しいくらいですが、自らの党から出た内閣を支えることこそ使命とでも思っているのでしょうかね……
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Unknown (ニュースコープ)
2009-09-27 02:05:18
>善い独裁と悪い独裁
>自分と同じ方向を向いていれば独裁者も善人に見える

未だネット右翼が我が世の春を謳歌していた数年前、ふらりとのぞいた何処かのサイトで、「独裁が必ずしも悪とは言えない。朴正熙やリー・クアンユーのように、経済を成長させた良い独裁者もいる。あーそうそう、チャウシェスクや金正日の独裁は否定されるべきである」と堂々と書いていた人がいたのを、つい思い出しました・・・。

後はそうですねぇ、行きつけの某掲示板(反自公・反新自由主義のリベラル系スレッドなのですが)における、民主党内で小沢氏と距離を置く勢力や社民党・左派文化人への「議席1桁の分際で308人の俺たちに対等な口をきくなやゴルァ」と言わんばかりの罵倒の類を見ていると、「この人たちは小沢氏の基本理念である『政権交代可能な2大政党制』ではなく、『民主党小沢派による1党独裁』を志向しているのではないか?」と思えてきてなりません・・・。
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Unknown (非国民通信管理人)
2009-09-27 11:12:08
>ニュースコープさん

 仰るように1党独裁志向、他党だけではなく、国会や司法を主押さえ込んでの独裁を志向しているのは間違いのないことだと思います。ただそれは「小沢派」ではなく「鳩山派」にこそ顕著ではないでしょうか。実際に権力の一元化=独裁を推し進めているのは小沢ではなく鳩山であり、小沢氏の影響力を懸念、あるいは否定している人ほどこの鳩山による独裁傾向を肯定しているように思われます。
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