非国民通信

ノーモア・コイズミ

私は「新しい自民党」が嫌いなんです

2009-09-30 23:03:40 | 編集雑記・小ネタ

 なんと言いますか、左派とか「反」自公政権とかそういう括りがあるわけですが、傍目には一緒でも結構な違いがある気がしますね(私なんかは自称左翼なんですけれど、昔から左翼をやってきた人からすればどうなんでしょう?)。それは例えば「自民党離れ」といった場合に、「自民党」という言葉が指し示すものが一様でないのと同様でしょうか。一口に「自民党」と言っても小泉以前の「古い自民党」と小泉以降の「新しい自民党」ではまったく性質が異なりますから。

 それなりに遡った時代から政治に関心があった人ほど、「古い自民党」への反感も強いのかも知れません。一方で私などはノンポリだった時代が長く、政治に関心を持つようになったのはつい最近のようなものでして、それだけに目の当たりにしてきたのは何よりも「小泉以降の自民党」だったりします。そのせいか「古い自民党」に昔から反対してきた人と(あるいは、その影響下にある人々)、「小泉以降の自民党」に危機を感じ始めた私とではどうも認識にズレがある、これが昨今は顕著になってきた気もするわけです。

 では小泉前後で自民党の何が決定的に変わったのでしょうか。確かに新自由主義的な政策への転換や右傾化も小泉以降に急加速しました。ただそれは小泉以前からもじわじわと浸食を始めていたものであって、小泉がアクセルを踏み込んだ面は決して無視できないものの、かといって小泉のオリジナルというわけでもなさそうです。では何が決定的に変わったのか、それはやはり「政治の在り方」ではないかと思うわけです。政策そのものよりも、政策の立て方、いわゆる政治手法にこそ最大の転換点があったのではないかと。すなわち「官邸主導」ですね。

 党内派閥の有力者や官僚といった官邸に拮抗しうる人々を抵抗勢力と呼んで排除し、総理とその側近、子飼だけで独断的に物事を決めていく、こうした政治手法への傾倒が小泉内閣の以前と以後を分ける決定的な境界線になっているような気がします。そして面白いのはこうした官邸主導への転換が、「古い自民党」への否定を原動力として行われたことです。そのせいでしょうか、「自民党をぶっ壊す」と称した人と、自民党を選挙で下して与党の座を手にした党、政策面では異なる点も見出しうるのですが、その一方で「政治手法」に関しては驚くほど酷似しているわけです。

新自由主義と左派の親和性 思い出す90年代前半の政治風景 - Munchener Brucke

 八ツ場ダムに関する識者やブロガーの言説を見ると、左派とネオリベの多くが八ツ場ダム建設中止を支持しているように散見される。

 日本の左派は環境保護や、公共事業を止めてその予算を社会保障に回して欲しいという願いから、伝統的に公共事業に批判的だ(国際基準では左派は雇用創出を可能にする公共事業を支持するのが普通なのだが、日本は特殊である。)。またケインズ主義の乗数理論に懐疑的なネオリベラリストは公共事業に懐疑的である。

 引用は冒頭に止めますので、興味のある方はリンク先をお読みください。ともすると対立しているかに見える左派とネオリベの意外な「親和性」が指摘されています。そこで私なりに付け加えるとすれば、(上段の繰り返しになりますが)両者ともに「古い自民党」への否定を原動力としている点を挙げます。公共事業を通じて地方に金を分配する自民党の旧来のやり方を批判していたのは、ネオリベである前に当時の左派政党、社会党だったはずです。そして公共事業などの財政出動を通じた景気対策を否定する形で勢力を伸ばしてきたのが新自由主義というわけです。敵の敵が味方とは限らないのですが、否定する対象が実は同じものだったとしたら、どこかで混じり合うこともあるのかも知れません。

 そこで昨今話題の八ツ場ダムや、あるいは民主党への評価を見るとどうでしょうか? 実際、八ツ場ダムを巡っては新自由主義と一部左派の「混じり合い」は既に生じていると見ることもできそうです。そして民主党への評価も同様、政策面での評価は左右で分かれる一方、「政治の在り方」「政治手法」といった面では意見の一致を見ているような気がします(参考、所詮は野党のことだけど)。政策面での論議はあれども、鳩山内閣が小泉時代以上に強引に推し進めている「官邸/政治主導」や権力の一元化には、ほとんど批判の声を耳にしませんから。「一元化できている/できていない」というレベルの議論はあっても、そもそも一元化が好ましいことなのかどうかを問う声はあまりにも少数です。

 実際、世論調査でも民主党の個々の政策は必ずしも国民の十分な支持を得ているとは言えないわけです。その一方で民主党政権そのものは過半数を上回る支持を得ています。新内閣へのご祝儀相場みたいなものもあるかも知れませんが、政党への支持が政策への支持を大幅に上回る現状は何を指し示しているのでしょうか。対立政党(自民党)の劣化ぶりがあまりにも甚だしいから……というのもあるでしょうけれど、それならば民主党以外の党にも票が流れて良いはずです。しかし、議席を増やしたのは民主党とみんなの党だけでした。では民主党(及びみんなの党)の何が支持されたのでしょうか? 政策面以上に国民の期待を駆り立てたものがあるとしたら、それは政治手法の面ではないかと考えられます。

 小泉以降に政治に関心を持ったニワカ左翼の私からすれば、小泉以降の「新しい自民党」こそが最も否定すべき存在なのです。反対意見を持つ人々との合意形成に力を注ぐよりも、相手の意見を「毅然と」突っぱねること、そして意に添わない人々を抵抗勢力だの既得権益だの腐敗~だのと呼んでは悪役に見せかけることで、自らは「悪い奴らと戦っている改革者」を演じようとする、そうした唯我独尊の「リーダーシップ」を是とする政治の在り方にこそ、強い疑問を感じてきました。そりゃ話の通じないバカも多々いるわけで結果的に合意が得られない場合もあるのですが、そうではなく最初から対立を目的化している、相手を「退治」することを目指すかのごとき政治姿勢には、やはり問題が多いと思うわけです。しかるに、左派と呼ばれる人々も含めた世論の大勢が否定しようとしているのは「古い自民党」であり、決して小泉以降の自民党ではないように見えます。

 

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12 コメント

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Unknown (TK)
2009-10-01 00:59:45
残念ながら、「新しい自民党」に対する世間の支持率は高いみたいです。。。
橋下知事・名古屋の河村市長ら首長連合が応援した新人候補が自公推薦・民社支援の現職に勝利しました。
ttp://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090928-00000051-san-pol
自公民社の組織力に勝るほど、首長連合(橋下・河村)が支持されてるとは。。少し驚きました。
当選した新人は元大阪府職員だそうで、完全な橋下チルドレンですね。

私の家で購読している地元紙(保守色が強い)に屋山大郎という小泉・安部元総理の改革を絶賛している極右政治評論家が毎週論文を載せているのですが、
最近は民主(鳩山総理)の持ち上げ、称賛ばかりしているんですね。麻生自民党時代は麻生元総理に対する批判ばかりしていたのに。
民主党の公務員改革を絶賛する極右。。管理人さんが1番嫌うタイプかもしれませんね。

橋下知事や屋山のような小泉・安部型の評論家が民主党を支持しているのを見ると、
本当に今の民主党が小泉・安部型の「新しい自民党」を継承してしまったのだな、と実感します。
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立法府(笑) 国権の最高機関(笑) (蛇の道)
2009-10-01 12:28:59
つーか議員立法禁止ってありえねぇだろ!? 何の為の国会議員なんだよ?


大問題だよこれは!!!
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Unknown (源内山人)
2009-10-01 15:04:20
>>・・唯我独尊の「リーダーシップ」を是とする政治のあり方にこそ、強い疑問を感じてきました。

全く同感です!
あくまで話し合いによりコンセンサスを得ていくのが民主主義の原則ではないかと思います。
しかるに、
少数意見や反対意見に配慮や調整を行うことなく、支持率にモノを言わせてブルドーザーで何もかも踏みつぶすような強引なやり方は、
すでに「民主主義」ではなくなっていると思います。
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Unknown (非国民通信管理人)
2009-10-01 22:53:12
>TKさん

 小泉に橋下、河村、そして鳩山民主に共通しているのが何かを考えると、自ずから答えが出てくるような気がしますね。国民は小泉自民になくて鳩山民主にあるものを求めたのではなく、両者に共通しているものを求め続けているのでしょう。そのうち取り上げたいと思いますが、かの小泉自身が(半分は皮肉、谷垣新総裁への当てつけですけれど)「「小泉構造改革路線を忠実にやっているのは民主党だ」と語ったそうですし。

>蛇の道さん

 自民党ですら建前としては三権分立を犯さないようにしていたはずですが、民主党は公然と行政の一極支配を推し進めようとしているわけですからね。自らの存在価値を否定された国会議員にはもっと声を上げて欲しいところです。

>源内山人さん

 結局、日本で「民主主義」と言われた場合、それはすなわち「多数決主義」なんですよね。少数派の声にも配慮して合意を取り付けていくようなものではなく、多数派という数の力にものを言わせて自分たちを正当化していく、そういうやり方のようですから……
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民主党に噛みつく資格 (ヒイロ)
2009-10-01 23:33:56
小泉路線の否定と民主党の政策に対して「なぜ」と問うことがほんの僅かでも必要だと思っています。
これが噛みつくに値する資格の一つと考えています。

小泉路線の否定は、言うまでもないでしょう。
民主党に対してはバカ呼ばわりしても始まらないことがあまりにも多いです。
今までのツケを支払わされている状態でいることも頭に入れておかないとネトウヨの思うつぼと言うことです。

予算の組み替えでも、配分を見直さない限り、税収が増えても「結局何も変わらない」という話になると思いますから。
円高も株安も藤井のせいにするのは短絡的に過ぎないと思います。

管理人様の指摘していることは小泉たちの手口と同じですから、盲目的に民主党を支持している人々にはその点を指摘することも必要になります。これは私も厳しく見ていきたいと思います。
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Unknown (非国民通信管理人)
2009-10-02 22:50:34
>ヒイロさん

 でも配分を見直したところで、全体の予算を増やさないことには限界があるんですよね。どこかによい顔をすれば、別のどこかに泣いてもらわなければならないわけですから。ただ予算を組み替えるだけで枠は広げない、間違っても大きな政府への一歩を踏み出さないところが民主党の支持拡大に繋がっている気もしますけれど。しかるに、もともとは大きな政府を望んでいたはずの人々が民主党には盲目的になったり、この辺はまた批判的に見ていく必要があるでしょうね。
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Unknown (tmp)
2009-10-04 01:05:39
興味深く読ませていただきました。
コレって、日本が軍国主義だった頃の間違いをまた繰り返していきそうな流れですね。

ナチスも政権をとる時は一家に一台ロールスロイスを配るとか端から見たら無茶でおかしな政策をしていたけども、結局政権をとって狂った方向に進んでしまった。
政治家のやり方をきちんと見ずに雰囲気に流されてしまう事、
メディアが異様な取り上げ方をする事(民主のメディア出身者が多すぎる)、
そして、国を動かす人間が正しい知識を持っていない事。

これらが合わさり妙な方向に突き進んでしまわないことを祈るばかりです。

結局は、国民全体の政治リテラシーの低さ、が問題なんでしょうね。
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Unknown (yasu1987)
2009-10-04 14:25:56
そもそも「政治主導」なんて言葉が出てこと自体、この10年の歪みを表しているような気がします
たとえば,官邸主導とか。

「口を開けば直ちに改革」、なんですよね
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Unknown (ふみたけ)
2009-10-04 20:10:52
>ナチスも政権をとる時は一家に一台ロールスロイスを配るとか端から見たら無茶でおかしな政策をしていたけど

VWの「ビートル」の間違いでは?「ビートル」を産む理由になった独の国民車構想について言ってるのでしたら車種違いですね。
今だと日米双方でEVやエコカーと呼ばれる次世代低燃費車を積極的に普及させる政策が行われていますし、過去にはマスキー法への取り組みをさせる事で自動車業界の環境への取り組みを活性化させた事実もあるので、この辺は政治主導で今でも使われている手法であるのは認めるところです。
話をエントリーネタに戻すと「改革」という言葉が独り歩きしてる感がありますが、大事なのはその中身とそれが実現する事で何が変わるかの見極めです。
私的に腹立たしかったのは、悪名高い自立支援法や後期介護者支援法がらみですね、私的にはマズイと思ってましたが、当時のマスメディアでこの危惧を明確に指摘していたところは皆無だった気がします。ネット媒体では当時ゴリ?だったかの改革礼賛のサイトばかりが持て囃されてる始末で私みたいな人間がある意味「変人」扱いされてる状況でした。
結局の所、世論の熱情は無下に否定しないのですがそれが思考停止のそれになるようなのはさすがに愚の骨頂です。
正直なところ、政治とその政策実現については少し冷めた目線で様子を見つつ、是々非々が正しいスタンスだと思います。というか政治も世論も健全な「想像力」を欠くとこの有様というのが、偽らざる今日の日本じゃないでしょうか。
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Unknown (非国民通信管理人)
2009-10-04 23:05:20
>tmpさん

 結局、選挙である以上は国民の程度にあった政党、政治家しか出てこないものなのかも知れません。どうしても流行廃りがモノを言うようで、冷静に物事を判断するよりも、一時の熱狂に任せたような選択が続くんですよね。このままどこへ突っ走るのやら。

>yasu1987さん

 そして政治主導という言葉が肯定的な意味で使われ続けているところに、この10年への反省のな差が滲み出ている気がします。過去の失敗に学ばない者は……

>ふみたけさん

 結局のところ善悪二元論なのか、一方的に正しいか、一方的に誤っているかのどちらかとしてしか扱われないような気がします。あの当時は小泉カイカクが全て礼賛されたわけですが、結果はごらんの有様です。さて民主のカイカクはどうなるのでしょうか。
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